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深田事件の検証3

2019年07月13日 | 深田萌絵事件


この記事は次の記事の続きです。






《契約書》

深田萌絵さんが以前から《ソースコードと1千万円》の件でトラブルを抱えているが、たまたまその「業務提携に関する契約書(ここまたはここ)」を目にしたところ、読み取れる部分もあるので考察する。当事者同士の言い分は把握していないが、外形的にわかる部分がある。

深田氏と藤井氏の「業務提携に関する契約書」を見ると、冒頭に「業務提携締結を行う」とある。その第一条には、Vatroni FPGA について共同で「市場開拓を行う」とある。第二条には、藤井氏側が「本製品のアプリケーション開発を優先的に行い」、深田氏側がこれをサポートするとある。

第三条には、本製品の粗利益分配が記載され、販売業者15%、藤井氏側25%、深田氏側が60%とある。第四条には保証金とあり、藤井氏側が深田氏側に1千万円を差し入れ、この契約書の日付の約半年後から分割でこれを全額返済するとある。また、返済遅延時には金利を附する旨も記載してある。

論点は、この1千万は何か。それは、契約書にある通り、業務提携を開始するにあたっての保証金と読める。すなわち、深田氏側が Vatroni FPGA という製品または設計資産を提供し、これに藤井氏側が、本製品のアプリケーション開発を優先的に行うという、双方が手弁当持ち寄りの協業形態。

平易に書くと、深田氏は既にある程度開発した現物を提供するんだから、藤井氏側はアプリ開発の労働力を提供してねと。でも、藤井氏は最初は手ぶらで来るんだし、設計資産情報だけ持ち帰られては困るから、労働力をそれなりに提供するまではこの1千万は預かっておくからね、という意味に見える。




《深田萌絵さんの製品》

次に、深田萌絵さん側の会社のサイトがあるようなので、少し見てみる。モノとしては、AIを用いて複数のカメラで撮影した3Dデータから意味のある情報を抽出するシステムであるらしい。それで、契約書にある Vatroni FPGA とは、2018年末リリース予定の「AI 2.0モジュール」とある。

その前世代モデルに「開発システム(販売中)」とあり、概念実証用とある。実験室レベルで、ある程度の動作を確認できる試作のような位置付けと思われる。藤井氏との協業契約書にあるのは、概念実証モデルでは箱だったものを作り直してモジュール化(FPGA)するということのようだ。

さらにその次の世代に、「AI 2.0 チップ(2019年半ば)」とある。前世代では FPGA という試作にも使われる半導体モジュール(4個チップかな)で構成されていたものを、機能も性能も向上させつつ、最終製品としての半導体チップにしたいということのように見える。


赤線で囲った第2世代のが藤井氏と協業することになったモデル。引用元はこちら


原始的なモデルからステップアップして開発しようとしていたようだし、それは他社の開発でも同じようにやる手順なので、開発の実態はあったと思う。ただ、現時点だと既にクルマの自動ブレーキや自動運転用途などで3Dカメラが進化しまくってるので、事業性の時期としてはどうかな?と思う。

一部の説明イラストに戦闘機があるので、例えばGPS衛星が破壊されるなどGPSに頼れなくなった状況下での、カメラ映像のみを使った巡航ミサイルや低空で侵入する戦闘機用の動画ナビゲーションシステムなどに用途があるのかもしれない。ただ、その辺の軍事業界筋の開発動向は知らない。

また、一部には監視カメラ映像を用いた説明もあるので、そこから人物等のオブジェクトを抽出する用途を想定しているようにも見える。ただ、中国の監視カメラは人の歩行まで認識して、歩き方から個人を識別するほど進化してるので、この方向性の技術開発ももう遅いかなという印象。

ということで、開発案件として見れば時既に遅しかなとも思われる。「業務提携に関する契約書」の2011年12月時点だとそれなりにチャンスがあった時期なんですかね。その辺は微妙。

それで、以前に深田萌絵さんにお聞きした時には《高線量放射線環境下における、半導体チップでの高強度エラー訂正アルゴリズム》ということでしたけど、3D映像をAIで処理するFPGAということだと話が違いますね。少なくとも主題ではない。




《ひとつの結論》

これはあくまで、上記の『契約書』および深田さんの会社の『Products』(下2つは開発計画)を見ての判断ですが(=最近の当事者の言い分は考慮していない)、まとめると以下のような話ではないのですか。


(読み取れる事実関係の整理)

1)両者は2011年12月に深田氏の会社が開発中であった『Vatroni FPGA』の共同開発と販売について業務提携の契約を交わした。

2)深田氏側は開発中の『Vatroni FPGA』を提供し、藤井氏側はこれに載るアプリの開発を担当することとした。

3)深田氏側は開発中の設計資産を提供する見返りに、藤井氏側は「1千万円の保証金」を深田氏側に差し入れることとした。

4)「保証金」は契約締結の半年後から1年後にかけて全額を分割返済することとした。

5)契約書には、契約締結後に共同開発した設計資産に関する所有権その他の記述が見当たらない。


(上記事実関係から推測できること)

6)2項から、この契約は一般によく行われる「発注−受注」というような形態での契約ではない。双方が対等であり、「仲間」としての契約なのでしょう。(ただ、このタイプは揉めやすいのだよ。上下関係を決めるなり支配権をどっちかに寄せた方が安全。)

7)3項からは藤井氏側が提供する開発費が1千万円相当と読める。契約1年後に保証金を完済する文面なので、完済時点では藤井氏側は開発費1千万円に相当する設計資産を提供した状態になっていたはず。(契約書からはそういうつもりだったであろうことが読み取れる)

8)私が見るに、5項が大問題。ざっと以下のような点がトラブルになり得る。

 (8a) 深田氏側が提供する設計資産『Vatroni FPGA』に関する使用権。
 (8b) 契約締結後に共同開発にて『Vatroni FPGA』に追加した設計資産の所有権。
 (8c) 契約締結後に深田氏側のサポートの元に藤井氏側が開発した設計資産の所有権。
 (8d) 契約締結後に、藤井氏側の開発が期待水準に達しなかった場合の保証金の取り扱い。
 (8e) 契約締結後の間もない時期に(=概ね半年以内)、本事業の中止を決定した場合の保証金の取り扱い。

9)深田さんが以前から主張している「ソースコードと1千万」の話のソースコードとは、契約直後に提供したであろう『Vatroni FPGA』のハードウェア記述を指すのではないのか。(意味合いとしては「回路図」に相当するが、ハードウェア記述言語で設計する場合はこれをソースコードと称することもある)

10)9項の推測が正しければ、深田さんが以前から主張している「ソースコードと1千万」のトラブルは、8d項または8e項あたりに該当するのではないですか。これを深田側視点で見ると「藤井氏側から結局何も提供してもらってないのに、こちらはソースコードを無償開示した上に、保証金の1千万円まで全額返さなきゃいけなくなった。」のようになると思う。

11)深田氏と藤井氏の契約当時の意識はどうであれ、契約書には無条件に保証金の全額返済が記載されているので、保証金の取り扱いを巡って民事訴訟になれば契約書どおりに全額返済の判決が出るのは当然と言えるでしょう。




以上ですが、蛇足的感想を付け加えると、こういう事業主体が判然としない契約はやっちゃダメ。さらに付け加えると、前記事の文面が深田氏の会社の技術水準だとすると、協業で組むには値しない。






改版1:11項を忘れてたので足した。
改版2:10項と11項と順番を入れ替えた。





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