デ某の「ひょっこりポンポン山」

腎がんのメモリー(術後10年クリアーし"卒がん")、海外旅行記、 吾輩も猫である、人生の棚卸しなど。

パリは燃えているか…

2021-04-11 18:16:30 | 新聞・TV・映画・舞台・書籍etc.
 「旅のチカラ」というBSの番組を憶えていますか? その中で印象的だった加古隆「パリは未だ燃えているか」(2013.2.12オンエア) の再放送を視ました。作曲家、ピアニストとして40周年を迎えた2013年、かつて学んだパリ高等音楽院(1971~76年)を訪ねる旅でした。

    

 加古は、東京芸大(大学院)を修了後、国費留学生としてパリ高等音楽院に留学、"現代音楽の巨星" と称されるオリヴィエ・メシアン教授に師事します。教授に挨拶すると『何か作品をもってきていますか?』と問われ、持参していた自信作の楽譜を差し出します。

 教授は楽譜を見て『とても良く出来ています』『でも30年前のスタイルですね』。これにショックを受けている彼に更に『あなたの今現在の音楽を見つけなさい』『加古さん。あなたが日本人であることは大変な財産です。そのことを深く考えてください』と。


    
        左から3人目が加古隆、5人目がメシアン教授、6人目はミカエル・レヴィナス(現)教授

 高等音楽院を訪ね、かつての級友ミカエル・レヴィナス教授に会います。加古を彼の教室の学生に紹介し、併せてかつてメシアン教授が加古に送った言葉を紹介します。

 『すべての音楽作品には、そこにあなたへのメッセージが含まれています。どの作品にも、あなただけに聴こえて、他の人には聴こえない何かがあります』『ぼくは不安になったとき、今でも、メシアン教授が君に送ったそのメッセージを思い出します』と。


 加古はやがてフリージャズの世界にのめりこみ講義を欠席しがちになります。もともとジャズが好きだった加古は留学に際しジャズを封印していたのですが、級友たちと少し距離を置いていたモーラ・グークと親しく話す中で眠っていたジャズ魂が覚醒します。

    
             加古の演奏をみつめるモーラは性転換の手術を受け 現在は女性です。   

 その頃、モーラは既にジャズ評論を執筆し、モダンジャズを代表するサックス奏者ジョン・コルトレーンについて熱く語りました。その影響でジャズと現代音楽の融合を目指した加古は「君がいなければ現在の僕はない」モーラのためにピアノ曲を演奏します。

     加古が弾いたのは "グリーンスリーブス" から着想した「ポエジー」… "静と動" が交錯します。


 加古隆が留学した1971~76年。60年代末期からパリに押し寄せた変革の波 "五月革命" は、加古の留学中もなおパリの街にその息吹を残し、映画「パリは燃えているか」がヒットしていました。そんな時代の風を背に加古が出逢ったのがフリージャズでした。
  ※ 「パリは燃えているか」… 独軍のパリ撤退時に出された街の破壊命令を独軍将校がスポイル。
    独軍本部から「パリは燃えているか?」の電信がパリ駐留独軍司令部に打ち続けられます。

    
        警官隊にジュラルミンの盾はなく 学生の表情と装い?にも或る種の香りが感じられます。

 この時代、フランス革命に由来するパリの伝統行事「パリ祭」にちなみ日本の大学に出現したのが「バリ祭」… バリケードストライキ。パリの街と学生のような薫りはなく、ジャンヌ・ダルクは現れず知性を欠くヘルメットと鉄パイプの無粋なお祭りではありました。

    
        三色旗を掲げる女性はちょっとミレーユ・ダルクっぽく、男性が肩車してるんですよねぇ…。

 加古のパリ再訪の目的の一つは彼の作曲した四重奏曲を高等音楽院の若い学生に演奏して貰うこと。カフェに居合わせた学生に提案すると「喜んで!」と引き受けて貰いました。クラシックを学ぶ学生達でしたが、音楽院OBの日本の作曲家に惹かれたのでしょうか。

    

 作品は「パリは燃えているか」。この曲は、二十世紀の貴重な映像を記録し放送する NHKスペシャル "映像の世紀" のメインテーマとして知られます。加古のパリ留学時代の若者の息吹を彷彿とさせる名曲…彼自身を含むクァルテットの演奏でお聴きください。


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人生の棚卸し http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/ddab58eb8da23a114e2001749326f1f1
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6 コメント

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Unknown (Anne)
2021-04-11 20:19:44
この記事を読んでいて何だか引っかかっているんです。
なんだろう・・・
ずっと読み進めていて思い出しました。
「image」でした。
どんどん記憶が戻って来ました!
「パリは燃えているか」に加えて「エトピリカ」「リベルタンゴ 」「地球に乾杯」「情熱大陸 」「ソング・オブ・ライフ」etc
CDを毎日聴いていました!
コンサートにも行きました!
記憶がどんどん戻って頭の中に曲が蘇って来ました!
もしかしたらCDまだあるかな?
ダウンロードしようかな!
ありがとうございます。

もう一つありがとうです!
「河合さ余って ゆうすけ百倍!って感じでしょうか?(笑)」
笑いました!河合さんに伝えてみようかな( *´艸`)

何しろ河合さん本人に
「KAWAPA病にかかってしまいましたね」
「一度かかると完治しません(笑)」
ってすでに私は言われています
Re : Anneさん (デ某)
2021-04-11 22:55:04
Anneさん
早速のコメント ありがとうございます

> 読んでいて何だか引っかかって…ずっと読み進め... どんどん記憶が戻って来ました!

記憶の栓が取れ 眠っていた情景があふれてきましたか?
私の場合 旧い記憶には栓がないのに 新しい記憶はすぐ閉じられます
ですのでブログも 旧い記憶ばかり辿ってしまいます

> 「パリは燃えているか」「エトピリカ」「リベルタンゴ」「地球に乾杯」「情熱大陸」 ...

葉加瀬太郎さんの公演には 万博野外の「情熱大陸」を含めて三度。
たぶん... Anneさんの記憶と交わる部分もありそうです。

> 「河合さ余って ゆうすけ百倍!って感じでしょうか?」
> 笑いました! 河合さんに伝えてみようかな

笑っていただくと 関西人は すこぶる ご機嫌!です。
でも 彼のキャラは 千葉(関東)より 関西、大阪…
伝えていただくとしたら「関西にて心からお待ち申し上げ」ている旨 お伝えください。
学者は兎も角、辰巳拓郎、平野啓一郎、永田紅さんら同窓文化人脈が集えば最強です。

Anneさが罹った 不治の病 "KAWAPA病"
コロナとちがって "感染促進ワクチン" が必要です。
Anne製薬で開発、供給なさってくださいまし。
但し、供給先は関西とりわけ大阪限定!でお願いします。

結びに "Home Sweet Home" をもじった "Home Suita Home" を。
葉加瀬太郎さんの生まれ育った吹田市から 葉加瀬太郎さんに制作委嘱した作品。
"エトピリカ" とモチーフが重なりますが...。
私も ほ~んの少しだけ "関係者の端くれ" にいました。
https://www.youtube.com/watch?v=1BdMbQBr3Kc
鶯がしきりに鳴いて春真っ最中です (ムベ)
2021-04-12 16:32:30
この曲とてもいいです。良く知っている!と思ったのは
「映像の世紀」で聞いていたのですね。

「あなただけに聴こえて、他の人には聴こえない何かがあります」

この言葉は私なりにですが、きっとそうなのだろうと思います。
音楽はもちろんですが、詩であってもそれぞれの心に落ちて行く
景色は違うだろうと思います。それが素晴らしいと思います。

この前からコメント書きかけては挫折していました。
背伸びしようとしても追いつかなかったのです。

今日は、嬉しかったことを書かせてください。
ご近所で筍を頂きまして、私は筍を食べると元気が出ます。
その元気で、生協から配達してもらったトマトを鉢植えにしました。
「葡萄のようにたくさん実る」そうで乞うご期待です。
Re : ムベさん「鶯がしきりに…」 (デ某)
2021-04-12 18:08:38
ムベさん
コメントありがとうございました

> この曲とてもいいです...「映像の世紀」で聞いていたのですね。

不安と焦燥を感じさせる導入から テーマのメロディに入ると
一瞬の "矯め" を経て一気に音が解き放たれます。
番組で 加古さんが 若いピアニストを指導していた "矯め" のシーンと重なります。

あらゆる美術品とともに焼かれ破却される運命にあったパリを救ったのは
連合軍でも レジスタンスでも パリの民衆でもなく...皮肉にもドイツ軍の若い一将校。
撤退し無人のドイツ軍パリ司令部に "パリは燃えているか?" "パリは燃えているか?" と
空しく打ち出される電信のシーンが 深く印象に残る映画でした。
なお最初の You tube "ポエジー" も静かな曲なのに劇的...
なじみ深いグリーンスリーブスのメロディとともに心にすっとしみますね。

> 「あなただけに聴こえて、他の人には聴こえない何かがあります」
> この言葉は私なりにですが、きっとそうなのだろうと思います。

ムベさんとおんなじ...私にも心に深く残る言葉でした。
この言葉をのこしたメシアン教授は、ミサの始まる前の教会に度々行かれ
パイプオルガンを即興で弾かれていたそうです。
神様の音を聴きながら...弾かれていたのかもしれませんね。

> この前からコメント書きかけては挫折...背伸びしようとしても追いつかなかったのです。

おやおや...ムベさんらしくありません(笑)
自然に 感じるままに 思われるままに... コメントくださいまし。

> 今日は、嬉しかったことを書かせてください。
> ご近所で筍を頂きまして、私は筍を食べると元気が出ます。

わが家にも一週間ほど前に長岡京の筍がとどきました。
斜向かいの方からのお裾分けでした。
ムベさん同様 まさに旬の筍をいただくと元気になりますね。
炊いて ワカメとともに 家の庭の山椒の葉をのせて 美味しくいただきました。
なんだか... 長生きできそうな気がしました、少なくとも一日か二日!(笑)
その元気で植えられたトマトも きっと!葡萄のように鈴なりに育ちましょう。
ご近所でしたら 頂きに押しかけたいところです(笑)
摩周湖 (遠音)
2021-04-12 19:13:21
遠音は 外出先より戻り 帽子もかぶったまま
コートも脱いでいない。何故そんなに急ぐのか?
それは先回のコメントをゆっくり後でと
思いさあ書きましょうと思ったとき
扉が目の前で閉じられてしまったからでした。

遠音が数時間前に見てた景色が「ポエジ」の
映像が流れてきたとき再び浮かび上がってきたのでした。
「摩周湖」は今日も特別な色をしていました。
「なんていう色だろう!」
すみれは 「これが摩周ブルー」なんだよね。

遠く斜里岳には 残雪があり 切り絵のよう。
視点を変えると 
雄阿寒岳 雌阿寒岳 阿寒富士がもっと遠くに有り
霞だち その悠然たる姿が こころの中に
ポエジ・・とともに入ってきます。

何処かへ行こうかと言われたら
やはり此処しか無いよね。
二人の結論でした。

それが わたしだけの 摩周湖です。
Re : 遠音さん「摩周湖」 (デ某)
2021-04-12 23:22:17
遠音さん
こんばんは! コメントありがとうございました

> 先回のコメントをゆっくり後でと思い
> さあ書きましょうと思ったとき 扉が目の前で閉じられてしまった...

失礼いたしました
gooブログは アクセス状況がリアルタイムでわかります。
時間をかけた労作ほど「スルー」されるのが常で、
前回の上野千鶴子さん "最後の講義" もそんな淋しいアクセス状況でした。
読まれないブログの来ないコメントを待つより 他のことに集中しよう!
...そんな不遜なことを思ったのでした
折角スタンバイ下さったのに...申し訳ございませんでした。

> 遠音が数時間前に見てた景色が
> 「ポエジ」の映像が流れてきたとき 再び浮かび上がってきたのでした。

静かで穏やかな情景が 烈しく劇的な音に変わり...
こころを ぎゅっ!と抱きしめられる "ポエジー" ですね。

> 「摩周湖」は今日も特別な色をしていました。
> 「なんていう色だろう!」
> すみれは 「これが摩周ブルー」なんだよね。

私は 北海道には度々行きながら 函館、小樽、札幌ぐらい...
憧れつつ 未だ見ぬ摩周湖! であり "摩周湖ブルー" です。

> 遠く斜里岳には 残雪があり 切り絵のよう
> 視点を変えると 雄阿寒岳 雌阿寒岳 阿寒富士がもっと遠くに有り...

口惜しいことに... そのパノラマに 私の土地鑑がついて行けません。
いつか訪ねる日まで たいせつに心にしまっておきます、"ポエジー" とともに!

> 何処かへ行こうかと言われたら やはり此処しか無いよね。
> 二人の結論でした。

此処しかない... いいですね、その何処か!
私も 様々に心に秘めた場所があります。
それぞれ...其処にしかない情景とともに!

遠音さんだけの 摩周湖に...乾杯

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