介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

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第3766号 経済同友会の介護保険制度に対する提言

2010-06-28 19:58:54 | 2012年改正→別ブログ
写真は、奄美ヤドリ浜のハマユウ。徒然なる奄美 2010.06.28 からお借りしました。


本日、6月28日、経済同友会は介護保険制度に対する提言を公表した。

経済同友会

このうち、気になったのは、専門職の充実に関する部分です。

【専門職の部分に関する感想】
最後のⅣの
(1) では、介護職の位置づけと、海外からの受け入れ
(2) では、ケアマネジャー(介護支援専門員)の充実
について触れています。

(1)は、2つの項目です。
① 介護職の充実: 医療職との密接な位置づけという発想でよいか?
② 海外からの受け入れ: 反対の立場ですが、すでに受け入れている以上、運用上の改善を検討すべき点があるか。

(2) ケアマネジャーについては、実際に介護保険業務に従事している介護支援専門員の意見はどうなのか?

 
        *         *        *         *   

【提言目次】

社会保障改革委員会 提言 目次
はじめに ••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 1
Ⅰ.目指すべき社会保障制度と介護保険制度改革の方向性 ••••••••••••• 2
(1)目指すべき社会保障制度
(2)介護保険制度改革の方向性

Ⅱ. 介護保険財政の持続性の向上 •••••••••••••••••••••••••••••••••• 4
(1)保険対象となるサービスの重点化と自己負担割合の引き上げ
(2)経済同友会の提言の実現による財政的持続性の向上(簡単な試算)
(3)給付の適正化・効率化と高齢世代内での負担の分かち合い
(4)被保険者、受給者の対象は現行制度を堅持
(5)保険財政の安定化に向けた保険者規模の拡大を

Ⅲ.介護サービスの提供のあり方 ••••••••••••••••••••••••••••••••••• 7
(1)施設整備のあり方の見直しと民間の活用
(2)在宅介護の改善
(3)医療と介護の連携強化
(4)要介護度の維持・改善へのインセンティブの付与

Ⅳ.介護事業発展のための施策 ••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 10
(1)人材の確保、処遇のあり方
(2)ケアマネジャーの独立性、専門性の向上
(3)介護労働におけるイノベーションの活用
(4)保険外サービス市場の拡大
おわりに ••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 14


【専門職の充実】
上記のうち、
Ⅳの(1)(2)の部分を全文引用します。

Ⅳ.介護事業発展のための施策
介護報酬は、制度発足以来、マイナス改定が続いていたが、2009 年度の改定で
は、初めてのプラス改定になった。介護分野での人材確保が難しい背景には、介
護労働における身体的負担や夜勤等の厳しい労働環境、加えて他の産業と比較し
た場合の処遇の問題等が挙げられる。
確かに介護報酬という公的に定められる価格のもとで事業を行う制約はあるが、
事業として行う以上、より効率的な経営を目指すべきである。介護サービスは労
働集約的な産業と考えられ、イノベーションを活用した労働生産性の向上を図る
余地は大きく、介護機器の実用化や普及を促進する必要がある。
また、保険外サービスの利用は原則自由であり、こうした点に着眼した事業の
展開も可能である。介護を自立した産業にするために、介護サービスとその関連
分野における事業者の経営努力を生かす環境整備が必要である。

(1)人材の確保、処遇のあり方
①職業としての介護の魅力を高める
2009 年度に介護報酬は3%プラス改定されたが、必要な財源は国庫が負担した。
人材不足の緩和や賃金の引き上げをねらいとした改定であったが、本来的には、
介護事業者の経営努力による生産性の向上や、付加価値の高いサービスの提供等
によって、収益と処遇の改善は実現されるべきである。
人材を確保するためには、介護に携わることにおける職業としての魅力を高め
る必要がある。介護の職種において、より専門性の高い知識や技術を身につけ、
それに基づく付加価値の高いサービスを提供することにより、介護が高い専門性
を必要とする職業であるという認識を社会的に広めていかなければならない。
また、職業としてのキャリアパスを明らかにし、携わる人材が将来の展望を描
きやすくする必要がある。具体的には、医療との連携強化を念頭に置き、キャリ
アラダーを形成していくことである。すなわち、ホームヘルパー、介護福祉士、
ケアマネジャーといった介護に携わる職種や職種内における業務内容の違いに応
じて、医療に関する知識や技術等を習得することで、それぞれの職能とキャリア
が向上できる。

②多様な人材の確保
今後は、国内外における多様な人材が介護に携わり、介護サービスへの需要の
増加に対応していく必要がある。
日本とインドネシア、フィリピンとの経済連携協定(EPA)にもとづく看護師、
介護福祉士候補者の受入れ人数は、当初の予定を下回っている。二国間での人の
移動、人材の交流を促すというEPA の意義や、医療、介護の分野における人材の
国際的な獲得競争を踏まえれば、受入れる看護師、介護福祉士候補者が既に持つ
能力を適正に評価し、尊重するべきであり、わが国での資格取得における基準の
再検討が必要である。現行制度では、資格取得前の候補者の在留期間を、看護師
については3年、介護福祉士については4年を上限としているが、候補者の日本
語習得に要する期間を踏まえて、資格取得前の在留期間を延長することや、介護
福祉士の試験においては、専門用語の理解度を英語で確認するといった方法を検
討すべきである。また、資格取得後もキャリアの向上ができるような就労環境を
整備することも必要である。
海外からの人材の受入れは、医療や介護の分野で必要となる人材の将来推計や、
技術革新による介護労働の効率化等を前提に考える必要があるが、今後は、EPA
の枠組みにとらわれずに、わが国への看護師、介護福祉士候補者の派遣国を拡大
するべきである。
なお、要介護者や家族にとっては、身近な地域住民等による介護支援が受けら
れる環境があることは、通常の生活を継続していく上で心強い。地域において住
民や学生のボランティアによる介護支援の仕組みをつくることも、介護の人材を
確保する方法の一つである。既に、学生のボランティア活動を単位認定している
大学も一部にあるが、ボランティアによる介護支援と学生の社会実習の双方を促
す観点から、今後はこうした取組みがより重要になる。

(2)ケアマネジャーの独立性、専門性の向上
介護サービスの利用者が適切なサービスを選択するには、先ずはその内容や頻
度、費用等についての情報をわかりやすく提供する仕組みが必要である。また、
要介護者の自立的な生活の支援と利用者の主体的な選択を尊重する視点に立って
これらの情報を活用し、利用者に適したサービスを提供することが求められる。
さらに今後は、ケアマネジメントを一層強化し、よりパーソナライズされたケア
プランによって、要介護度の維持・改善や介護する家族を支援していくことが重
要になる。
ケアマネジメントの強化や利用者の主体性を尊重したケアプランの作成を行う
ためには、ケアマネジャーの独立性や介護、医療に関する専門性を高めなければ
ならない。加えて、ケアマネジャーの利用においても自己負担を設け、利用者と
の直接契約を可能にするといった、ケアマネジャーを能力に応じて評価、処遇す
る仕組みを構築するべきである。
なお、ケアマネジャーの独立性や専門性を向上させる過程では、現状のケアマ
ネジャーの不足にも考慮し、業務と専門性向上のための研修等が両立可能な環境
を整える等の対応も求められよう。


《3612字》
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独立ケアマネ? (岩清水)
2010-06-28 20:41:11
この提言は経済同友会らしいですね。
軽度者(要支援と要介護1)外し。
給付サービス費2割自己負担。
が給付費削減の切り札。

一方、現金給付の可能性も。

介護市場の自由化のひとつとしての独立ケアマネ。
現在、富裕層が顧問弁護士を雇うように、ケアマネを雇う。
金がない人は、国選弁護人のように官製ケアマネを雇う。
介護保険制度は社会保険であるとともに、
社会福祉制度の部分も持ち合わせているのですが、
この点はまったく欠落しています。

このような考えをする人々も多いことも肝に
命じなければなりません。
そして、私たちの理論を対峙させなくてはならないと思います。
経済団体ばかりが (bonn1979)
2010-06-28 20:49:04
岩清水さん

さっそくコメントありがとうございました。
「資料編」マターかとも思いましたが
このような提言は重要だと思いました。

財源などの議論は
広く国民的な議論がいるかと
思いましたが

この専門職の部分に対しては
専門職自身の見解というか対案というか批判が
ないと
世間ではなるほど
となっていくと思いました。

岩清水さんのコメントで
全体の主張に通ずる哲学が一貫していることが
理解できました。

政権が交代して
従来のような経済団体の圧倒的な
存在は薄れましたが
アメリカやイギリスの
ソーシャルワーカー組織は
ふだんから
激しく意見表明していますね。
Unknown (さはら)
2010-06-28 22:06:48
この提言、「ついに出されちゃった」という感じです。

結局、介護保険や社会福祉に携わる人々が、何もアピールできなかったし、自己改革は黒船風にあわてて始めた感じであって、自発的に行った形跡は余りありません。


小生も最近になってやっと情報発信始めたので、同罪かもしれませんが。社会福祉士会や介護支援専門員協会に入っておりませんし。


すでに健康保険の自己負担が3割になっている点から、彼らの本当の狙いは将来3割負担であると読みました。
ただ、高齢者介護政策のターゲットがどの集団の人々に対するべきものなのか、専門職間で議論がされないまま今日に来ている観はあります。
主役は人 (どりーむ)
2010-06-28 22:55:08
この提言書を読んで、まず思ったのが、
「主役は人」ということです。

財源が大事なことはわかりますが、
財源を維持させることが、
制度の目的ではないはずです。

介護保険法第1条のもつ、
「尊厳の保持」や「国民の共同連帯の理念」について、
その意味を問うべきだと思います。
この3ヶ月 (bonn1979)
2010-06-29 10:02:46
さはらさん
どりーむさん

コメントありがとうございました。

昨日も
twitterでは
介護保険がらみの記事が多く
全体をどうとらえていいのか?

それで
取り急ぎ
第3768号にて
この3ヶ月間の
主な提言などをまとめました。

政治や経済の全体像を
どううけとめて
現場に近いモノたちが
どう発信していくか。

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