介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

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「障害福祉」と「児童福祉」の経済効果

2007-11-30 20:02:25 | 社会福祉
【経過】このシリーズ『社会保障と日本経済』も13回目です。

「社会サービスが日本経済に与えた影響」という部分の
第7章 医療
第8章 介護
に続く部分、第9章「福祉と日本経済」です。

私たちが知っている用語でいうと
障害福祉と児童福祉の2分野。

【内容】この2つについて、
・政策の体系
・政策の歴史
・対象となる人の数
・必要な財源
などを概観している。
すでに発行されている白書類に掲載されていますから
ここでは数字を拾いません。

【ポイント】本書を一貫しているスタンスは
「福祉は無駄だ」という財界などの大合唱に対して
こんなに規模が大きく
・政策を行うことで得られる経済的効果は具体的に・・億円と大きく
・政策を行わないことによる経済的損失は・・億円と大きい。
ということを、荒削りでよいから示すこと
・・・にあります。

使われている費用の大雑把な規模は
介護の(年間)5兆円に対して、障害福祉で4.5兆円、児童福祉で3兆円
という規模です。

筆者の試算では、
・障害福祉の政策で、施設から在宅重視とすることで、節減効果が3~4兆円
・母子保健で、妊産婦の死亡率の改善効果が6000円億円
・保育所により、母親が働くことによる効果が8.8兆円
・児童虐待防止対策をやっていれば、(1990年度から2003年度までの)累積で7~8兆円の効果があったはずだ。

などを、研究所のスタッフとともに行っている。

【評価】
障害者政策や児童福祉政策の分野でも、筆者は行政の委員会などで重要な役割を果たしてきた。その分、引用した文献なども幅広く、研究を深める方に役立つ情報も多い。
「経済効果」などの試算は、これまでまとまった形で公表されていない。多くの仮定をおいての計算なので、細かく言えば論議が残るが、経済界などへの反論のためにより体系的に試算して見る意義はある。

【批判】
政府の政策形成過程の中枢をみてきたせいか、そこまでいっていいの?
という箇所もあります。
(例)障害者自立支援法は「歴史的快挙」だと。(p176)
・・現在の国会や関係団体の議論・評価からは、もう少し、問題点もあげられるのではないだろうか。

結局、介護保険を中心に、「措置」から「契約」に移行したのは前進だ・・
というスローガンをみんなで唱和しているが、
それでは、認知症の場合に典型的に生ずるような「契約を出来ない人たち」への
制度的な対応はどうなるのか?
という基本の法律論が抜けている。(経済学を専攻する著者に法律論を求めるのは無理だったかな?)
(民法改正による後見人制度は、一つの回答だが、この制度の普及のための努力はまだまだ足りない)
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