介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

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社会保障の産業連関効果

2007-12-30 14:11:06 | 経済
【第11章】
京極高宣『社会保障と日本経済』を
読んでいます。
第11章 社会保障の産業連関効果
(p223-p269)では、社会保障によって動くお金は
回りまわって他の産業分野にも影響する
ということを実証的に明らかにすることがねらいです。

【構成】
第1節 社会保障と産業連関分析(「産業連関分析」の説明)
第2節 社会保障の産業連関効果(2000年産業連関表)→この章の中心部分
第3節 社会保障と先端技術(医薬品、医療用具、福祉用具)
第4節 社会保障を担う専門職人材
第5節 社会保障と公共事業(例:病院や社会福祉施設の建設)
第6節 バリアフリー化の経済効果(シミュレーション分析)
 第3節から第6節までは、産業連関表からは計算されないが、その経済的な影響が大きい分野をあげている。

【2000年産業連関表】
医療経済研究機構が2004年にまとめた研究報告からまとめてみる(表11-4)。
サービス部門の平均(左欄)と医療(国公立)部門(右欄)とを対比する。
4つの係数でいずれも、サービス業の平均を上回る値がでている。
(1)乗数効果
 (内部乗数と外部乗数の積。ケインズ経済学の「乗数効果」に近い概念)
  →その部門が国民経済の拡大に波及に寄与する総波及効果
     1.366532    VS    1.448583
(2)生産誘発係数
     1.590595    VS    1.826740
(3)雇用誘発係数(人/100万円)
     0.111478    VS    0.117924
(4)拡大総波及係数
  *当該時間で雇用された労働者がその所得で消費を拡大した波及効果を含めたもの。
     4.063557    VS    4.887064

【先端技術】
市場規模を調べ、その特色と課題を分析している。
・医薬品市場 73,148億円(2004)従業員17万人
・医療用具  15,035億円
・福祉用具   1,811億円 

【専門職人材】
・医療従事者 254万人
・訪問介護員 155
・各種相談員  7.6
社会福祉の各分野の福祉従事者のなかで国家資格保持者がいくらずついるかという基礎資料はない。代わりに、登録者数でみると、
・保育士   157万人
・介護福祉士  43
・社会福祉士  6
・精神保健福祉士 2 

【公共事業】
病院や社会福祉施設の建設などは、年間2兆円の支出となっており、この分野の支出が内需拡大に貢献している。
「公共事業を減らして社会福祉へ」という議論の立て方はおかしい。p256

【感想】
このように、社会保障分野を経済活動から見れば、ゆるがせに出来ない大きさに達している。この点を長く研究してきた著者らしい章です。
(平成12年版『厚生白書』第2章第4節社会保障の経済効果に言及。p227の注7)
*介護保険制度の2005改正を考えると、福祉用具の将来に関しては期待しすぎでは?(p240)
*社会保険庁の評価は、その後の年金記録問題の推移にかんがみると、甘いのではないか?


    
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