介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

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第3982号 高井正俊『建長寺物語』(四季社、2010年)

2010-10-08 05:46:02 | 大隅半島→別ブログ
10月1日、鎌倉在住の社会福祉士Maa-chanさんの案内で、鹿児島からの仲間と建長寺にお参りしました。

帰りがけに、高井正俊『建長寺物語』(四季社、2010年)を買いました。
鹿児島県大隅半島にある道隆寺跡と建長寺の開山が中国(宋)からの蘭渓道隆であるというごく最近知られてきた事実をもとにお参りしたわけです。
*建長寺1253年に先立つこと7年、1146年に道隆寺が建立されたと史実は伝えている。

それは、ともかく、
この本をブログで紹介しようとしたのは、

「禅の根本精神は、非日常的な世界に見出すものではなく、ごく普通の毎日の生活の中にある」p.109 とあったからです。

つまり、介護の世界を根本的に考えようとするときに、日本において長い伝統のある禅の思想をてがかりにできるのでは?と思ったからです。

この本では、中国禅宗の第六祖・慧能大師(638-713)の因縁話を例に挙げています。
禅宗には「作務」(さむ)といって、掃除・草取り・巻き割り・畑仕事・炊事など、日常のすべての労働をあらわすことばがあります。この「作務」が意味しているのは、日常の生活そのものに精励することが、そのまま仏法を行うことでもある・・というのです。

「介護」について胡散臭くなるのは、その日常の生活の場面を離れて外来用語の「ケア」とかいっているうちに、実態と遊離する観念論になってしまうからだと、たまたま手にした禅宗の解説本であらためて気がつきました。

厚生労働省の審議会での議論が、介護の日常性をはなれて委員の先生方の母体である各組織の利益を守ろうとする議論に転化したとき、介護の原点を離れることになった。

それに反して、「笑福会」=ブログ「笑わせてなんぼの介護福祉士」の読者会=の会合がみずみずしいのは、難しい用語や論理を使ってはいないが、つねに介護の日常的な現場から発見されている事実や疑問だからですね。


禅宗が鎌倉時代に発展した背景などを読むと、
現代は、
鎌倉時代
明治維新
に次いで、日本社会が混迷に陥っている時期では?
という最近考えていることとも重なってきました。

鎌倉時代は、武家政治と禅宗によって
明治時代は、武家政治の断絶と西洋文明によって
次の時代を切り開くことができたが、
現代にはそれに相応するシステムや思想があるのだろうか?

第二次大戦後におけるアメリカ思想の受け入れ(効率優先・金銭主義)は、最近になって破綻が目に見えてきた。
当のアメリカですら、サイデル教授のような「正義」論が提起されている。

サイデル教授の本は、面白いが、所詮は、西洋哲学史の知識を応用した議論の方法を示しているだけで、日本社会が当面している現実を分析し、今後の方向を指し示しているわけではないですね。

建長寺をはじめとする鎌倉時代の寺は、明治維新で言う帝国大学に相当する役割を果たした。
これに相当する社会的な機能は現代の大学にはあるのだろうか?

30年近く、5つの私立大学に勤務し、そろそろ退職しようとしている69歳の私が率直に思うことは、現在の大学では、鎌倉時代の禅寺や明治時代の帝国大学が果たしてきた機能は殆どなくなっているということですね。


妻が、毎夕20時から22時までBSフジでやっているPRIME NEWS LIVEという番組をよく見ていますが、9月30日、ドイツのシュペングラーの『西洋の没落』を素材にした西部邁・浜矩子両先生の話は面白いからと呼ばれ、最後までみました。

西部先生:日本文明の衰退は必至。できることはその速度を緩めることだけ。と厳しい。
浜先生:その滅亡の先には、光がある。

という提言で終わったのです。

飛躍するようですが、
禅寺で、・・10月4日は、1人で円覚寺にお参りし、静かなひと時を過ごしました。そのとき、この両先生の討論を思い浮かべ、介護現場のいわば底辺からの発言である「笑福会」のような動きの中にこそ、次の時代の光を見たのです。


*この記事は、奈倉道隆、トヨロ、gitanist各氏からお聞きしたり読んだりしたことから示唆を得ています。
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