介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

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第4047号 主要国の「最低保障年金」比較

2010-11-11 00:57:25 |  年金
年金に関する季刊専門誌『年金と経済』(Vol.29, No.3)では、「諸外国の高齢者所得保障と日本への示唆」を特集しています。(2010年10月。年金シニアプラン総合研究機構。写真)

この号では、
・松本勝明(国立社会保障・人口問題研究所) ドイツ
・嵩 さやか(東北大学大学院) フランス
・江口隆裕 (筑波大学大学院) ドイツ・フランス・スウェーデン

と、各国の専門家が分担して、各国の年金制度のうち、主に最低保証年金に関する点を考察しています。


【日本の年金制度】

日本の年金制度を簡単におさらいします。

自営業でもサラリーマンでも、65歳以上になれば老齢基礎年金を受けます。40年間国民年金の保険料を納めていれば月額66,000円程度を受けとります。
*私のように、70歳まで支給開始年齢を遅らすと、少し多い額を受け取ることになります。
*満額の保険料を納付しない場合は、減額された年金額になります。実際、平均的な老齢基礎年金は5万円と少しです。
 65歳で52,930円(男子 55,090円 女子 51,758円)

P 6939 平成20年度 事業年報(厚生労働省、2010.10.14)

サラリーマン(公務員や教員などの共済組合を含む)の場合には、老齢厚生年金が上乗せになります。この老齢厚生年金の額は、どの程度の賃金だったか、どのくらいの期間保険料を納付したかで違います。
支給開始は、65歳からですが、私のように(69歳ですが)働いて賃金を得ている場合には、年金の支払いは停止されます。

基礎年金・厚生年金のほかに、企業年金という仕組みによる上乗せ、個人年金というプラス部分が個人の選択で加えられます。


【年金制度の課題】

・年金記録問題のような管理的な問題
・積立金の運用のような長期的な資金運用

といった問題もあるが、
基本的な課題は、老齢基礎年金の額が低いこと、保険料を納めなかったため無年金の人がいることです。


【年金改革】

民主党が選挙公約に掲げた年金改革の骨子は、
・全国民が加入する一元的な所得比例年金をつくる
・消費税を財源とする月額7万円の「最低保証年金」の創設
・「歳入庁」を置いて、税と社会保険料を一体的に徴収する
という構想を骨子とした法律を2013年までに成立させる、というものでした。

その後、菅政権になって、「新年金制度に関する検討会」が2010年6月29日に、「中間報告」をまとめ、上記の3点を含む7つの基本原則をうちだしています。


【ドイツの「基礎保障」】

ドイツの公的年金は、所得比例年金だけであり、日本の基礎年金に相当するものはありません。

2001年に、年金制度とは独立して、「社会扶助」の一種として「基礎保障」が設けられました。社会扶助ではあるが、受給者の子および扶養義務者である親の所得が一定額以下の場合には、扶養請求がされません。

P 6070 ドイツの年金制度 (『年金と経済』)第26巻第4号


【フランスの「高齢者連帯手当」】

フランスの公的年金も所得比例年金のみで、基礎年金に相当する仕組みはありませんが、最低額を設けています。

フランスでは、このほかに、年金制度の枠外の制度として、非拠出制の「高齢者連帯手当」をつくりました。保険料を徴収しないかわりに、一般社会拠出金CSGとよばれる社会保障目的税を財源として、収入が一定以下の高齢者に支給されます。

扶養義務者の援助は考慮されません。受給者が死亡した場合、一定額を超える相続財産があれば、支給した給付額相当額がその相続財産から回収されます。

P 4398 フランスの社会保障(厚生労働省、「海外情勢報告」)


【スウェーデンの最低保障年金】

1998年に大幅な年金制度の改革が行われた。
保険料率を18.5%と固定し、このうち16.0%相当分を所得比例年金に、2.5%分を加算年金(プレミアム年金)にあてられます。

低所得または無所得のために所得比例年金を受けられない場合、また、所得比例年金の額が一定額以下の人のために「最低保障年金」がつくられました。

最低保障年金は、
・財源は、全額国庫
・単身者で、年額85,839クローネ(2007年)で、約123万円。
・ スウェーデン国内に3年以上居住すること。(満額を受給するには40年以上の居住期間)

P 4766 田中秀明(一橋大学)スウェーデンの年金改革 *財務総合政策研究所での報告。
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2 コメント

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率直な (又佐)
2010-11-12 21:05:09
率直な疑問なのですが、
遺族年金が収入としてみなされず、特養に入所した場合は、食費や居住費の減額の対象となります。しかし、在宅で生活している方々は遺族年金も含め生計に当ててらしゃいます。在宅と施設では、やはりこの不公平感があるのが実態です。
その上で施設の居住費や食費の設定金額が相当かどうか。年金問題は、その先の問題へもつながっているようなそんな気がしています。
遺族年金はなぜ収入とならないのでしょうか。この不公平感は説明できません。
縦割り的思考のせいか (bonn1979)
2010-11-12 21:31:25
又佐さん

コメントありがとうございます。

実際に第1号被保険者になってみると
医療・介護・年金
の3つは共通の土台でやって欲しいと思います。

年金から介護保険料が控除されていますから。

在宅と施設の公平の問題は
入院のときにもありましたね。

遺族年金は
個々人の年金が確立すれば
その性格がかわってきますね。

ご指摘のような点も
はっきり政策課題として
あげてゆくべきでしょうね。

年金は不勉強ですが
「基礎年金66000円」といわれるので
それがモデル計算に過ぎないことを
確認したかった。

外国の3つの例は
不消化でした。

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