おもしろき ー熊本、鹿児島、宮崎で過ごした日々🌟🌟🌟

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生命の泉 七話

2012年01月17日 02時04分27秒 | 僕が書いた小説
年末から短編小説なるものにトライしている。

これはその続きである。

湖が光り始めると同時に、いろんなうめき声が聞こえ始めた。

リョウがゆっくりと語り始めた。
「釣り針を湖に投げ込む時、釣り針に閉じ込められた魂を解放する呪文を唱えたんだ。
今、光ってるのは釣り針から数えきれないほどの魂が解放されている証だよ。

向こうの世界で2000年前に一度、魂を解放したんだけど、ほんと昨日のことのようだよ。」

僕は呟く。
「生命の泉…、物に生命と意志を与える水…」

CHIKARAが静かに言った。「そう。この湖は今、たくさんの魂が溶け込んで、向こうの世界で生命の泉とお前達が呼ぶものへと変わったところじゃ。

向こうの世界では物に命を与える水など言って喜んでいるが、魂が成仏できずに、泉の中で生きておるだけじゃ。

それが生命の泉の実体だ。泉の水を物とうまく融合させると、物があたかも命を得たかのように意志を持ち動きだすんじゃ。

もうわかっただろうが、一度抜かれた魂は過去の記憶が薄れてしまっている。

机なんかと融合すると、すっかり昔の記憶は消え、自分は机として生まれたと思い込むんじゃ。
もともと人間だったというのに…
悲しい話じゃ。

そのことを知って、巨額の富を手に入れたのが、向こうでお前が勤めていた会社のオーナーのじゃよ。

そしてコウトク、お前は何もかもが仕組まれたのじゃ。

わしも龍神もそのことを知りながら、お前を利用してしまう結果になってしもうた。
ゆっくり説明したいが、そろそろ湖の光を感知したやつらがやってくるぞい。
手強いぞ。」

僕はオーナーの顔を思い出していた。まさか彼が…

そして坂本健さんや林和貴くんがオークの手先で、僕の心に隙間を作るため、わざと僕を遅刻させたという事実をこの時は知るよしもなかった。

続く…