すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【キリン杯】ハイチ戦の失点シーンで見えた日本のアキレス腱

2017-10-19 07:24:59 | サッカー日本代表
前がかりのスキを狙われた1失点目

 ハイチ戦の日本は2点を先制しながらも、前半に1失点、後半に2失点し、最後は追いついて3-3のドローで終わったゲームだった。前半立ち上がりのデキのよさと対照的に、日本の失点シーンを分析すると見えてくるものは多い。

 前半の立ち上がり、日本はお約束のハイプレスから入り、前がかりのまま攻め続けた。ボールを握りあのまま90分間、ポゼッションし続けられれば、試合に負けることはない。

 だがそうカンタンに行かないのがサッカーだ。日本の1失点目。相手ペナルティエリア周辺には、日本の選手が6人もいた。サッカーは1チーム11人だから、GKを除けば日本の残りのフィールドプレイヤーは4人しかいない。すなわち日本は最前線と最終ラインが分断され、中盤にぽっかりスペースが空いていた。そのスキを狙われた。

アンカー脇のスペースを使われた

 まずハイチの最終ラインから日本のアンカー(遠藤航)の脇のスペースを突くロングパスを出され、これが敵アタッカーにつながった。このアタッカーには昌子が前へ出て対応したがワントラップでかわされ、遠藤がタックルするが簡単に置き去りにされて、どフリーでボールを相手の右サイドへ展開されたのが始まりだった。

 最後は小林祐希のプレスバックが遅れ、自陣ペナルティエリア内に決定的なスルーパスを出された。シュートはGK東口のほぼ正面だったが、ボールは彼の脇の下を通過して行った。完全に防げた失点だった。

 まず前がかりになり4-3-3システムの弱点であるアンカーの脇にスペースを空けたこと。そして遠藤も淡白に飛び込むのでなく、そのままチェイシングしてプレッシャーをかけ続ければよかった。直接的には遠藤の判断ミスと小林、東口のミスが重なったが、そもそも日本は2点リードしているのだから、総勢6人が前がかりになり相手ペナルティエリアに殺到する必要などなかった。要はバランスの問題だ。

 まず大前提として、得点差とポジショニングのバランスを考えない状況判断のミスである。2-0でリードしているのだから、インサイドハーフは2人とも上がる必要はなかった。少なくとも1人はステイしてアンカー(遠藤航)の脇のスペースを埋めているべきだ。

後半の失点はマークの甘さを突かれた

 後半に食らった2点目の失点は、まず右サイドからクロスを入れられ、ボールの周りには日本の守備者が5人もいるのに折り返しをどフリーでシュートされた。

 また3点目の失点も、自陣ペナルティエリアの外から、ノープレッシャーのままシュートされた。日本の選手は「この位置からはシュートを打ってこないだろう」と決めてかかっていたような感じだ。

 こうしてハイチ戦の3失点を振り返ると、1失点目は状況判断(試合運び)のミス。2、3失点目はボールホルダーに対する寄せが甘く、自由にやらせたことが原因になっている。

 後半の2失点は単純にデュエルの問題だが、前半の1失点目は試合運びの問題だけに「考える能力」が問われる。常に点差と残り時間を考えたポジショニングを心がけたいものだ。

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【キリン杯・ハイチ戦】試合運びを変えるアイデアを持て

2017-10-12 15:51:00 | サッカー日本代表
もっとズル賢い駆け引きを

 2点を先制しながらも、一度は逆転を許し最後に追いついて3-3のドローで終わったハイチ戦。ゲーム全体を通して感じるのは、「日本は試合運びが下手だなぁ」ってことだ。

 試合の立ち上がりから2タッチ以内でボールを回すハイテンポなサッカーで幸先よく2点を先制してからの日本は、今度は自陣にべったりリトリートした相手を崩せずに苦しんだ。だったら、まだ2-0でリードしているのだから、ラインを下げて相手にわざとボールを持たせ、ズル賢くカウンターを狙うスタイルに変えてもよかった。

 リトリートした敵を崩せないなら、例えばきわどいロングボールを最前線に入れ、仮にそのパスが通らなくてもハイプレスでセカンドボールを前で刈り取ってしまう。またはロングボールを入れたあとそのまま相手にボールを持たせ、相手に攻めさせて前へ敵を引っ張り出す。これで相手を日本陣内に引きつけておきボールを奪えば、敵の背後にはたっぷりスペースがあるからカウンターのチャンスになる。

彼らは応用問題を解こうとしたのか?

 だが日本はそんな押したり引いたりの駆け引きをする気配などまったくなく、ただ真っ正直に緩いショートパスを交換するだけ。この日、出場した控え組は、相手にボールを持たせてカウンターを狙うハリルのサッカーを理解しているのだろうか? 根本的な疑問が残る。

 いや百歩譲って好意的に解釈すれば、彼らは応用問題を解こうとしたのかもしれない。試合の立ち上がりから30分間だけ続いたあの小気味よいパスサッカーは、縦に速いカウンター狙い専門のハリルのサッカーから能動的に脱皮を図ろうとしたものかもしれない。確かに状況に応じて戦い方を変えるのは重要だ。

 もしそうであれば意気やよし。ただし後半になりリトリートする相手に対しての攻め方はいかにもまずかった。フリーランニングがほとんどなく、棒立ちになった味方の足元にただ緩いショートパスをつなぐだけ。ロングボールの有効活用や、サイドチェンジなどダイナミックな「大きい展開」がまったく消えた。小さく縮こまったような、日本代表の悪いときの典型的な「小さいサッカー」に陥った。

 そこで発想を180度、転換し、「大きいサッカー」ができるかどうか?

 日本の成否はそこにかかっている。

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【キリン杯】小林祐希という大きな収穫 〜日本3-3ハイチ

2017-10-11 09:39:02 | サッカー日本代表
彼はテストに合格した

 1失点目を喫するまでの約30分間、ヤングジャパンはハリルの考えるサッカーとはまったく別のサッカーをした。2タッチ以内でグラウンダーのボールをテンポよくつなぐサッカーだ。よくポゼッションし、ボールを回した。特に相手が引いているときにはこういう試合運びが必要だ。速攻と遅攻を使い分ける、日本のニュースタイルが見えたと感じた。急造チームとあって、彼らは「自分の頭で考えて」ああいうサッカーをしたのだろう。そこはポジティブに評価したい。

 選手別では、ニュージーランド戦に引き続き、小林祐希が幅広く動いて完全にチームの軸になっていた。タイミングよくサイドチェンジのボールを出し、絶妙なスルーパスも放っていた。エクセレントだった。乾も鋭い動きで躍動した。この日の彼はけっこう絞り気味で、あまりサイドに張りっぱなしにならずにプレイしていた。

 スタメンはGK東口に、DFは右から酒井高徳、昌子、槙野、長友。中盤はアンカーを遠藤航が務め、インサイドハーフに小林祐希と倉田。最前線は右から浅野、杉本健勇、乾。システムは4-3-3だ。

 ゲームは前半7分に倉田、17分に杉本が得点し、ワンサイドゲームになるかと思われた。実際、前半28分に初失点を喫するまで、日本はいいテンポで試合を進めていた。ところがハイチは1点を返すととたんにペースをつかんだ。連携がバラバラで個で勝負するだけのハイチに日本は次々3点を叩き込まれ、終了間際に香川のワザありのゴールで追いつくのがやっとだった。

 あの相手に3失点は問題だ。失点シーンは緻密に分析し、今後に生かす必要がある。相手にボールを持たせてカウンター狙いで戦う日本のスタイル上、守備の固さは必須だからだ。とはいえこの試合は、小林祐希という大きな収穫を得たことで満足したい。日本はかけがえのない戦力を発掘した。香川はもう必要ないだろう。

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【キリン杯】消化不良のぬるいテストマッチ 〜日本2-1ニュージーランド

2017-10-07 10:09:10 | サッカー日本代表
守備の甘いチームにたった2点で辛勝する

 決定的なシュートチャンスを2度もはずした香川の「ゆるさ」がすべてを象徴していた。日本のポゼッション率は61%。格下相手に前半の日本はボールを握って何度も攻めるがどうしても点が入らない。後半5分にPKでやっと先制するが、同14分に同点に追いつかれると逆に相手のペースに。乾と小林祐希の途中投入が効き、試合終了間際に決勝点を取りなんとか逃げ切った。決定力不足はやはり日本の永遠の課題なのだろうか?

 日本のスタメンはGK川島に、DFは右から酒井(宏)、吉田、槙野、長友。ダブルボランチには日の出の勢いの山口蛍と井手口を配し、トップ下には香川。右SHには久保、左SHには武藤嘉紀。大迫をワントップにした4-2-3-1とした(後半に山口をアンカーとする4-3-3に変更)。ニュージーランドは5-3-2だ。

 ニュージーランドは局面によっては高い位置からプレスをかけてくるが、日本がうまくビルドアップしてボールが相手の1列目を抜ければあとはゆるい。日本の選手がワンフェイク入れれば簡単にフリーになれた。ゾーンの敷き方もニュージーランドは基本的に低く、日本のボールになれば早めに自陣に引いた。日本がボールを持てる展開だ。

 ところがニュージーランドはサイドからのクロスにめっぽう強く、日本は敵ゴール前へ何度もセンタリングを入れるが身長の高いDFにことごとく弾き返される。フィニッシュにはもっと工夫が必要だった。

力を出せない香川はもう切るべきだ

 毎度おなじみの決定力不足も響いた。香川は前半23分までに決定的なシュートチャンスを2度も決められず、あとは試合から完全に消えた。同じく不調だったのは久保で、右サイドにほとんどポイントを作れない。前半の日本はもっぱら武藤嘉紀のいる左サイドが基点になっていた。武藤はポストワークもこなすし、もっと時間をやればきっかけをつかみそうだ。

 この試合で唯一の救いは、後半に投入された乾と小林祐希だった。乾は左サイドで何度もチャンスを作り、自身が芸術的なウイングであることを証明した。またシステム変更で右のインサイドハーフに入った小林祐希は、井手口と巧みにポジションチェンジしながら多くの局面に顔を出しリズムを作った。

 結論としてこのゲームは勝敗にこだわるには相手が弱すぎ、逆に選手のテストとしては極めて中途半端だった。相変わらずデキの悪い香川は前半だけで交代させ、他の選手にチャンスをやるべきだった。同様に調子の悪かった久保の交代ももっと早くてよかった。

 最悪なのは、試合終了間際の後半48分にまるで時間稼ぎのようにアリバイ投入された若い遠藤航だ。将来性のある彼をなぜもっと早く使わないのか? ハリルは試合途中から山口を持ち味とは真逆のアンカーに置いたが、あのシステム変更をするならアンカーには遠藤航を入れて経験させるべきだ。なぜなら日本代表では、長谷部以外にアンカーの適性があるのは遠藤航だけなのだから。

 最後にひとこと。ハリルはもういいかげん、香川に固執するのはやめてスッパり切るべきだ。ハリルの迷采配をイヤというほど見せつけられた90分だった。

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