すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【プレミアリーグ 19/20 第3節】エメリ監督の慎重策が裏目に ~リバプール3-1アーセナル

2019-08-26 06:23:07 | イングランド・プレミアリーグ
カウンター狙いのアーセナルが沈没する

 第2節までを全勝している唯一のチーム同士の対戦になった。アーセナルは相手をリスペクトし、中盤の底にMFを3枚並べる守備的な布陣でカウンターを狙う。だが3点を失い、リバプールに格の違いを見せつけられた。

 アーセナルは後半4分に2-0とリードされた時点で、攻撃的な布陣に変えるかと思われた。だが、この日スタメンから外していた核弾頭、ラカゼットを途中投入したのは後半36分。最低でも勝ち点1を拾いに行くカウンター戦術自体はあり得る選択だとしても、選手交代などリードされてからの対応策が後手を踏んだ。後悔の残るエメリ采配だった。

 リバプールのフォーメーションは4-1-2-3。スタメンはGKがアドリアン。最終ラインは右からトレント・アレクサンダー=アーノルド、マティプ、ファン・ダイク、ロバートソン。アンカーはファビーニョ、インサイドMFは右がヘンダーソン、左がワイナルドゥム。3トップは右からサラー、フィルミーノ、マネである。

 一方、アーセナルのフォーメーションは4-3-1-2だ。スタメンはGKがレノ。最終ラインは右からエインズリー・メイトランド=ナイルズ、ソクラテス、ダビド・ルイス、モンレアル。中盤の底はゲンドゥージ、ジャカ、ウィロック。トップ下はセバジョス。2トップはオーバメアンとペペである。

リバプールが見せる猛プレッシング

 リバプールは立ち上がりから、前からのものすごいプレッシングを見せる。アーセナルのビルドアップに対してはアーセナル陣内でハイプレスをかけ、ボールロスト時には同じくアーセナル陣内でゲーゲンプレッシングする。すべての攻守がアーセナル陣内で進んで行く。

 逆にアーセナルはボールを奪うと、速いパスワークから2トップにボールを預けて逆襲を狙う。リバプールは両SBを高く上げ2バックで攻撃してくるため、アーセナルはボールを奪ったら早めに2トップに当て、リバプールの2CBに対し2対2の同数を作る作戦である。

 そしてアーセナルは敵陣でボールを失った場合、その場でプレスをかけてリバプールのビルドアップを制限することはしない。逆にスルスルとディフェンディングサードまで素早くリトリートし、自陣に4-4のブロックを作る。

 アーセナルは第2節までは持ち前のポゼッション志向だったが、今節は強敵リバプールを前に完全にカウンター狙いのゲームモデルを選択している。

ダビド・ルイスが試合をぶち壊す

 だが前半41分、リバプールの左コーナーキックからマティプにヘッドで先制ゴールを叩き込まれ、リードを許す。アーセナルとしては、あのまま前半は0-0で終えたかったはずだが、これで目算が大きく狂った。

 続く後半4分には、アーセナルのゴール前でCBダビド・ルイスがサラーのユニフォームを引っ張り、なんとPKを取られて2点目を失う。

 この2失点目を境にアーセナルは攻撃的なシフトチェンジをするかと思われたが、それでもやり方は変えない。このあと後半14分にはボールをキープするサラーに、またもダビド・ルイスが一発で飛び込んでかわされ、痛い3点目を失う。

 明らかにダビド・ルイスは、自分のファウルでPKを取られた2失点目でプッツンしているのがアリアリとわかった。いかにもブラジル人らしい我慢のきかないキレやすさだ。この試合を壊したのは、そのダビド・ルイスと、3失点するまで守備的なプランを引っ張り続けたエメリ監督の消極策だろう。

 アーセナルは前で張るFWにボールさえ出れば、完全な決定機になるケースが前半から数回あった。あそこで決められなかったのが運命を分けた。「決定力」は、なにも日本代表だけのテーマではないようである。

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【サッカー戦術論】ゲームモデルとプレー原則とは何か?

2019-08-24 07:12:09 | サッカー戦術論
「機械のようにプレーせよ」ではない

 ゲームモデルやプレー原則という言葉がよく聞かれるようになったが、これらは誤解されることが非常に多い。人によっては「機械のように決められた通りプレーしろというのか?」「選手の創造性を否定するのか?」などと拒否反応を示す人もいるが、実はまったくそんなことはない。

 ゲームモデルとはひとことで言って、「チームとしてどんなサッカーをしたいのか?」である。つまり同じ戦術に基づきチームがコレクティブに戦うためのガイドだ。これなしで11人揃えても、そんなものは単なる烏合の衆にすぎない。基本的な方向性すらないのでは、意思疎通のある集団プレーのしようがない。

 例えば私がもし監督なら、攻守の切り替えが早く相手を自由にさせないプレッシング・サッカーをやりたい。トランジション(切り替え)を重視する時点で、足を止めて「お休みする時間」はない。また状況に応じて機敏にポゼッションとカウンターを使い分け、選手には考える力を要求する。これがゲームモデルである。

 一方、プレー原則というのは、そのゲームモデルを実現させるための約束事だ。これは(1)攻撃時、(2)守備時、(3)攻→守の切り替え(ネガティブ・トランジション)、(4)守→攻の切り替え(ポジティブ・トランジション)ーーの4つの局面でプレー原則が設定される。つまり「この場面では、ウチのチームはこうプレーしましょう」という最低限の決まりである。

 逆にいえば最低限の約束事だから、そこから先は個人の応用力が求められる。細かく選手を縛るわけでも何でもなく、「創造性がない」なんてことにはなりようがない。

ボールを失ったときのプレー原則は?

 では私が上で例示したゲームモデルを実現させるには、どんな場面でいかなるプレー原則が必要なのか? わかりやすい例をひとつ挙げれば、ネガティブ・トランジション時、つまり前線でボールを失ったときのチームとしてのふるまいである。

 自分たちはボールを保持して攻撃していた。で、そのとき最前線でボールを失った。では、そのあとチームとしてどうプレーするのか?

 私のチームはトランジションを重視する。ゆえにその場で足を止めずに集団でゲーゲンプレッシングし、ボールの即時奪回をめざす。で、ボールを奪えば高い位置から素早くショートカウンターをかける。

 反対にもしボールをすぐ回収できない場合には、背中で敵のパスコースを切りながらミドルサードまでリトリートし、ブロック守備に移る。これが我々のプレー原則だ。

 一方、これとは正反対の考え方もある。例えばボールを失ったら初めからディフェンディングサードまでリトリートし、低い位置にブロックを組むことだ。これにより組織的な守備からボールを奪い返し、ロングカウンターをめざす。そんなプレー原則に基づいた戦い方もある。

 粘り強い組織守備が得意なチームなら、こっちを選択するのもアリだろう。ただしこのプレー原則を選ぶ場合は、そもそも元になるゲームモデル自体が私のチームとは異なることになる。

ポゼッションとカウンターをどう使い分けるか?

 また私のチームは状況に応じてポゼッションとカウンターを使い分ける。ゆえに選手には状況を読む力が求められる。

 例えば敵ががっちりブロックを作り、守備態勢を整えている場合には、あわてて攻める必然性がない。そこでこんな局面では、ポゼッションによる遅攻を選択することがプレー原則になる。じっくりボールを動かし揺さぶりをかけ、オーバーロード等で敵のゾーンにギャップを作ってから(敵の陣形にほころびを作ってから)フィニッシュに行く。

 一方、ボールを奪った時点ですでに敵の守備隊形が崩れている場合は、一気に攻め崩すチャンスだ。そこでこの場合なら、速いカウンターを選択することがプレー原則になる。ざっくりいえば、ポゼッションとカウンターの使い分けはこんなふうになる。

プレー原則が違えば別のチームになる

 少し話を戻そう。さあ、我々はボールを失った。そのとき、その場で集団でのゲーゲンプレッシングをプレー原則とするのか? それともディフェンディングサードまでリトリートすることをプレー原則とするのか? それによってチームとしてのふるまいは180度ちがってくる。

 そもそもボールを失ったとき、個人の裁量でめいめいがバラバラな動きをするのでは収拾がつかない。意思統一が必要だ。そこで上に書いたように「その局面ではゲーゲンプレッシングしましょう」というような最低限のプレー原則を決めておく。で、意思統一して有機的にチームとして動こう、ということだ。

 こんなふうに局面に応じて最低限の原則を決めておくだけだから、プレー原則は別に選手を縛るモノでも何でもない。「守備の時にはチャレンジ&カバーを心がけましょう」みたいな基本と同じだ。

 こうしたプレー原則まで否定するなら、もはや「戦術などという選手を縛るものは必要ない」というのと同じだ。それではサッカーにならないだろう。

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【2019/20プレミア展望】野獣・マンUは番狂わせを起こす(ただし気分が乗れば)

2019-08-22 06:55:58 | イングランド・プレミアリーグ
カギはメンタルと相手との相性だ

 誤解を恐れずに言えば、マンチェスター・ユナイテッドは獰猛な野獣の集団だ。それだけに平均点の仕事ができず、出来不出来の非常に激しいチームである。

 ではなぜそうなるのか? それは彼らが2つの要素に大きく左右されるからだ。(1)モチベーション(メンタル)と、(2)相手チームとの噛み合わせである。

 その意味で2019-20シーズン・プレミアリーグ第1節のチェルシー戦(4-0)と、第2節のウルブス戦(1-1)は今季の彼らを占う上で貴重なサンプルになるゲームだった。

マンUはカウンターのチームである

 まず大前提として、ユナイテッドはカウンター型のチームである。そして4-0で圧勝した相手のチェルシーは、ポゼッション型のチームだった。ゆえにこの試合では、噛み合わせ的に「盾と矛」の関係が成立した。

 つまりカウンターが得意なユナイテッドにとって、チェルシーのようにパスをつないでポゼッションしてくるチームはやりやすい相手なわけだ。

 流れるようなパスワークで前にかかって攻めてくるチェルシーの背後には、広大なスペースがたっぷりある。ユナイテッドからすればボールを奪い、カウンターをかければ、このスペースを使うことができる。

 フィニッシュが甘く攻撃を完結できない今季のチェルシーは、こうしてボールを奪われユナイテッドの格好の餌食になった。

 獰猛な野獣の集団であるユナイテッドは、チェルシー戦のように1点、2点と得点を連取し、相手が血しぶきをあげてのたうち回るのを見て、ますます精神が高揚する。いよいよメンタルが上がり、ゴールするたびに味方同士が集団で抱き合い喜びを爆発させる。5~6人の選手が繰り広げるユナイテッドのあの抱擁の塊は、さながら野性的な原始の儀式を思わせる。

 相手チームとの噛み合わせがハマり、モチベーションが上がって激しい肉体の競り合いになれば劇勝する。これが野獣ユナイテッドの勝ちパターンである。

気勢が上がらない「盾と盾」の関係

 一方、ユナイテッド戦を1-1の引き分けに持ち込んだウルブスは、ユナイテッドと同じカウンターのチームである。ゆえに噛み合わせ上、前半はユナイテッドが仕方なくポゼッションしていたが、得意でない戦い方だけにパスのつなぎがぎこちない。

 しかも自陣に引きこもり、守備ブロックを作って待つ専守防衛のウルブス陣内にはチェルシー戦のようなスペースがまったくない。

 ユナイテッドはボールを持たされ、苦手な戦い方を強いられたあげく、敵陣には自分たちの好物であるスペースがないのだ。当然、試合運びがギクシャクし、思ったように攻められない。展開のしかたも雑だった。

 これではさっぱりメンタルが上がらない。高揚感がない。チェルシー戦のようなノリノリの展開ならば疲れていても「出るはずの1歩」が、出ない。「まあいいか」と足を止めてしまうーー。これでは勝てるはずがない。かくてウルブス戦は、まんまと引き分けに仕立て上げられてしまった。

5位、6位あたりが指定席か?

 さて、ここから導き出せる今季ユナイテッドの行く末はどうか? まずマンチェスター・シティやアーセナルなど、格上、または同格でポゼッションしてくるチームとは案外いい試合になるだろう。

 まあ圧倒的な王者シティに勝てるとは思えないが、それでもユナイテッドのカギになるメンタルの盛り上がり、精神の高揚さえ試合で呼び起こすことができれば何が起こるかわからない。中心選手のポグバが典型だが、彼らは気持ちさえ乗れば奇跡も起こせる(が、気持ちが乗らなければヤル気のない凡百のチームに成り下がる)

 一方、ウルブスのようにビッグ6をうかがう中位のチームが守備的な戦いをしてくれば、ユナイテッドはけっこう苦戦するだろう。実力がそう変わらない上に、戦い方がまったく噛み合わないのでは苦しい。

 ただし下位のチームがゴール前にバスを停めてディフェンディングサードにブロックを作るようなやり方をしてきたとしても、さすがに下位なら力の差があるだけに何とかしてしまう可能性は高い。

 とすれば総合的に考えれば、シティやリバプール、トッテナムには勝てなくても、それを追う第二グループを形成する5位、6位あたりがユナイテッドの指定席になりそうだ。

 いやいや、気持ちがグイグイ乗り、上位を食いまくる彼らの暴虐的な野生の戦いが本当は見たいのだが……と個人的な希望を最後に書き添えておこう。

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【プレミアリーグ 19/20 第2節】早くも開幕のヤマ場がきた ~マンチェスターC 2-2 トッテナム

2019-08-19 07:52:56 | イングランド・プレミアリーグ
両者一歩も譲らず

 第2節にして早くも優勝決定戦のような切迫した展開になった。マンチェスター・シティは1試合を通じてハイプレスをかけ続け、トッテナム・ホットスパーのビルドアップを制限する策に出た。

 シティの5レーン戦術と、ライン間でボールを受ける動きにトッテナムが幻惑されやや後手を引いたが、どちらが勝ってもおかしくない引き締まったいい試合だった。

 シティのフォーメーションは4-1-2-3。スタメンはGKがエデルソン。最終ラインは右からカイル・ウォーカー、オタメンディ、ラポルト、ジンチェンコ。アンカーにはロドリ。インサイドMFは右がデ・ブライネ、左がギュンドアン。3トップは右からベルナルド・シウバ、アグエロ、スターリングだ。

 一方、トッテナムのフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKがロリス。ディフェンスラインは右からカイル・ウォーカー・ピータース、 アルデルヴァイレルト、ダヴィンソン・サンチェス、ローズ。セントラルMFはウィンクスとエンドンベレ。2列目が右からシソコ、ラメラ、エリクセン。ワントップはハリー・ケインだ。

敵のウラをかく巧妙なフィニッシュ

 試合の立ち上がりから、シティが激しくハイプレスをかけてトッテナムのビルドアップを壊そうとする。

 逆にシティのビルドアップに対しては、トッテナムは守備時に4-4-1-1へ変化しミドルプレスでパスコースを制限する対応をする。トップ下のラメラが、シティのアンカーのロドリを見ている。

 シティの1点目は前半20分だった。シティは左サイドから最終ラインに落ちてきたボールを今度は右サイドに展開した。まずCBオタメンディが右WGのベルナルド・シウバにパス。シウバは寄せてきたデ・ブライネにボールを落とし、デ・ブライネがダイレクトでアーリークロスを入れる。

 これに対し逆サイドに走り込んだスターリングが、どフリーのヘッドでファーサイドに叩き込んだ。スターリングは前節のハットトリックに続き早くも4ゴール目だ。彼はボールのある(シティの)右サイドを見ている敵DFの背後から、死角を突いてうまくライン裏に走り込む動きをした。好調だ。

 一方、トッテナムも負けじとその3分後に追いつく。セントラルMFのエンドンベレがトップ下のラメラに縦パスを入れ、ラメラは軽く運ぶドリブルをしてからゴール中央、ボックスのすぐ外から左スミにきれいなシュートを決めた。

 このときは前にいたエリクセンが、マーカーを引っ張ってラメラのためのスペースを作った。このエリクセンの動きが、ラメラにフリーでシュートを打たせる事前の仕込みになった。

 両チームのこれら1点目を見ると「シュートってこんな簡単に入るのか?」と感じさせるが……それだけ完全に敵のウラをかいた巧妙なフィニッシュだったということだ。

シティの5レーン戦術が威力を発揮する

 この後も両チームは点を取り合う。まずシティだ。前半35分。右サイドでベルナルド・シウバからパスを受けて裏抜けしたデ・ブライネが、敵GKと最終ラインの間を狙って絵に描いたような強くて速いグラウンダーのクロスを入れる。アグエロはダイレクトでただゴールに流し込むだけだった。2-1だ。

 シティは大外から右SBのカイル・ウォーカーが、その内側のハーフスペースからはデ・ブライネが圧をかける。(トッテナムから見て)これら左サイドを突くダブルの動きに、トッテナムは左SBのローズとCBサンチェスのコンビネーションに迷いがあり、しきりにデ・ブライネにニアゾーンを狙われる。シティの5レーン戦術が奏功していた。

 これに対しトッテナムは後半11分、左コーナーキックから途中出場したばかりのルーカス・モウラがヘッドで押し込んで2-2とする。

 その後、途中出場したジェズスのゴールが、今シーズンからプレミアリーグに導入されたVAR判定でハンドを取られ取り消される一幕も。結果、シティは決勝ゴールを召し上げられた。これにて2-2の引き分け、痛み分けだ。

 とはいえジェズスは前節もVARでゴールを取り消されており(このときはオフサイド)、きわどいところを狙うシティにVARの導入は凶と出ているかも? もっとも圧倒的な王者シティには、それくらいのハンデがあったほうがリーグがおもしろくなるかもしれないが。

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【プレミアリーグ 19/20 第1節】アーセナルが手堅く1勝 ~ニューカッスル 0-1 アーセナル

2019-08-12 07:56:11 | イングランド・プレミアリーグ
危なげなく1点を守り切る

 アーセナルは立ち上がり、ボールが落ち着かなかったが徐々に持ち前のパスサッカーを見せ、1点先行してからは危なげなくポゼッションして逃げ切った。

 アーセナルのフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKがレノ。ディフェンスラインは右からメイトランド-ナイルズ、チェンバース、ソクラティス、モンレアル。セントラルMFはジャカとゲンドゥージ。2列目は右からネルソン、ウィロック、ムヒタリアン。ワントップはオーバメヤンだ。

 アーセナルはラカゼットやルーカス・トレイラ、ペペら主力をやや温存したようなスタメンでスタートした。

 ニューカッスルはボールを奪うと、速いタイミングで前線にロングボールを送り込むダイレクト攻撃をする。ただし攻撃が単発で、ボールを失うと二の矢、三の矢がない。

 前半20分頃からはニューカッスルがゾーンを下げ、以降はアーセナルがパスをつないでポゼッションする試合展開になった。特に前半終盤はニューカッスルがずっとブロック守備をする形が続いた。

 この試合、唯一の得点は後半13分だった。アーセナルのメイトランド=ナイルズが右サイドで敵のパスをカットし、そのまま速いカウンターからクロスを入れる。エースのオーバメヤンはこれをワントラップしてから、敵GKの脇をループシュートで抜いた。

 1点先行され、ニューカッスルはアーセナルのビルドアップに対し前からプレスをかけるようになった。だがニューカッスルはパスがつながらず、攻撃が形にならない。

 逆にアーセナルは先制してから慎重にパスをつなぐようになり、そのままポゼッションして最後まで逃げ切った。アーセナルは戦力を温存し若手を使ったため攻撃に破壊力は感じさせなかったが、1点先行してからは無難な試合運びだった。

 これで開幕からビッグ6はリバプールとトッテナム、マンチェスター・シティ、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッドが順当に勝ち点3をあげ、チェルシーだけは痛い1敗を喫した。さて、シーズンはこれからだ。

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【プレミアリーグ 19/20 第1節】シティが開幕大爆発、スターリングがハットトリック ~ウェストハム 0-5 マンチェスター・C

2019-08-11 08:58:57 | イングランド・プレミアリーグ
シティが開幕節からスタートダッシュ

 イングランド・プレミアリーグの2019-20年シーズンが幕を開けた。開幕節では、王者マンチェスター・シティがスターリングのハットトリックなどで大量5点をもぎ取り、いきなりスタートダッシュをかけた。

 シティのフォーメーションは4-1-2-3だ。スタメンはGKがエデルソン。最終ラインは右からカイル・ウォーカー、ストーンズ、ラポルト、ジンチェンコ。アンカーはロドリ。右インサイドハーフにデ・ブライネ、左インサイドハーフにはダビド・シルバ。3トップは右からマレズ、ジェズス、スターリングだ。

 シティはジンチェンコが偽SB化してステイしたり、逆にボックス辺りまでボールを持ち込んだり活発だ。CBのラポルトもスペースがあればドリブルで持ち上がる。こうして彼らは最終ラインから2タッチ以内で流れるようにビルドアップする。

 一方、ウェストハムはボールを失うと、前の2人を残してディフェンディング・サードまでリトリートし4-4のブロックを作る。逆に前で失うとプレスをかけるが、シティは簡単にウェストハムの第1プレッシャーラインを突破して行く。

 前半のポゼッション率はイーブンだが、ウェストハムはボールを持っても中盤で引っかけられ、なかなかフィニッシュへ行く形にならない。

後半、シティのポゼッション率は70%を超えた

 シティの1点目は前半25分だった。ボールを持ち、ドリブルで左から中に入り込んだジンチェンコが右サイドへボールを展開する。オーバーラップしたSBウォーカーがパスを受けてセンタリングし、最後はジェズスが決めた。

 後半6分のシティの2点目は、(シティから見て)右サイドに偏っていたウェストハムの陣形を横パスの連続技でうまく突いた。まず中盤でボールを奪ったマレズがドリブルから左のデ・ブライネにパス。デ・ブライネがさらに左のスターリングにラストパスを送り、スターリングがゴールに沈めた。

 一方、後半30分の3点目は、中央でボールをキープしたスターリングが右サイドのマレズにパス。スターリングはその間に縦へ走ってライン裏へ飛び出し、マレズからラストパスを受けてGKの頭上を抜くシュートを放った。

 また後半41分の4点目はマレズがPKをもらい、アグエロが決めたもの。そしてとどめの5点目は後半47分だった。こぼれ球を拾ったマレズが、裏抜けを狙ったスターリングにスルーパスを出し、スターリングがこれをゴール右スミに決めた。

 シティはポジショニングとボールの運び方が非常に機能的で、その点、ウェストハムとは雲泥の差があった。後半のシティのポゼッション率は実に70%を超えた。またスターリングはワンプレイ終わっても足を止めずに3人目の動きをするなど、よく走った。運動量が彼のハットトリックを呼んだ。

 さて、まずはマンチェスター・シティが開幕1勝目をあげた。果たしてこれが長い今シーズンの行方を暗示する勝利になるのだろうか。ペップの高笑いが聞こえてくるようだ。

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【2019/20 プレミア展望】今季のアーセナルは目が離せない

2019-08-09 07:52:36 | イングランド・プレミアリーグ
チェルシーからダヴィド・ルイスが電撃移籍

 イングランド・プレミアリーグの移籍期限となる8月8日(日本時間9日午前1時)に、ビッグディールのニュースが飛び込んできた。アーセナルが、チェルシーからブラジル代表DFダヴィド・ルイスを完全移籍で電撃獲得したのだ。イギリスBBCは、2年契約で移籍金800万ポンド(約10億円)と報じている。

 加えてアーセナルは同日、以前から狙っていたスコットランド代表DFキーラン・ティアニーを移籍金2500万ポンド(約32億円)で獲得している。左SBのティアニーは1997年生まれの22歳。昨季はリーグ戦21試合に出場し4アシストを記録した。2016年にはスコットランド代表デビューし、12試合に出場している。

 これまで攻撃の比重が高かったアーセナルはDF陣の弱体化がネックになっていたが、これらの補強によりチーム全体がグッと締まった。特にベテランで守備陣を指揮できるダヴィド・ルイスの加入は大きい。

ペペの加入でリーグ屈指の3トップに

 一方、攻撃陣に目を転じれば、リールからクラブ史上最高額8000万ユーロ(94億円)の移籍金でコートジボワール代表FWニコラ・ペペを獲得している。ペペは昨季リーグ・アン全試合に出場し、22ゴール11アシストと輝かしい活躍を見せた。

 かくてアーセナルの3トップは、リーグ屈指のリバプール3トップにも匹敵する破壊力を備えるに至った。

 ピエール=エメリク・オーバメヤンは昨シーズン通算22得点を挙げ、リバプールのサラー、マネと並び得点王に輝いた。かたやアレクサンドル・ラカゼットは19ゴール10アシストをマークしている。

 これにスピードのあるテクニシャンのペペが加われば、指揮官ウナイ・エメリの構想はグンと広がりを増す。この3人を生かし、新たに4-3-3の採用も見えてくる。

中盤にはダニ・セバジョスを獲得

 また中盤にはレアル・マドリーから期限付き移籍で22歳のダニ・セバジョスを獲得しており、これによる戦力アップも見逃せない。4-2-3-1フォーメーションならば、プレシーズンで好調なエジルとのトップ下争いには注目だ。

 このほか中盤では守備的MFルーカス・トレイラのほか、グラニット・ジャカやマッテオ・ゲンドゥージの成長が著しい。

 アーセナルはプレシーズンマッチでは、アグレッシブな全域プレッシングで敵を自由にさせないコレクティブさが目を引いた。トランジションを重視し、監督のコンセプトが見事に浸透したコンパクトでオートマチズムを感じさせるチームに仕上がっている。

 ダヴィド・ルイスの加入により課題だった最終ラインが引き締り、ペペが加わった「黄金の3トップ」が爆発すれば、マンチェスターシティとリバプールの優勝争いにからんで、ズバリ4位以内。チャンピオンズリーグ出場権獲得もいよいよ現実味を増すだろう。

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【レアル久保建英】大暴走する日本の「スターシステム」

2019-08-04 09:30:10 | その他の欧州サッカー
レアルは大手術が必要か?

 レアル・マドリードがピンチである。

 プレシーズンのインターナショナル・チャンピオンズカップ(ICC)はアトレチコ・マドリーに3-7と大敗するなど、いいところなし。

 その後参加したアウディカップでも、なんと3位決定戦で格下のフェネルバフチェと5-3とザル同士の打ち合いになる始末だ。そのため危機感を抱いたスペイン紙は盛んに「久保が必要だ」などと煽るが、はてさて。

 実際、レアルが深刻なのはスタメン組にモチベーションがない点だ。メンタルに問題がある。まるで消化ゲームのような雰囲気で致命的にインテンシティが低い。球際も激しく競るでなし、緩慢なパスミスも目立つ。

 守備の崩壊も目が当てられない。レアルは前でボールを失うと自ゴールまで敵が直通になる。攻撃陣はボールロストするととたんに足を止め、ネガトラもへちまもない。

 チーム全体に強くプレスをかけるわけでもなく、両サイドは絞りながら引いてこないわ、バイタルはスカスカだわ、もうさんざん。

 選手別ではオーバーウェイトのエデン・アザールはゲームから完全に消えている。あのダイエットが必要な胴回りは致命的だ。クロスを入れる際にカラダをひねるのにもひと苦労している。

 かたやベンゼマはフェネルバフチェとの3位決定戦では、相手がユルかったせいでたまたまハットトリックしたが、やる気がないのはミエミエで動きが重くインテンシティが低い。

 この2人が象徴的だが、ほかにもミスだらけのマルセロや、アンカーなんて無理なのに押し付けられてひと苦労のクロース。また準レギュラーのイスコは自己中サッカーでバランス感覚に欠ける。チーム全体にスタメン組は決定的に覇気がない。まるで今のレアルは死人の群れのようである。

売り上げ倍増を狙う商売人たち

 てなわけで危機感を抱いたスペイン紙は、「久保をトップチームに」などと蜂の巣を突ついたような騒ぎになる。とはいえ彼らスペイン人の反応は久保うんぬんがというより、むしろだらしのないスタメン組に対するアンチテーゼである。同国人を応援したい日本人とはちがう。

 だがそれを利用して日本のメディアが煽るわ、煽るわ。「スペイン紙が久保絶賛!」「スペイン紙の人気投票で久保が1位に」などと、スペイン現地紙の紙面を引用する形で、いかにも「客観報道」を装いながら恣意的な情報コントロールが行われている。洗脳だ。

 そもそも試合の70分すぎからたった20分だけプレイした久保をつかまえ、「美技に圧倒!」みたいな持ち上げ方をするのはどう考えても異常だ。

 もちろん久保が1軍入りすれば、それを追う日本のスポーツ紙やサッカーメディアは売り上げ倍増でウハウハだろう。ラ・リーガを配信しているDAZNも契約者数がハネ上がる。降ってわいた未来の「広告塔」に、さぞかし電通も舌なめずりしているにちがいない。

 かくて「久保特需」を狙う商売人たちによる、あのテこのテの報道合戦が炸裂するわけだ。

 だいたい練習中のユルいミニゲームで久保が見せる小ワザ動画をいちいち公式ツイッターで配信して人気を煽る、レアルの営業サイド自体が異常なのだが。

 で、じゃあ実際どうなんだ? といえば……そりゃあ、いまの生気のないスタメン組で行くくらいなら、ヴィニシウスと久保、ロドリゴを軸にしたほうがはるかにマシ、に見えてしまうのがレアルの致命的なところなわけで。

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