すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー日本代表】ハリルは日本人の思考を改造する

2016-11-28 08:10:51 | サッカー戦術論
相手に相撲を取らせない

「自分の相撲を取るだけです」

 よく力士は言う。

 相手がどうやってこようがまず自分がある。自分を貫き盲進する。信じて、まっすぐ。負けても潔く。それが日本で尊ばれる精神性だ。あえて戦い方をふたつに分けて考えれば、正々堂々、フェアプレイの精神である。

 だがハリルは真逆だ。相手の相撲を見て考える。敵の良さを消せ、と。相手に相撲を取らせない。相手に力を発揮させないためにはどうすればいいか? それがハリルの思考法だ。戦い方をふたつに分ければ、力士の発想と正反対である。

 ずる賢く、奸計を巡らし敵の寝首を掻く。フェアかどうかなど二の次、三の次。敵を殲滅できればそれでいいーー。

 これは日本人にとってコペルニクス的転回だ。もし今後、日本のサッカーがハリル的なメンタリティを備えて勝ち進むとすれば、まさに革命である。

 そこにあるのは勝利至上主義だ。スタイルに対するこだわりなどない。すべては勝つためにある。
 
「敵を騙して何が悪い? おまえは勝ちたいのか? それとも負けでいいのか?」

「おまえらの文化を変えろ。でなきゃ負けだぞ?」

 ハリルは無垢で善良なる日本人に、価値観の転換を迫っている。もし日本人にこれができたら、明治維新どころじゃない社会改革だ。おもしろいーー。そんなわけで今日も私は、ハリルが進める日本人大改造計画を興味深く見守っている。

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【サッカー日本代表】デュエルをめぐる噛み合わない議論を整理する

2016-11-26 08:51:26 | サッカー戦術論
ハリルは日本人の弱点を指摘しているのか?

 ハリルはしきりに「デュエル(球際の強さ)が大事だ」と強調する。で、それを契機に巷では目下、こんな議論が起こっている。

 ある人は、「いや、日本人はフィジカルが弱いんだから、1対1でなく数的優位を作って勝つサッカーをすべきだ」と現実論をいう。それに対してある人は、「個の強さは大事だ。サッカーでは組織以前に、まず個の強さがベースにあるべきだ」と原則論を掲げて反論するーー。

 なんかこれ、どっかで見たことありますね? そう、フィリップ・トルシエが代表監督だったころに巻き起こった「個か? 組織か?」の議論なのだ。デュエルの話がいつのまにか、またあの議論になっている。日本人は好きだなぁ、この話が。とはいえ「数的優位を作れ」というのも正しいし、「まず個の強さだ」ってのも正論。かくて議論はまたもや堂々めぐりと相成ってしまう。

 だが今回の議論がどうも噛み合わないのには、理由がある。それは「ハリルはそもそもどういう意図で『デュエル』を強調してるのか?」という議論のベースをスッ飛ばしているからだ。

 というのも当初、ハリルのデュエル論を聞き、多くの人はこう考えた。

「ああ、日本人は球際の競り合いが弱いから、『弱点を修正しようよ』とハリルは言ってるんだろうな」

 ところがその後、ロングボールを前線に入れて競り合わせるハリルの戦い方を見て、ある疑念が起こった。

「ひょっとしたらハリルは日本人の弱点を分析してたんじゃなく、『デュエルを武器(売り物)にして勝つチーム』を作ろうとしてるんじゃないか?」

「日本人はデュエルが弱いからそこを修正しよう」というのと、「デュエルで勝つチームを作ろう」というのは似て非なるものだ。まったく意味がちがう。わかりやすくいえば前者は「弱点を人並みにしようよ」という話。ところが後者は、「局面をあえてデュエルの戦いに持ち込み、デュエルの強さでこそ勝つチームを作ろう」という戦略論だ。

 そこで「えっ? ハリルがデュエルを唱えるのは、日本人の弱点を指摘してたんじゃないのか? そうではなく、『デュエルで勝つ』チームを作るって意味なのか? 話がちがうぞ」。そんな疑問をもつ人が出るようになった。で、冒頭にあげた「個か? 組織か?」みたいな議論になってるわけだ。

 日本人は「個の強さ」をもっと上げるべきだが、「デュエルを武器に戦う」というのが日本代表の指針として正しいのかどうか?
  
 みなさんはどう思いますか?

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【サッカー日本代表】本田のスタメン復活はあるか?

2016-11-25 08:32:58 | サッカー日本代表
コンディション不良で失意のエース

 ロシアW杯最終予選・サウジ戦。本田はついにスタメン落ちした。では今後彼の復活はあるのだろうか? 本田は所属チームのミランで試合に出ていない。そのため明らかにカラダが重くキレが悪い。だが結論から先にいえば、試合に出てフィジカル・コンディションさえ整えば問題ないだろう。

 彼はミランでもミハイロヴィッチが監督をやっていた頃は、守備にもあきれるような運動量ですさまじかった。こんなに短期間で年齢的な衰えがくるとは考えにくい。とすればやはり彼はコンディション次第だ。個人的にはとっととミランをおん出て、試合に出られるチームへ行ってほしいと思う。

プレイが立体的で緩急をつけられる

 本田のいない日本はよくいえば縦に速くスピードがあるが、悪くいえば性急で緩急がない。一本調子だ。

 例えばボクシングの試合を考えてみよう。相手にストレートを食らって一方的にラッシュされたら、ただ機械的に顔面をガードし続けていればいい。ある意味、守備は簡単だ。そこにジャブやらフックやらが立体的に加わり、緩急を付けられるからボクサーはパンチを食うのだ。

 調子がいいときの本田はそういう曲線的な流れを作れる。彼がゾーンのギャップで間受けすると何かが起きる予感がする。本田にはスピードでタテに突破するような直線的な鋭さはない。サイドにいるが「ウイング」ではない。だがプレイが立体的でタメを作れる。これは大きなストロング・ポイントである。

ポジショニングと守備が課題だが……

 もちろん、本田を使うデメリットはある。彼はカットインして中央に入ってくると、CFやトップ下とかぶることが多い。オマーン戦でも、真ん中で大迫と同じポジショニングをして大迫のシュートを邪魔してしまったシーンがあった。ただこのへんはコンビネーションの熟成次第だろう。現に気心が知れている清武などは本田が中に入ってくれば逆にサイドに張るなど、あうんの呼吸でプレイしている。

 もうひとつのリスクは守備面だ。本田はゾーンディフェンスが怪しく穴を開ける可能性がある。とはいえこれは彼だけではないし、チーム全体としてそこに手を入れるとなれば気の長い話になる。今後の課題だろう。

​ サウジ戦での「本田外し」がやたらマスコミを賑わしたが、あれは選択肢がふえたにすぎない。本田にはコンディショニングに気を配り、堂々とポジション争いしてほしい。

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【ロシアW杯最終予選・サウジ戦・2】ラインの押し上げとディアゴナーレがない日本の守備

2016-11-24 06:37:02 | サッカー戦術論
コーナーに追い詰められたボクサーのようだ

 ロシアW杯最終予選・サウジ戦。世間は「勝ってよかった」一色だが、前々回の記事で分析した失点シーンが頭から離れない。あの場面には日本の守備の根本的な欠陥が凝縮されている。ここは修正すべきだ。そこでもう一度サウジ戦の失点シーンをさらに前まで巻き戻して見て行こう。

 あのシーン。実は日本には最終ラインを押し上げるチャンスが3回あった。まず1回目は後半43分、(サウジ側から見て)右サイドのハーフラインあたりから日本のゴール前にロングボールを放り込まれた場面だ。このとき吉田がヘディングで大きくクリアした。あそこで守備の原則通り、まずラインを押し上げるべきだった。

 その数秒後には同じく(サウジ側から見て)右サイドのハーフラインあたりから逆サイド深くにサイドチェンジのボールを入れられ、酒井(宏)がまたヘディングでクリアした。このときも少しでもラインを上げたかった。

 そうすれば直後に(前々回の記事で取り上げたように)本田が1人で寄せに行くのでなく、ディアゴナーレを組みながら本田の後ろの選手も連動できていたはずだ。いやそれ以前に最初のチャンスでラインを上げていれば、このとき本田はクリアされたセカンドボールを拾えていたかもしれない。

 そして本田が寄せてくるのを見て、敵ボールホルダーはバックパスする。このときもラインを押し上げられた。このように失点シーンの直前には計3回、ラインを押し上げる機会があった。

 つまり失点シーンはラインがかなり下がってしまった状態であり、敵にたっぷりスペースをプレゼントしていた。PKから失点したオーストラリア戦の後半も同じ症状だった。そして両試合の後半に共通するのは、いずれも自陣に4-4-2のブロックを敷き敵を待ち受ける守備をしていたことだ。だが日本はそのやり方をすると最終ラインが次第にズルズル下がり、コーナーに追い詰められたボクサーのように殴られっぱなしになる。これでは何度ボールをクリアしてもセカンドボールを拾えない。

 チャンスがあれば勇気をもってラインを押し上げ、コンパクトな守備を心がけるべきだ。でないと2度ある失点は3度ある。ハリル政権ではおそらく今後も、ゾーンを下げた戦い方をする機会があるだろう。同じ過ちは決して繰り返さないようにするべきだ。

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【ロシアW杯最終予選】サウジ戦に用意したハリルのシナリオを深読みする

2016-11-19 07:16:31 | サッカー日本代表
ハリルの狡猾な深謀遠慮が見えてきた

 サウジ戦の映像を何度も繰り返し見直しているうちに、あの試合で起こったことはひょっとしたらすべてハリルのシナリオ通りだったのではないかと思えてきた。ハリルは試合に先立ち対戦相手を入念にスカウティングし、緻密にゲームプランを立て、ディティールまで詰めた上で本番に臨む監督だからだ。そこで今回は、あのサウジ戦に隠されたハリルの意図を深読みしてみる。

【深読み1】サウジのビルドアップを殺すためハイプレスを採用した

 ハリルは相手のよさを徹底的に消そうとするタイプの監督だ。彼は事前のスカウティングで、サウジはグラウンダーのボールを転がしてビルドアップしてくると知っていた。ならば最終ラインからのビルドアップの1本目のパスを狙うには、ハイプレスがもってこいだ(逆に最終ラインからロングボールを放り込まれるとハイプレスは空振りする)。で、ハリルは試合の入りをハイプレスにし、試合開始から相手のよさを消すことを狙った。

【深読み2】初めからハイプレスで先行逃げ切りするシナリオだった

 ハイプレスは運動量がいるため長時間は続かない。そこで事前のシナリオでハイプレスは前半だけとした。つまり試合冒頭から激しくハイプレスをかけて先に点を取り、先行逃げ切り型のゲームプランを組んだ。前半で先制点、追加点を取り、後半はそのリードを生かしゾーンを低くして守備的に戦うこともあらかじめ決めてあった。

【深読み3】若手を使ったスタメンには「意味」があった

 試合の入りをハイプレスで行くとすれば、コンディションの悪い本田では持たない。そこで若い久保が選ばれた。またハイプレスでファースト・ディフェンダーになるワントップとトップ下にも若くカラダが切れている大迫、清武を抜擢した。とすれば大迫、清武、久保の起用はあくまで「サウジ戦に最適なメンバー」を選んだだけであり、実は必ずしも「世代交代」うんぬんとは関係ない。

【深読み4】後半の頭から本田を投入した狙いとは?

 本田はタメを作り、試合を落ち着かせ、時間をうまく使うプレイ(遅攻)が得意だ。つまり前半で点を取り先行逃げ切りを図るなら、本田の持ち味はむしろ後半に生きる。そこで本田をあえてスタメンから外して前半のハイプレスを免除し、ゲームプラン的に彼がより機能するはずの後半頭から投入した。

【深読み5】香川の後半起用にも「意味」があった

 香川は(代表チームの中では珍しく)ゾーンディフェンスを完全に理解している。それはオーストラリア戦における守備対応でも実証されている。とすれば前半に点を取り後半は守備的にして逃げ切るゲームプラン上、ゾーンディフェンスを知っている香川は後半投入にもってこいの駒だった。特に自陣に4-4-2のブロックを敷き、相手を待ち受ける守備をやる場合、オーストラリア戦で見られたように香川は理想のファースト・ディフェンダーとして機能する。最前線でパスコースを切りディレイをかける仕事を、香川は完璧にこなすことができる。よってそのタスクを与えるため、ハリルは香川を後半に投入した。

【深読み6】じゃあ岡崎の投入は?

 ぶっちゃけ大迫は前半でかなりバテていた。ハイプレスに奔走したのだから当然だ。ゆえに本当はもっと早く岡崎を投入してもよかった。だがオマーン戦とサウジ戦の大迫のとんでもないデキを見て、ハリルは彼に強くひと目惚れしたはず。で、ハリルは大迫への強い執着から、大迫をあそこまで引っ張った。つまり「点を取ってくれ」ってことだ。

【まとめ】なんて用意周到な監督なんだ

 今回、考察した深読み1~6により、すべてはハリルのシナリオ通りに進んでいたことが判明した。本田・香川・岡崎の途中投入にまで意味があったとは。「みんなで勝ち取った勝利だ!」てなクサい演出をするためか? などとうがった見方をしていたが、実はすべてに戦術的な意味があった(ハリルごめん)。いやはや、なんて用意周到な監督なんだろう。

 参りました、ハイ。

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【ロシアW杯最終予選・サウジ戦】進化した試合運びと頻発する守備のミス

2016-11-18 07:07:21 | サッカー戦術論
流れの中で初めて失点する

 15日に行われたロシアW杯アジア最終予選・サウジアラビア戦は、2-1で日本が勝ち切った。あらためてサウジ戦の映像を繰り返し再生し詳細に分析すると……点差に応じて押し引きする日本の試合運びのうまさが浮かび上がってきた。だが反面、後半はゾーンを下げて守備的にし、相手にボールを握らせて先行逃げ切りを図ったが守備のミスが目立った。ここが課題だ。

 この試合、日本は最終予選で初めて流れの中から失点した。特に本田は2点目の起点になったことばかりが報道されているが、逆に失点の原因も作っている。1勝1敗だ。日本がW杯本大会でグループリーグ突破を目指すなら、いま一度、守備の基本を精査する必要がありそうだ。

「ハリル・マインド」で日本は狡猾になった

 日本は前半立ち上がりからアグレッシブにハイプレスをかけて高い位置でボールを奪い、ショートカウンターを狙った。だが1-0でリードして後半に入ると、一転して自陣に4-4-2のブロックを敷き、ゾーンを低くして相手を待ち構える守備に切り替えた。つまり後半は守備的にしてハイプレスで先行した1-0のリードをしっかり維持し、あわよくばカウンターで追加点を、というゲームプランである。

 結果、相手のポゼッション率は高まるが、「やられている」わけではない。相手にボールを持たせているだけだ。この流れから狙い通り2点目を奪っている。こういう戦い方の切り替えはハリル以前の日本にはなかったものだ。その意味で日本代表は「ハリル・マインド」により狡猾になったといえる。

 またこの試合、日本は局面に応じて速攻と遅攻、ポゼッションとカウンターをうまく使い分けた。ハリルが考えるタテへの速さに加え、選手が自主的にアレンジして「タメ」を効かせパスワークを増やした。そもそもサッカーでは相手が前がかりでくれば速いカウンターのチャンスだし、自陣に引かれてしまえば時間をかけて遅攻にせざるをえない。90分間、単一の戦術を取るという一辺倒な戦い方はありえない。

 このあたり、イラク戦に代表されるように今までの日本はややもすると戦い方が一本調子だったが、この試合ではスコアに応じて変化をつけられるように進化していた。ただし守備面には課題が多いのだが……。

失点シーンの発端は本田だった

 サウジ戦、日本はアジア最終予選で初めて流れの中から失点した。その失点シーンは日本のクリアボールをキープした敵に対し、本田が食いついて前に出たのが発端だった。彼が飛び出したことで、3ラインのうちMFラインのゾーンに穴が開いた。

 近づいてくる本田を避けて敵ボールホルダーはいったんバックパス。それを見て本田は安心したように前へ出たまま足を止めてしまう。ここでMFのラインに戻らなかったのが致命的だった。その瞬間、すかさず中央にパスを出されて本田は置き去りにされる。このときパスを受けた敵ボールホルダーには山口がプレスをかけたが、本田はそもそも山口に対しディアゴナーレのポジション(斜め後ろの位置)を取り、山口に中を切らせるべきだった。

 だが時すでに遅し。本田はのんびり歩いてプレスバックをサボる。かたや山口はボールにただ食いつくだけで、中を切りパスコースを外に限定しようという発想がない。加えて山口の真横にいた長谷部もディアゴナーレ(山口の斜め後ろについてカバー)を怠り、足を一瞬止めたため前斜めへのパスコースを作ってしまう。結果、カバーのない山口はボールホルダーにあっさり中へ向き直られ、ゴール前のド真ん中に深刻なパスを出された。これが失点の契機だ。

 3人続けて守備のミスをすればひとたまりもない。まず直接的には、最初にボールに食いつきそのあとプレスバックしなかった本田のミス。彼は確かに2点目の起点になったが、「失点の起点」にもなってしまった。本田が考えるサッカーは「ボールを出し入れして敵を食いつかせる」バルサ流だが、あのシーンではまさに本田自身がその餌食になりボールに食いついている。

ファウルでごまかしFKで失点するか、流れの中で失点するかの違い

 このようにハリルジャパンは自分たちのミスからピンチを招きがちだ。いつもならそのミスを取り返すためファウルで逃げ、FKやPKから失点するのが恒例のパターンだ。それがこの試合ではたまたま流れの中から失点した。ハリルは「最終予選では流れの中から一度も失点していない。しっかりオーガナイズされている」というが、単なる詭弁だ。致命的なミスをファウルでごまかし直後のセットプレイで失点するか、流れの中で失点するかの違いにすぎない。

 現にその後もゴール前で吉田がクロスをかぶるなど日本は致命的な守備のミスを連発し、いつ同点にされてもおかしくなかった。意図的にゾーンを低くし、相手を待ち受ける「やってこい」のディフェンスができるほど日本の守備は安定していない。

 もしこの形を続けるならひとつ提案だが、あのオーストラリア戦前半のような、待ち構えるコンパクトな守備をする練習をくり返しやるべきだ。相手ボールのとき、「この瞬間にディアゴナーレはできているか?」を常に意識すること。今後も迂闊な失点を続けないよう、日本はチャレンジ&カバーの守備の基本に立ち帰って修正点を確認すべきだ。

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【香川・本田外し】ハリルの大博打? 冗談じゃない

2016-11-17 08:13:50 | サッカー日本代表
苦戦の原因はハリルの頑迷な選手起用だ

 アジア最終予選も折り返し地点を過ぎた。首位争いしているサウジにしろオーストラリアにしろ、圧倒的な強さがあったわけでもなんでもない。むしろ拍子抜けだ。ではなぜ日本は予選通過でこんなに苦労しているのか? 敵は自分だ。日本は明らかに自分で自分の足につまずいている。

 適正な競争が起こり、適正なメンバーさえ選出されれば、日本は自然に予選通過するだろう。すべては過去の実績や「ヨーロッパ・ブランド」にこだわるハリルの硬直的な選手起用が招いた危機である。

 香川や本田をスタメンから外したサウジ戦の采配を、マスコミは「ハリルの大博打」「大胆采配」などと騒いでいる。だが博打でもなんでもない。逆に不調の香川や本田をここまで引っ張ったことのほうが大博打だ。

 先日、テストマッチのオマーン戦でやっと新戦力台頭の兆しが見えた。だが世代交代など、相手がはるか格下のアジア2次予選で若手を積極的に試していれば済んだ話だ。そうすれば1年も前に世代交代は自然に進んだ。

 にもかかわらずハリルは、2次予選初戦のシンガポール戦が引き分けに終わったことで、すっかりビビり上がった。「こりゃ予選通過がやばいぞ」。あげく海外組をズラリ揃えて鉄板スタメンを完全固定で組み続けた。そんな新しいトライのない超・保守的采配で香川と本田をここまで引っ張り、日本を最終予選で苦境に陥れたのはハリルの采配ミスであることは銘記されるべきだ。

 2度あることは3度ある。サウジ戦の勝利でハリル解任論は沈静化するだろうが、ハリルのキャラクター自体は変わらない。今回はたまたま「香川・本田問題」だったが、いつまた別の問題(例えば体脂肪率原理主義とか)でハリルが頑迷なワンパターン思考に陥り、日本代表を苦境に陥れるかわからない。戦術面ではハリルを支持するが、彼の選手起用には大きな問題がある。先が思いやられる。

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【ロシアW杯最終予選】新戦力が躍動し首位が見えた激闘 〜日本2-1サウジ

2016-11-16 08:07:43 | サッカー日本代表
大迫・清武・原口の奮闘で2位に浮上

 たがいに前からプレスを掛け合い、緊迫感のある打ち合いを演じた試合だった。勝ち点3差の首位サウジアラビアをホームに迎えた大一番だ。日本は勝てば状況によっては首位もあり、負ければ脱落という天国と地獄。ふたを開けてみると今予選屈指の熱戦になり、日本はPKから先制したあと原口の最終予選・4試合連続ゴールになるダイレクトシュートで突き放した。結果、日本はサウジと勝ち点が並んだが得失点差で2位に。今節が終わってみればグループ4位のUAEまで、上位4チームがわずか勝ち点1差にひしめく大混戦になった。

 最終予選が前半戦を折り返す、このカド番。ハリルは不調の本田と香川、岡崎の3枚看板をスタメンから外す大手術を決行した。ドイツ・ケルンで好調な大迫をワントップに据え、トップ下には清武。本田不在の右SHには新鋭の久保(ヤングボーイズ)を抜擢した。

 立ち上がりから日本はアグレッシブで積極的だ。動きがいい。こんなにコンディションのいい選手ばかりを揃えた試合はいつ以来だろうか? 大迫はえらくボールが収まる「神ポスト」を連発し、前線で基点を作る。彼にボールが入るとプレスをかけられても足元からボールが離れない。かたや清武はゾーンのギャップで間受けしては幅広く動いてゲームを作る。

 一方の原口はネガティブ・トランジションがよく、サウジボールになればすぐにディフェンスして相手ボールを足に引っかける。そしてマイボールにするとすぐポジトラを発動、ダイナミックに前へ出て行く。すごい闘争心だ。彼はイラク戦とオーストラリア戦で点を取ったときの、この守備から始まりシュートで終わる「止まらない動き」をこの日も繰り返した。選手の熱い気持ちが伝わってくる好ゲームである。

サウジは日本のビルドアップを研究していた

 サウジは(放り込みでなく)グラウンダーのパスできっちりビルドアップしてくる。ボールをしっかり繋ぐ個の強い攻撃サッカーだった。インテンシティも高い。なにより首位でアウェイの彼らが、あんな前がかりで積極的にプレスをかけてくるとは思わなかった。

 日本は最終ラインからのビルドアップのとき両センターバックが開き、押し出すようにSBを高い位置に上げて基点を作る。サウジはこの日本のビルドアップを明らかに研究しており、日本の2CBに対し前の2枚が常にプレスをかけて2対2を作っていた。ビルドアップ時にはアンカーが降りて一時的に3CBにするなど、ハリルは早急に対策を考える必要がある。でないと前から狙われる。

 また彼らはほとんどバックパスせずに前へ前へと押し上げてくるが、日本は前が詰まるとすぐ最終ラインにバックパスしてビルドアップし直す遅攻のクセが身についてしまっている。明らかにこの点もサウジに研究されており、彼らはしつこいフォアプレッシャーで日本のバックパスをかっさらおうと狙っていた。日本が快勝したように見えるが実は鼻の差だ。どこかのパスやシュートがボール1個分ずれていたら、試合はどうなっていたかわからなかった。

生気のない本田と香川を途中起用する迷采配

 ハリルは本田と香川、岡崎を途中から投入したが、あれは試合展開とはまったく関係なく事前に考えてあった采配だろう。「みんなで勝利を勝ち取った」的なクサい演出だ。現にハリルは試合に先立つ記者会見で「今回が最後のW杯になる者もいる」などと珍しく感傷的なコメントを発していた。感動を演出して盛り上げようみたいな意図だろうが、おかげで好ゲームの流れがブツ切りになってしまった。

 スタメンを外された本田と香川は、モチベーションが落ちて魂を抜かれた亡霊のように生気がなかった。プレイもパッとしないデキで、何か「やらかす」んじゃないかとヒヤヒヤした。勝ったからいいようなものの、あれでもし逆転されていたらハリルは即、解任だった。ごく自然に世代交代が起ころうとしているのに、なぜ時計の針を戻すのか? 相変わらずの迷采配だ。

「大胆に言えば」右SHの久保を代えるなら斎藤学が見たかったし、トップ下の清武を引っ込めるなら小林祐希をチェックしたかった。新生・日本代表の成長を阻害するだけの、必然性のないああいう選手起用は絶対に考え直してほしい。

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【サウジ戦・展望その2】焦点は右サイドに誰を使うかだ

2016-11-15 10:26:30 | サッカー日本代表
一長一短でパズルのピースがはまらない

 今夜行われるサウジ戦のスタメンは、1人を除きほぼ予想がつく。最終ラインとボランチ、左SHはいつものメンバーだろう。ワントップは大迫、トップ下は清武と予想する。唯一、パズルの最後のピースがはまらないのが右SHだ。どの候補も一長一短あり悩ましい。そこで今回は右サイドをめぐる功罪について考えてみよう。

【プランA】本田を使うリスクとメリット

 まず経験を買って本田を使った場合である。メリットはゲーム展開が立体的になることだ。本田はもともとトップ下の選手だけに試合を構築する力がある。タテ一辺倒に急ぐのでなく、サイドチェンジを入れたり、ひとつボールを持ってタメを作るなどリズムを変えられる。右SHに浅野を使えば短兵急になる恐れがあるが、本田の場合それはない。コンディションさえ整えば、彼はまだまだ「持って」いる。

 一方、最大のリスクは体のキレだ。オマーン戦でも「やろうとしていること」はいいのだが、体が追いつかないシーンが多々あった。いくら能力が高くても、それを表現するカラダが動かなければ意味がない。またコンディションがいいときのかつての本田はネガティブ・トランジションに優れ、相手ボールになったらすぐにカラダを張って泥々になりながら守備をしていた。そんな魂のプレイがチームを鼓舞した。だが守備に回す力が残ってない今は、望むべくもない。

 もうひとつ、本田を使う大きなデメリットがある。それは真ん中寄りにポジショニングし、ワンツーやショートパスを使って中央突破にこだわる「自分たちのサッカー」に陥るケースだ。特に香川、清武と本田を組み合わせるとこうなる可能性が高い。2次予選初戦のシンガポール戦、最終予選のUAE戦ではいずれも「自分たちのサッカー」を発動してしまい、中央突破に拘泥し相手守備網を崩せずチームは苦しんだ。この展開になったら最悪だ。

【プランB】浅野を使えば裏は狙えるが単調になる恐れも

 有力候補とされているのが浅野を使うパターンだ。スピードのある彼を使えば、タテに走らせてウラを狙える。チャンスメイク重視ならおすすめである。ただしもちろん本田のような展開力はないし、裏目に出ればタテに急ぐだけでゲーム展開が単調になる恐れもある。また最近の浅野はプレイに迷っている感があり、シュートを打つべき場面でパスを出してしまったりするケースが目につく。持ち前の思い切りの良さが出ていない。それが出せるようならプランBはイケる。

【プランC】クセ者、久保の存在もおもしろい

 久保は前に張ったFWの周囲を衛星的に動くセカンドストライカーとして2トップで使われる選手だ。それを考えればサイドでのプレイも比較的苦にしないように思える。思い切りもよく、ゴール前に顔を出せれば威力のあるシュートを打てる。所属チームでも試合に出ており調子もいい。コンディションは万全だ。ただし反面、今回代表へは急な参加であり読めない部分も多い。当たればデカいがリスキーといえばリスキーだ。

【プランD】斎藤を左で使い右に原口をもってくる

 マリノスの斎藤はオマーン戦で非凡なところを見せた。Jリーグでもドリブルがキレまくっており非常に威力がある。彼をジョーカーとして相手が疲れてきたころ途中交代で使うテもあるが、スタメンでもおもしろい。もちろんリスクはあるがメンタルも強く抜擢されて爆発する可能性も高い。原口は左右どちらでもできるので右に回ってもらう。破壊力という意味では、プランDが最強かもしれない。

 さて、予選突破がかかる世紀の大一番だ。

 すべてのサポーターよ、埼スタに魂を送れ。

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【サウジ戦・展望】サウジは引いてロングカウンター狙いでくる

2016-11-14 11:17:02 | サッカー日本代表
大迫・清武はOK、「右SH・浅野」は機能するか?

 ホームに首位を迎える大一番のサウジアラビア戦。日本はオマーン戦で結果を出した大迫、清武をスタメン起用し、右SHには本田を外し浅野を使う可能性が出てきたようだ。とすれば大迫、清武はまったく問題ないが、若い浅野のデキが試合を左右することになる。

 本田は確かにオマーン戦でキレが悪かったが、やろうとしているプレイ自体は悪くなかった。もし浅野が代わって出るなら、あの本田のようなサイドから真ん中にかけての組み立ての仕事が消えてなくなる。タテへのスピードを武器にする浅野は持ち味がまったく違うからだ。浅野の起用が吉と出れば裏を狙ってチャンスが作れるし、凶と出れば展開が単調になる。また浅野が右SBとうまく絡み、SBを生かせるかどうかもポイントになる。

 そして最大の焦点は、思い切りがよかったはずの浅野がこのところ消極的になっている点だ。周囲のベテランに遠慮しているのか、ドリブルでタテに抜け出すべき場面やシュートの局面でパスを選択してしまう。彼は本田のように「人を使う」タイプではない。逆に「使われて」スピードが生きる選手だ。経験が浅い浅野には、「自分が生きるスタイルとは何か?」を考え、ベストな状況判断をしてほしい。

サウジをどう攻略するか?

 さて首位サウジアラビアに勝ち点3差をつけられた3位の日本としては、ホームで首位を叩く絶好のチャンスだ。勝って勝ち点3を取る以外の戦い方はありえない。

 では一方、サウジアラビアはどんな戦い方でくるか? サウジは堂々のグループ首位。しかもアウェイだ。攻撃的にくる理由がない。おそらく引き気味で守備的に戦い、引き分け含みの「勝ち点1で十分」というやり方でくるはずだ。とすれば日本は「引いた相手をどう崩すか?」という、2次予選から頭を悩ました問題に直面する。カギはサイド攻撃だ。

 日本はオマーン戦でやったように、SHが絞るぶんSBが高いポジショニングを取ってサイドに基点を作りたい。日本がサイドに開けば、自陣に引いてスペースを消してくるサウジの陣形を横に広げることができる。その結果、肝心の真ん中が空く。そこを突きたい。具体的にはいったんボールをサイドに運んで敵を横に間延びさせ、クロスを入れる、または相手を横に開かせた上でボールを中央に素早く展開し、大迫のポストプレイから敵のギャップを突いてフィニッシュに行く。

 清武の展開力があれば、開いたSBを使いながら大迫を機能させる仕事は十分こなせるはずだ。あくまでサウジは自陣のスペースを消して真ん中を固めてくる。とすれば、くれぐれも日本はショートパスを使った中央突破にこだわるような戦い方は避けたい。敵の術中にハマるだけだ。

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【本田スタメン外し】ハリルはホントに正直だなぁ

2016-11-13 10:04:24 | サッカー日本代表
ハリルが「本田外し」をほのめかして大騒ぎに

 サウジ戦で本田はスタメンから外されるのか?

 なんでもハリルがマスコミに「本田外し」をほのめかし、それに本田が反論して大騒ぎになっているようだ。もし本当だとすれば、ハリルはホントに正直だなぁ。また喋りすぎて自分で自分の墓穴を掘ってるわ。

 だって本田から見れば、自分が外されることを「報道で初めて知る」なんて最悪だ。

 もし私が監督で彼をスタメンから外すとしたら、あらかじめマスコミになど絶対に喋らない。厳しく箝口令を敷き、まずいの一番に本田を事前に呼んで対話をする。なぜスタメンから彼を外す必要があるのか、チーム状況と監督としての考えを率直にあらかじめ本田に伝え、理解を求めて納得を得る。そして協力を求める。いわゆる根回しだ。

 ほかの選手ならそこまでする必要はないかもしれないが、相手は長く代表チームに貢献してきた本田だ。下手をするとチームが空中分解してしまいかねない。ならばしかるべき段取りを踏み、いらぬ波風を立てないようリスクヘッジするのがセオリーだろう。ハリルはそんなことまったく考えないのだろうか? 

 マスコミ報道を見る限り、ハリルはオマーン戦後に試合の感想を求められ「思ってることをつい言っちゃった」てな感じだ。ようするに「GKは190センチ以上」発言とか、「所属チームで試合に出てない奴は使わないぞ」発言と同じ。つい正直に思ってることを漏らしてしまい、自分で自分の首を絞めている。いや私はそんな、ずっこけハリルが人間的で大好きなのだが、世間の人はそうは思わないだろう。

「あいつは言ってることとやってることが違う」

「言い訳ばかりだ」

 そんなふうに悪意にとられて足元をすくわれてしまう。ひょっとしたらハリルには、もっと情報管理にたけたプロデューサー的な通訳さんが必要なのかもしれない(たとえば通訳の◯◯さんなんか、監督が口を滑らしたらロクに訳してなかったもんなぁ)。

 いや待て。

 でもハリルはメディアを操る「劇場型の策士」だから、実はわざとマスコミに本田外しをほのめかして事前に「ムード作り」をしているのかも知れないぞ。観測気球だ。とすれば今回書いてる記事なんて、ハリルの策略にまんまと乗っかってるじゃないかーー。

 てな感じでハリルのことを考えていたら、いろんなイメージが次々に湧いてきて楽しくてしようがない。

 だって大好きなんですもん、ハリルのことが。

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【ハリルジャパン】本田が画策する「反乱」に反対だ

2016-11-12 09:40:29 | サッカー戦術論
ポゼッション率だけが高い「小さなサッカー」に陥るな

 オマーン戦後、本田はあらかじめ清武と「距離感」について話し合っていたとコメントした。周囲の選手とも話し、共通理解を取ったという。非常に気になる発言だ。ひょっとしたら本田はショートパスにこだわる「自分たちのサッカー」を発動し、ハリルに反乱を起こそうとしているのではないか? だがそのサッカーでは世界に勝てないことはすでにザックジャパンが実証している。私は反対だ。

 ハリルのサッカーはダイアゴナルなサイドチェンジによるワイドな展開や、CBから前線に狙い澄ましたロングパスを入れる「大きなサッカー」だ。だが一方、本田や香川が考えるサッカーは、ショートパスやワンツーで中央突破にこだわる「小さなサッカー」である。つまり監督と志向するスタイルが違う。

 そして本田が考える小さなサッカーに不可欠なのが、彼がコメントしている「距離感」なのだ。

 本田が好むショートパスやワンツーを交わすには、選手同士が近い距離にポジショニングする必要がある。本田が「距離感」と言いだした背景には、どうもこの路線対立があるような気がしてならない。悪い兆候だ。

 一般論で言って、日本人が好むサッカーは短いボールが連続してつながる流れるようなパスサッカーだ。つまり「本田派」である。このサッカーをやるにはいい意味での連動性やアジリティ、距離感が求められる。

 だが反面、このスタイルにこだわりすぎるとどうなるか? タイのサッカーみたいにパスをつなぐこと自体が自己目的化し、ポゼッション率だけは高まるがいつまでたっても肝心のゴールが取れない得点欠乏症に陥る。「やってる自分だけが気持ちいい」サッカーだ。かつてのジーコジャパンや悪い時のザックジャパンはそれが顕著だった。日本が世界で勝つには、そろそろこの「国民病」から一刻も早く解脱する必要がある。

敵を横や縦に広げさせるハリルの「大きなサッカー」

 一方、ハリルのサッカーは反対に選手同士が一定以上の距離を取り、相手チームのゾーンを横に広げさせたり縦に伸ばしたりする大きな展開をする。これでゆさぶりをかけ、敵の守備網にほころびを作るスタイルだ。「本田派」の小さなサッカーとは対照的なスタイルであり、日本人が「国民病」から脱するにはハリルのようなサッカーが特効薬になる。

 とはいえ小さなサッカーに慣れた日本人が、いきなりハリル流の大きなサッカーをやるとどうなるか? ロングパスが精度を欠いて単なる放り込みになるなど、パスがつながらない大味な「ブツ切りサッカー」になってしまう。また選手同士が遠いため援軍がなく、必然的に敵と1対1になる局面が多くなる。すると日本人特有の個の弱さが露呈し、苦手なデュエルで負けてしまう。

 つまり今は産みの苦しみなのだが、この過渡的な「ブツ切りサッカー」現象に日本人がアレルギー反応を起こし、にわかにハリル解任論が起こっているというのが現状だ(私の解任論は全く別の理由だが)。

 しかし時計を巻き戻し、ジーコジャパンのような「自由で楽しい」ゆとり教育みたいなサッカーに変えたとしてもそれは単なる自己満足であり、日本が世界で勝てるサッカーにはならない。本田が繰り返す「距離感」なるものは、そうした時間の逆行を意味するのではないかと私は危惧している。

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【サッカー日本代表】大迫を発見した価値あるテストマッチ 〜日本4-0オマーン

2016-11-12 00:25:12 | サッカー日本代表
期待にたがわず2ゴールを決める

 日本がFW大迫を発見した価値あるゲームだった。サウジ戦に向け代表に呼ばれた初戦でヘディングと切り返しからの冷静なシュートでいきなり2発だ。トップ下でスタメン起用された清武もしっかり軸になり、1ゴール2アシスト。早くも大迫とのホットラインが光り輝いていた。

 ドイツ・ケルンでの好調さを買われ、代表に招集された大迫が躍動した。ポジションは4-2-3-1のワントップだ。まず1点目は清武の左からのダイアゴナルなクロスをヘッドで決めた。2点目は背後からの縦パスをワントラップしてゴールに向き直り、切り返しから正確にゴールへ流し込んだ。

 大迫はシュートの意識が非常に高く、ワンタッチでシュートできる場所へボールを置く技術がある。前線で起点になるポストプレイもよし、スペースへの飛び出しもよし。しかも軸がブレない強さもある。所属チームでは2トップの一角だが、ワントップでも全く遜色ない。サウジ戦でのスタメン候補は確定だろう。

 一方、トップ下で同じくスタメン起用された清武もキレと展開力があり、不調が続く香川との差は歴然としていた。所属チームで試合に出場してない点も全く問題ない。この日対戦したオマーンとは力の差があるため日本代表はポゼッションできてしまっていたが、そうすると日本はたちまち意味のない細かなショートパスに拘泥する。もし清武がいなければ、得点シーンのような大きな展開はできなかったかもしれない。彼はチームのメカニズムを一新する大きな力になる存在だ。

本田のキレの悪さは深刻だ

 またマリノスの個性派、斎藤学は左のFWでスタメン出場した。彼は鋭いドリブルが特徴で日本の「飛び道具」になる怖さがある。サイドを破ってのクロスもあり、スケールの大きさを感じさせた。途中交代したがもう少し見たいと思わせる選手だった。

 かたやボランチで途中出場した小林祐希は、清武と同じくチームの軸になる風格と力強さがあった。彼はゴール中央へ来たこぼれ球を拾い、落ち着いてコースを狙い4点目を決めた。メンタルの強さも魅力で、今後が楽しみな素材といえる。このほか短時間の出番だったが原口は相変わらずイキの良さを見せ、同じく途中出場したFW久保もおもしろい存在だった。久保は下がり気味の衛星的なFWとして2トップで試された(のちに右FWへ移動)。

 一方、不合格組である。まず本田と岡崎(途中出場)はキレがなかった。特に本田の出来の悪さは深刻でレギュラー陣の見直しも必要だろう。FW浅野(同)も判断が悪くシュートできる局面でパスしてしまう。彼は思い切りのよさが身上のはずだったが遠慮してしまっている。修正が必要だ。またハリルの期待を受けスタメン出場したCB丸山はレギュラーを狙うには厳しいレベル。ボランチの永木も個人的には物足りない。彼らの存在が象徴的だったが、Jリーグ組と海外組の間にはインテンシティの違いが明確にあった。

 なおゲーム展開としては前半開始から左FW斎藤と右FW本田が絞り気味にプレイし、サイドに作ったスペースに両SBのW酒井が高いポジショニングをして最終ラインからビルドアップするゲームプランだった。だが両SBの質が低くほとんど起点になれない。アンカーがひとつ降りて3CBを形成し、両SBを上げてビルドアップしたいのだが機能不全だ。SBの深刻な人材不足も露呈した。

 光あれば影もあり。結果を出した成功者と不出来な落伍者との対比が鮮明に映し出されたテストマッチだった。

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【ロシアW杯最終予選】サウジ戦はハイプレスからのショートカウンターで勝つ

2016-11-11 10:15:16 | サッカー日本代表
大一番で伝家の宝刀を抜くか?

 ハリルはグループ首位を迎える大一番のサウジ戦で、豪州戦とは正反対にハイプレスからのショートカウンターで勝とうとするのではないか? その証拠に今回はデュエルに弱い柏木を外し、井手口などミドルサードで力強くボールを奪えるボランチを呼んでいる。もしあらかじめ予行演習をやるのだとすれば、今日の親善試合オマーン戦での戦い方を見ればある程度予想できるはずだ。

 ハリルは対戦相手の特徴や勝ち星の状況により、まったく違った戦い方をする。丹念にスカウティングし、相手の良さを消す戦い方をする。さて、そのサウジ戦はホームにグループ首位を迎える試合だ。現状3位という日本の状況を考えても、引き分けをよしとするオーストラリア戦のような戦い方をするとは考えられない。また自分の戦術で自己を顕示したがるハリルの性格的にも、愚直に同じやり方を2試合続けるのはありえない。

 とすればサウジ戦は正反対に、勝ち点3を狙ってアグレッシブに前からプレスをかけ、ショートカウンターを狙う戦い方をするのではないか? ハリルがいちばんやりたい戦術である。それをオマーン戦で隠しておくなら別だが、サウジ戦の予行演習をするつもりなら、オマーン戦での戦い方を見れば想像はつくだろう。

 ただし前からプレスをかける戦術は体力がいるため、90分間はもたない。試合の立ち上がりや、先制点をとりたい「ここぞ」の場面などで繰り出してくると考えられる。ハッキリ言ってまだ未完成の戦い方だが、首位を叩くチャンスでその伝家の宝刀を抜くのかどうか? 興味津々だ。

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【サッカー日本代表】大迫を生かす2トップ体制を検討せよ

2016-11-08 10:58:18 | サッカー日本代表
もうひとつの選択肢としての4-4-2

 今回代表に呼ばれたケルンの大迫をめぐり、奇妙な議論がある。彼はドイツで2トップの一角をになうFWとしてプレイしている。ハリルも「2トップ用のFWだ」と考えているフシがある。で、「ハリルジャパンはワントップだから大迫は使われないのでは?」などという声を聞く。おかしな話だ。

 代表チームというものは、まず選んだ各選手の特徴や武器がさまざまある。そんな彼らの個性を生かし、それぞれの力を総合的により発揮させるためにシステムというものがある。選手選考を最重視するセレクション型の監督なら、こう考える。彼にとってシステムとは目標を実現するための手段にすぎない。

 だがハリルのようなフィロソフィ型の監督の場合、選手を選ぶより先に、まず自分自身の確固たるサッカー哲学が強く存在する。で、それを自己実現するためのシステムが用意されている。つまり選手ありきで考えるセレクション型の監督とくらべ、システムの持つ意味合いが大きい。まずシステムありきで、あとから鋳型にハメ込むようにシステムに合ったプレイを選手に要求する(たとえそのプレイが選手の持ち味と違っていても)。

 だが大迫の持ち味がチームの武器になると本当に考えるならば、彼を生かすためのシステムを用意すべきではないか? システムに囚われ彼を使わないのでは、何をやっているかわからない。具体的には、2トップの導入も選択肢のひとつとして真剣に検討すべきだろう。

 例えば4-4-2なら4-4の守備ブロックがあらかじめ想定されているため、相手ボールに移行してもスムーズにゾーンディフェンスが行える。またトップ下を置かないため、そのスペースを自由に流動的に使える。

 さらに相手ボールがサイドにあるときMFのラインはディアゴナーレによるL型ポジションを取るため、「サイドでボールを奪ったら逆サイドで攻撃態勢を取るSHにまずサイドチェンジを」というようにカウンター攻撃の型にハメやすい。カウンターをベースにサッカーを考えるハリルのキャラにも合う。

 ハリルジャパンでは4-4-2は採用実績が少ないが、大迫という持ち駒を最大限生かす意味で検討してみる価値はあるのではないか?

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