すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー日本代表】ハリルホジッチ解任騒動の正体

2018-04-29 10:29:54 | サッカー日本代表
田嶋会長のクーデターではないのか?

 日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長は、代表のスター選手である香川と本田の背後に隠れて物陰からハリルに引き金を引いた。「選手とハリルの間にコミュニケーションの問題があった」と言い募ってーー。

 2018年3月24日に田嶋氏がJFA会長に再任されてから、4月7日のハリル解任まで、たった14日間しか挟まない「テロ」だった。あまりにもタイミングがよすぎる。実は再任され、自らの地位が保全されたと同時にすでにシナリオはできていたのではないか?

 再任から3日後、3月27日に行われたベルギー遠征・ウクライナ戦は敗戦に終わった。ここがハリルの首を切るラストチャンスだった。メディアからは「選手がハリルの戦術に不満をもっている」との情報がしきりに漏れ伝わってくる。好都合だった。

 田嶋会長は動き、選手たちから話を聞く。その結果、ついたお題目が「協会とハリルの間に」ではなく、「選手とハリルの間にコミュニケーションの問題があった」である。選手を守るためだ、といえば名目は立つ。しかも自分は傷つかなくてすむ。上出来のシナリオだった。

 スポンサーがからむスターである香川、本田を重用しないハリルを切れば、ビジネス的にもお釣りがくる。しかもハリルは、田嶋氏が会長就任以来ずっと目の上のたんこぶであり続けた人物だ。

ハリルは政敵の落とし子だった

 どういう意味か? もっと時を遡れば疑惑はますます深まる。実はハリル解任は、さらに2年前の2016年3月、田嶋氏が会長就任以来からの密かな計画だったのではないか?

 なぜならハリルは、2015年から2016年にかけ田嶋氏が会長選を戦ったライバル・原博実専務理事(当時)ー霜田正浩技術委員長(同)ラインが2015年3月に招聘した「手垢のついた古い女」だったからだ。その後、会長戦に勝った田嶋氏は新しい「自分の女」を欲したのではないか?

 ちなみに、このとき新会長になった田嶋氏は、2016年2月に原博実氏を二階級降格。翌3月には、原氏と共にハリルの監督招聘に携わった霜田正浩技術委員長を降格させ、西野朗氏を新技術委員長に任命する人事を行っている。政敵は去り、外堀は埋めた。残るはその落とし子であるハリルだけだ。

 さらに穿った見方をすれば、ずっと監督畑を歩いてきた西野氏をこのとき技術委員長に据えたのは、のちのハリル解任のための布石だったのではないか? つまりハリルが消えれば、代わりに西野氏をそのまま代表監督に滑り込ませばいい、と。

 前任者が選んだハリルを切って日本人監督路線を敷けば、長老の川淵三郎相談役以下、日本人を代表監督に据えたいJFAの面々の意にも叶う。しかも政敵の忘れ形見であるハリルを同時に除去することもできる。一石二鳥だ。

 いやむしろ実は田嶋氏自身が、「さらに上層部」からリモートコントロールされているにすぎないのかもしれないがーー。

 もちろん、すべては状況証拠に基づく推測にすぎない。だが「推測」で片付けてしまうには、あまりにもシチュエーションが整いすぎているのもまた事実である。

 いずれにしろ2018年のロシア・ワールドカップは、もはや日本にとって形骸化した儀式にすぎない。W杯を盗まれたのはハリルだけではない。選手とサポーターもまた、その犠牲者である。

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【ハリル記者会見・分析】外国人監督路線は変えるべきじゃない

2018-04-28 06:27:55 | サッカー日本代表
コミュニケーションを取るのは大変だが

 日本代表監督を電撃解任されたハリルホジッチ氏が昨日(4月27日)、記者会見を開いた。会見を通して聞き、あえて中立の立場からなるべく客観的な感想を以下に抜粋してみる。

(1) ハリルの話はあちこちに飛び、しかも長くて遠大。端的に要点を説明できない。この人物をうまくハンドリングして仕事のベルトコンベアに乗せ、スムーズにことを運ぶのはものすごく大変だろう。

(2) この人物とのコミュニケーションは相当難航が予想される。個人的にはあの変わった人間性に非常に興味があり大好きなのだが、「仕事を共にする相手」としては私なら初めから契約してないかもしれない(堅守速攻で行くなら相応の実績を持つ監督はほかにもいる)

 もし私が雇用主なら、まだハリルが若い選手を頑なに使おうとせず世代交代の意思を見せず、かつ彼の特異なメンタリティが判明したこの時点で解任していたかもしれない。

(3) 練習のたび、長大な「訓示」を聞かされる選手はたまったもんじゃないだろう(長谷部が交渉し、あるときから話を短くしてもらった)

(4) この頑固な人物に、フットボールというビッグビジネスをかき回される立場の人間はたまらないだろう。

(5) この人物と組む全てのスタッフは膨大な精神的エネルギーを要求される。

(6) 国民性やメンタリティがぴったり合う人間でなければ、共に仕事をするのは(選手も含め)なかなか難しそうだ。逆にウマさえ合えば掛け替えのないパートナーになれそうである。

(7) この人物には雇用主との間に入り、上手くハンドリングする立場の人間が絶対に必要だ。その意味ではハリル招聘に関わり、彼の後ろ盾になった霜田正浩技術委員長(当時)が降格人事を受け、最後は退職した時点でハリルの命運は尽きていたのかもしれない。

(8) ただしこの人物は、W杯アジア最終予選・対オーストラリア/アウェイ戦&ホーム戦という究極の「芸術作品」を創ったアーチストだ。事前に練った緻密な分析と戦術ですべてがオーガナイズされたあのレベルの試合を行える監督がどれだけいるか? W杯本大会でもぜひ見てみたかった。

【何が悪かったのか?】

 結局、相手を過剰に忖度して本音でぶつからない、極めて日本人的でコミュニケーション不全な日本サッカー協会の体質と、頑固一徹で別な意味でコミュニケーション不全なハリルがうまく噛み合わなかったのでは? またハリルと一部主力選手には戦術に関する路線対立があり、そこに選手選考をめぐる感情的なもつれやビジネスの問題も絡んで収拾がつかなくなったのではないか?

 加えてE-1の日韓戦や最後のベルギー遠征では、テストマッチを文字通り新しいことを試す単なる「テスト」と位置付けるハリルと、目先の勝敗にこだわる協会側との意識のすれ違いが深刻化し最後にカタストロフを迎えた。

【総括】

 だれが悪いかはひとまず置くとして、今後このトラブルでサッカー協会がすっかり内向きになり、「もう外国人監督はゴメンだ。これからは日本人で行く」とならないか非常に心配だ。日本人はまだまだ海外から学ぶべきことがたくさんある。前を向いて進まなければならない。

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【サッカー日本代表】日本はポゼッション・スタイルを選択すべきか?

2018-04-27 07:04:19 | サッカー戦術論
西部謙司氏の興味深い二元論

 サッカージャーナリストの西部謙司氏が『footballista』3月22日付の記事️で「デュエルか? ポゼッションか?」という興味深い二元論を展開している。『日本サッカーは「デュエル」とどう向き合っていくべきか?』というコラムである。

 氏は記事の中で「日本が強豪国に近いクオリティを出せるのはポゼッション(ボール保持)時である」とする。そして日本は将来的にはポゼッション・スタイルを選択し、あとはカウンター対策とチャンスメイク、および決定力を向上させれば「デュエルを長所に転ずるより見込みがあるだろう」と結論付けている。

 ポゼッション・スタイルを極めれば日本は強くなる、それはそれでひとつの立論だ。ただし「デュエルを長所(武器)に変えて行くより見込みがある」という部分には少なからず違和感がある。

 デュエルはサッカーをプレイする者がすべて等しく備えておくべき基礎であり、ポゼッション・スタイルを選択すれば「なくていい」ものではない。また日本にとって「デュエルを武器に勝って行く」という類のものでもない。サッカーにおいては空気と同じだ。

 デュエルは食事するときの箸の持ち方のようなものであり、当然備えていなければ食事(サッカー)ができない。それを武器にするというより、会話をする場合の「あいうえお」のようなものではないだろうか? どうも「デュエルか? ポゼッションか?」という二者択一の論法にムリを感じるのだ。

欠点を直すか? 長所を伸ばすか?

 サッカーではこれと似たような議論の混乱がよくある。例えば「日本人は個が弱い。個を強くするべきだ」といった場合だ。これはあくまで個の弱さという「短所を改善しよう」という呼びかけである。

 にもかかわらず条件反射的に「個で勝つサッカーには反対だ。日本は組織的なサッカーをすべきだ」というトンチンカンな反論を受ける。いや、別に「個を武器にし、個で試合に勝とう」というわけではなく、「弱点(個の弱さ)を修正し、人並みになろう」という呼びかけにすぎないのだが。

 西部氏の「デュエルを長所(武器)に変えて行くより(ポゼッションのほうが)有望だ」という論法にも、これと似たような議論のねじれを感じる。要はこの議論は「欠点を直すか? 長所を伸ばすか?」という不毛な二元論なのだ。

 欠点はいくら直したからといってそれ自体、武器にならない。「欠点を直そう」と主張する論者だって、「欠点をなくして人並みになろう」「弱点をなくそう」と言っているにすぎない。

 にもかかわらず「長所を伸ばすべし」論の立場の人は、なぜか「欠点を直すか? 長所を伸ばすか?」という二者択一の二元論に仕立てたがる。で、「欠点を直すより長所を伸ばすべきだ」と結論付けるのだ。

 しかしデュエルは排他的に捨ててしまえるものではない。当然備えておくべき基本である。でなければ日本サッカーのインテンシティの低さはいつまでたっても直らないし、そこが修正できなければ世界で勝てない。

カウンター対策をどうするのか?

 念のため補足すれば、カウンター対策と決定力を向上させた上でポゼッション・スタイルを選択すべきだ、という西部氏の主張には特に異論はない。それはそれで強い日本代表ができるだろう。ただし世界レベルで見て「人並み」のデュエルを備えた上での話だが。

 本ブログのこの記事でも書いたが、西野ジャパンは選手の自主性を重んじ、であるがゆえに必然として本田が考えるポゼッション・スタイルに着地する可能性が高いと思う。

 とすれば、もしそうなった場合のカウンター対策をどうするのか? 西部氏の当該記事ではその具体論に触れられていない。

 とかく狭いエリアで人がボールに極端に偏る「日本式パスサッカー」にカウンター対策は必須だ。日本代表にとっては重要な論点である。ぜひ氏の記事の第二弾を期待しておこう。

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【サッカー日本代表】日本式サッカーを世界化する

2018-04-26 08:17:19 | サッカー戦術論
「組織でカバー」は言い訳にすぎない

「日本人の長所を生かした日本らしいサッカー」。このテーゼは、実に甘美な魅力をもっている。日本にしかないユニークでオリジナルなものを日本人が発明し、それを武器に世界に伍して行くーー。このコンセプトは日本人をすっかり魅了した。

 だがその美名のもと行われたさまざまな「日本化」により、日本サッカー界はその実、世界からすっかり取り残されてガラパゴス化した。例えば集団でショートパスを交換する日本式パスサッカーもそのひとつだ。また極端なインテンシティの低さや、1対1や個の弱さ、デュエルの欠如なども「組織でカバーすればいい。それが日本のやり方だ」という言い訳のもと放置されてきた。

 一方、ラグビーにしろ野球にしろ、日本人が世界と対等に戦えている団体スポーツは数多い。個人競技も含めれば世界に冠たるレスリングや柔道などもそうだ。だが、どのスポーツもサッカーみたいに「日本人は個が弱い。フィジカルがダメだから集団でごまかそう」などと甘ったれたことを言ってる競技はない。見事にサッカーだけである。

基本から目をそらす日本人

 そろそろ日本サッカー界は言い訳をやめ、ガラパゴス化してしまった日本式サッカーを世界化する必要があるのではないか? 1対1が弱いならそれを「組織でカバーする」のでなく、まず1対1という基本そのものを強くする努力をする。組織によるカバーリングは、それができてからの話だ。

 個の弱さも深刻だ。個が弱いと、ひとつには日本人が苦手なロングパスを正確に蹴ったり止めたりするプレーが改善されない。となるとピッチを広く使った大きな展開ができない。だから「みなさん狭いエリアに集団で集まり、短いパスをたがいに交換しましょう」という日本式パスサッカーになってしまう。個という基本ができてないからだ。

 またそもそも「1人かわしてシュートを打つ」という個の強さがなければ、日本名物である決定力の低さも解消されない。決定力だけは「組織でカバーする」などという代案がないから、日本はいつまでたっても点が取れないままだ。

 結局、何が起こっているのかといえば、日本人の欠点=基本の欠如を「組織で補う」という言い訳をすることで、日本人は短所を直す努力から逃げているのである。基本から目をそむけているのだ。

 たしかに個の強化やロングパスの精度向上には時間がかかる。それが完成するまでの間は勝てないかもしれない。長期計画が必要だ。だが、だからといって基本をすっ飛ばして「日本化」の美名のもと問題点から目をそらし続けるのでは、日本はいつまでたってもワールドカップで勝てない。

 サッカーに近道はない。日本人はそれを肝に銘じるべきだろう。

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【サッカー日本代表】西野ジャパンをめぐる政治学

2018-04-25 10:57:54 | サッカー日本代表
「本田のサッカー」になる危険性

 長谷部リベロ論とか「西野監督は名古屋時代は実は堅守速攻型だった」など、もっぱらディテールがさまざま語られている西野ジャパンだが、それ以前にいちばん重要なことがある。それは西野体制は政治的にどう動くのか? チーム内の力関係である。

 まず西野監督は今回、監督としてどこまでリーダーシップを取る気でいるのか? 少なくとも就任会見を聞いた限りでは「俺はこのサッカーで行く」色を出す雰囲気は薄い。「選手はクラブで伸び伸びやっている状態をそのまま出してほしい」「選手を縛りたくない」的な西野氏の発言からすると、ある程度イニシアチブを選手に預けるつもりなのではないか?

 とすれば急浮上するのは、本田をめぐる政治学だ。

 本田は自分の中に「あるべきサッカー像」を持ち、チームメイトをオルグ️した上で監督とも交渉し、自分が考えるサッカーをやろうとする現場監督的な傾向がある(ザックジャパンでそうだったように)。

 ハリルジャパンが崩壊したのも実は最後のベルギー遠征に本田を招集したため彼によって内部から食い破られたのではないか? という邪推もできるが、それはともかく。

 西野監督が選手にイニシアチブをある程度預けるつもりなのであれば、ロシアW杯は「本田のサッカー」で臨むことになる可能性がある。私が「ロシアW杯の歴史的意義は失われた」とか、「W杯を1回お休みすることになる」などと脱力しているのはそのせいだ。

 日本に足りないものは何か? 日本が世界で勝つためにはどんなサッカーをやるべきか? 日本代表という組織が組織としてそういう分析をした上でW杯を戦うなら意義がある。だが「本田が気持ちいいサッカー」を見せられるのでは、いったいどんな意味があるのか? 私の邪推が外れてくれることを願うばかりだ。

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【サッカー日本代表】ハリルは記者会見で何を語るのか?

2018-04-24 08:01:01 | サッカー日本代表
ゴシップを期待するマスコミは空振りに終わる

 来日している前代表監督のハリルが、今月4月27日に記者会見をする。で、下世話な話が大好きなマスコミはワクワクしながらその日を待ちかねている。

 マスコミは「あのとき本田は私をこう批判した」とか、「香川とアディダスは私にこう圧力をかけてきた」的な、ドロドロした内幕話が聞けるものと手ぐすね引いて待っている。そのテの話がいちばん売れるからだ。

 だが残念ながら、実直なハリルはそんな「おいしい話」は一切しない。おそらく膨大な採取データを持ち出してきて、きまじめに、

「ザックジャパン時とくらべ、ハリルジャパンではミドルサードにおけるボール奪取率が24%アップしている。にもかかわらず私を解雇するのは不当だ」

「ザックジャパンとちがい、ハリルジャパンではボール奪取後にアタッキングサードまでボールを運ぶのに平均17秒しかかかっていない。一方、ザックジャパンは平均2分だ。我々のカウンター攻撃がいかに有効だったか、数字が実証している。なのになぜ私は解雇されるのか?」

「デュエルの成功率では、ハリルジャパンはザックジャパンを平均36%も上回っている。これで解任されるのでは納得できない」

 こんなふうに客観的なデータを出し、「解雇がいかに不当か」をクソ真面目に訴えるつもりだろう。いかにも頑固一徹なハリルらしい。だがゴシップ好きのマスコミはそんな「売れない話」にはまるで興味がなく、完全スルーされて記事は5行で終わるのだろう。

 ハリルが「ポゼッション率の無意味さ」をマスコミに証明しようと、ポゼッション率が低かったにもかかわらずパリサンジェルマンがチャンピオンズ・リーグでバイエルンを3-0で下したゲームを例に取り、数字を交えてとうとうと「演説」しマスコミにスルーされたときと同じだ。

 最後の最後まで、ハリルと日本のマスコミには一致点がない。

 不幸な話だ。

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【サッカー日本代表】日本人は「結果」しか見ない

2018-04-22 06:46:00 | サッカー日本代表
対照的な結果が出た男女代表

 この1ヶ月間で男女代表チームに起こった出来事をくらべると、あまりの落差に呆然としてしまう。かたやマリ戦、ウクライナ戦で勝てず、選手と監督との確執やらスポンサーの関係等も取り沙汰されて代表監督が解任された男子代表。一方、修正すべき課題をたくさん抱えながらも女子アジアカップで優勝し、W杯出場権も勝ち取ったお祭り騒ぎのなでしこジャパン。あまりの鮮やかな対比に頭がクラクラする。

 この2つの代表チームを取り巻く状況を観察すると、結局、日本人は「結果」しか見ないのだ、ということがわかる。ハリル解任の理由はあれこれ言われているが、少なくともマリ戦とウクライナ戦に2連勝していれば監督解任など120%ありえなかっただろう。ハリルにとってはアイデアをいろいろ試す単なるテストにすぎない2試合だったが、日本人にとっては「結果」がすべてだったのだ。

 攻撃的布陣だったマリ戦の前半を見て、「ああ、セネガル戦でリードされたらこの布陣で点を取りに行くんだな。そのための試行錯誤、これはテストだ」などと深読みする日本人なんてほとんどいない。「タテ一辺倒で内容なし」と見当はずれな見立てをし、「勝てないじゃん」と吐き捨てる。結局、日本人は内容ではなく結果しか見ていないのだ。

勝てば官軍のなでしこジャパン

 一方、女子代表に起こったことも示唆的だ。過去の記事で指摘したように、なでしこジャパンは致命的な問題点をたくさん抱えている。だがアジアカップで優勝したら、そんなことは完全にスッ飛んでお祭り騒ぎになる。いわく「なでしこらしいサッカーで勝った」「技巧的ですばらしい」。絶賛の嵐だ。

「たかがアジアで優勝しただけ。抱える課題を修正しなければ、W杯ではとても勝てない」

 そんな冷静で客観的な分析など、ほとんど聞こえてこない。「勝った! すごい!」。ただそれだけだ。結局、日本人が興味を持つのは結果だけ。勝敗にかかわらず、内容を緻密に分析する気などない。

「試合には負けたが、ココとココはW杯本番で生きる」

「試合には勝ったが、ココとココは修正すべきだ」

 結果にとらわれず、そんな長い目で見た強化を考える視点がない。だからマリ戦とウクライナ戦で勝てなかったら監督が解任になり、女子アジアカップで優勝したら課題などすっかり忘れてお祭り騒ぎになる。ムードに流されやすい日本人は、「結果より過程を見ること」を肝に命ずるべきだ。

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【女子アジア杯】ワイドな展開でゆさぶるニューなでしこ誕生 〜日本3-1中国

2018-04-18 09:53:00 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
豪州戦で出た課題をきっちり修正

 なでしこがショートパス一辺倒から脱皮し、ピッチを広く使った大きなサイドチェンジと裏へのロングパスで中国を粉砕した。オーストラリア戦で多用した狭いエリアで他人まかせにする安易なバックパスが減り、「自分で」「前へ」の積極的な意識が目立った。一方の守備も粘り強く改善された。出た課題を次の試合ですぐに修正できるなでしこジャパンのサッカーIQの高さが光った。

 中国は帰陣が速くローブロックで日本を待ち受けるが、ボディコンタクトのある強い守備をしてくるわけでもなく見ているだけ。日本の中盤をフリーにし、最終ラインからのビルドアップをカンタンに許してくれた。このレベルの相手ならポゼッションはラクだ。問題は次の決勝戦。前から速いハイプレスをかけてくるオーストラリアである。

斜めの大きなサイドチェンジが効いた

 この日の日本はダブルボランチを組んだ宇津木と隅田から、放射状にサイドへ振り分けるロングパスとダイアゴナルな大きいサイドチェンジ、裏への長いスルーパスが効果的だった。これまでのようにグラウンダーのショートパスばかりを使う一点突破の「小さいサッカー」から、広く大きくピッチを使って相手を前後左右にゆさぶる「大きなサッカー」へと進化した。

 ただし後半は中国が一転してプレスをかけてくるようになり、判断の遅い日本の選手がボールを引っ掛けられるシーンも目立った。プレスに苦しんだオーストラリア戦同様、ここは課題だろう。

決勝は前からくる豪州をロングボールで押し戻せ

 さて次は決勝のオーストラリア戦だ。前回の対戦では彼らのハイプレスを受け、日本は狭いエリアで苦し紛れのバックパスを繰り返した。あれをカットされれば非常にリスキーだ。もし前回同様オーストラリアがハイプレスでくれば、日本はバックパスに逃げるのでなくいったん前にロングボールを入れて相手の最終ラインを下げさせ、ブロックを押し戻して陣形を整えたい。そこからが勝負だ。

 またオーストラリアは非常にプレースピードが速く、寄せも強くて速い。日本に考える時間をくれない。そのためにミスを誘発させられてしまう。ならば日本は極力プレー判断を速く正確にし、余分にボールを持たずカンタンに2タッチ以内でさばくスピーディーなサッカーをしたい。苦しいときにははっきり前へクリアし、フォアプレスで圧力をかけてくる相手のペースに巻き込まれないことだ。

 強さと速さ、フィジカルでは劣るが、細かなプレーの正確さと決定力なら日本のほうが明らかに上だ。自信をもって優勝を勝ち取ってほしい。

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【サッカー日本代表】もはや強化とビジネスモデルは両立しない

2018-04-16 07:13:18 | サッカー日本代表
人気を煽る「興行」と「強化」の深い溝

 スター選手を据え、ホームに格下ばかりを呼んで親善試合では連戦連勝。華やかで攻撃的なパスサッカーとスターシステムにより代表人気を煽り、視聴率を稼ぐ。ただしW杯本大会だけは(そのやり方では当然)勝てない。これが過去の代表のビジネスモデルだった。

 ところがハリルは香川や本田、岡崎を呼ばず、しかも見た目がよく視聴率を稼げるパスサッカーを捨てた。テストマッチでも勝てない。これじゃあビジネスとして成立しないよーー。

 もし巷間いわれているようにハリル解任がこのようなスポンサー筋の影響によるものならば、ここにきて代表の強化とビジネスはもはや両立しないものになってきているといえる。

決勝トーナメントを目指すなら興行では無理だ

 どういうことか?

 まず代表の強化についていえば、ワールドカップでグループリーグ突破を目指すなら、サッカー4流国の日本はどうしても守備的なスタイルを選択せざるをえない。カウンターに弱い日本式パスサッカーでは絶対に勝てない。またスター選手は往々にして攻撃を担うことが多く、守備を固めてW杯で勝つことを優先するならスターも使いにくい。

 テストマッチの位置付けも微妙だ。日本では親善試合といえば「勝つもの」であり、プロレスでいえば悪役レスラー(格下の弱小国)を呼んでチンチンにやっつけ、観衆に快哉を叫ばせるために存在した。少なくともビジネス的には。

 だが本来、テストマッチは新戦力のテストや、新しい戦術を試して効果を確かめ本番に備えるためにある。文字通り「テスト」であり、当然、失敗することは普通にある。勝ち負けに特段の意味はない。逆に「勝つこと」ばかりを優先していてはテストの意味がない。つまり強化と興行が両立しない。

 日本はW杯に出場すること自体はもはや当たり前になり、次なる目標は決勝トーナメント進出に移ってきている。だがグループリーグを突破するための本格的な強化をするなら、上述のように興行としての要素を満たせずビジネスモデルが成立しないーー。日本はそんな曲がり角にきている。

八方丸く収めるには妥協しかないが……

 八方丸く収まるビジネスモデルとしては、目標をあくまでW杯出場までにとどめ、決勝トーナメント進出は目指さない。その上で従来通りスター選手を起用し、華やかで攻撃的なパスサッカーを見せて興行として成立させる、ということになる。

 だが果たしてそれでいいのだろうか?

 理想は「日本式」ではなく「世界基準」のパスサッカーで勝つことだ。そのためには大前提としてまず個の力を養成する必要があるし、ホームではなく厳しいアウェイで強豪国ともテストマッチを戦わなきゃならない。そもそも育成年代から正しいゾーンディフェンスを根付かせる必要もある。

 ただし、そのためには時間がかかる。こうした基盤を作るまでの間は思うように勝てないし、ゆえに興行としてサッカーが成り立たない。ここで問題は無限ループして解決策がなくなってしまう。

 さてあなたはいったい、どう思いますか?

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【ロシアW杯】日本式パスサッカーはどう崩壊するか?

2018-04-15 07:07:36 | サッカー戦術論
西野ジャパンの「負け方」をサンプリングせよ

 この記事で書いた通り、監督交代した急造の日本代表はロシアW杯で得られるフィードバックがゼロに近い。だがなんとか得るものを持ち帰らなければ、日本はワールドカップを1回お休みしたのと同じになる。それでは本当に意味がない。そこで妙案がある。

 西野ジャパンが決勝トーナメントに進出することはありえないから、採取できるサンプルはグループリーグの3試合だけだ。西野監督は「ボールをつなぐサッカー」をするそうだから、ならばこの3試合で「日本式のパスサッカーはどう崩されるか?」をサンプル収集し、未来に役立てるのである。つまり日本式パスサッカーの弱点を見つけ、将来に向けて課題を修正するのだ。

 世界から取り残され、日本人のパスサッカーはきわめて特異なスタイルへとガラパゴス化している。どういう意味か? 日本人は長いパスを蹴る・止めるのが苦手だ。しかも味方同士が距離を取ってロングボールを受ければ、そのあと1人でボールをキープする必要がある。個の力で劣る日本人の弱点が露呈してしまう。そこで日本人は、これを集団の力で解決しようとする。

 すなわち味方同士が近寄ってやり、集団でショートパスを交換するのだ。これなら個の力は最小限ですむ。これが「日本式パスサッカー」であり、日本人の遂げたガラパゴス化だ。

カウンターに弱い日本式パスサッカー

 だが、こんなチームを攻略するのはカンタンだ。

 一例を挙げれば、日本からボールを奪えば一発長いサイドチェンジを入れ、あとは縦に速い攻めをすればさっきまでボールに集まっていた日本の選手は3〜4人がまとめて置き去りにされる。ピッチに均等に広がったまま大きい展開ができるヨーロッパのチームとくらべ、人がボールに極端に偏る日本式パスサッカーはカウンターに非常にもろい。

 ロシアW杯での日本代表はこうした弱点を連発するはずだ。そこで「西野ジャパンはいかに負けるか?」を細かくサンプリングし、それを将来に生かす。

 集めたデータを分析すれば、結局、ハリルが言っていた「大きい展開」や「1対1の強さ」「球際のデュエル」が必要だったんだ、てな話になるのだが……バカは自分の愚かさや欠点を自己認識できてないからバカなのだ。

自分たちの欠点をいかに修正するか?

 日本人は自分たちはどこがどうダメで、それを修正するには何をすべきか? を考えようとしない。自分を知らないから「日本人の特徴を生かせ」「長所を伸ばそう」「サッカーの日本化だ」と、ゆとり教育みたいなサッカーになる。日本代表は歴代、この繰り返しだった。

 そうではなく、日本人に必要なのは自分たちの欠点をいかに修正するかだ。

 そこで日本式パスサッカーはどう崩壊するか? をロシアW杯でサンプリングし、自分たちに足りないものを認識させる。そうすることで初めて、日本式ではなく「世界基準のパスサッカー」をしなければW杯で通用しないことがわかるだろう。

 バカは自分のどこがバカなのか? を認知できて初めてバカを卒業できる。でないと同じことを何度でも繰り返す。

 ロシアW杯は「自分たちのサッカーはどこがどうダメなのか?」を自己認識するための大会になる。

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【女子W杯最終予選】辛くもW杯出場権を獲得 〜日本1-1豪州

2018-04-14 08:48:46 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
課題は山ほどある

 オーストラリアはすべてにおいて速かった。寄せの速さと男子レベルのボールスピードの速さで日本に圧力をかける。それを日本が技術でかわす展開になった。細かなテクニックの日本 VS 強さと速さのオーストラリアの対戦だ。

 日本は後半18分に裏のスペースに飛び出した長谷川にスルーパスが出てニアゾーンを突破し、マイナスの折り返し。これを坂口が冷静に決めて先制した。その後、後半41分にゴール前の混戦からオーストラリアのサマンサ・カーに押し込まれて試合は引き分け。その結果、オーストラリアと日本がグループリーグを突破して準決勝に進出。日本はW杯出場権を獲得した。

 立ち上がりから日本は、ダイアゴナルな長いサイドチェンジと縦へのロングボールを操るオーストラリアの力強く大きな展開に押し込まれた。だがフィニッシュの精度自体はわずかに欠け、ギリギリの局面で日本のディフェンス陣がカラダを投げ出して防ぐ。特に前半13分のオーストラリアのマイナスのラストパスからのシュートを、右SBの清水がスライディングしながら止めた守備は1点ものだった。

中途半端な横パスとバックパスをやめろ

 だがワールドカップに向け、なでしこの課題は多い。日本は「ボールをつなぐこと」がプライオリティのトップにある。おそらくなでしこリーグでは「時間と空間」がたっぷりあり、それが簡単にできるのだろう。だから押し込まれている場面でも苦し紛れにムリなバックパスをしたり、どんな局面でもリスキーなショートパスをつなごうとする。

 だが考える時間もスペースもない世界の頂点ではちがう。リスクヘッジを考えるべきだ。特に「とにかく手直な味方へバックパスしておこう」という安易なプレーは絶対にやめるべき。刀を構えている敵の前に首をさらすのと同じだ。

 同様に1〜2メートルの中途半端な短いパスをつなごうとするのも世界レベルでは危険だ。簡単にカットされてカウンターを食らう。複数の選手が狭いエリアに集まり、集団でショートパスを交換しているところをパスカットされてカウンターを受けると、3〜4人の選手がまとめて置き去りにされてしまう。非常にリスキーだ。

「小さいサッカー」を卒業しワイドな展開を

 なでしこはグラウンダーのショートパスを転がしてボールをつなぐ「小さいサッカー」をするが、もっとピッチを広く使う大きな展開をふやすべきだ。オーストラリア戦でもまれに見られたフィールドを斜めに横切る大きなサイドチェンジは特に有効。また敵の最終ラインのウラを狙う長い縦パスももっとふやしたい。

 それから判断のスピードをもっと速くすること。世界のトップレベルでは「考える時間」をくれない。日本はプレースピードと判断が遅すぎる。ボールスピードもまだまだ速くする必要がある。また敵のボールホルダーにカラダを押し当てて前を向かせない、自由にやらせない1対1の粘り強い守備も必要だ。相手をフリーでやらせすぎる。

 課題は多いが、細かな技術ならすでにある日本は潜在能力が高い。修正点をひとつひとつクリアして、世界の頂点をめざしてほしい。

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【ロシアW杯】「参加することに意義がある」大会になる

2018-04-13 06:49:53 | サッカー日本代表
ビッグ3が揃って復活する慰労会

 きのうの西野新監督の就任記者会見の全文を読んだが……想像通り具体的なことはなにもなく、「参加することに意義がある」みたいな大会になりそうだ。

「選手を縛りたくない」的な発言から想像するに、監督には確たるアイデアはなく選手の自主性にまかせるジーコジャパン型の「自由で楽しい」ゆとりサッカーになるのだろう。

 攻撃的なサッカーをするそうだから、コロンビア、セネガル、ポーランドという格上相手に華々しく散る玉砕サッカーだ。

 西野監督はハリル政権下で干されていた香川と本田、岡崎を外すはずはないから、ビッグ3がそろって復活し「自分たちのサッカー」を楽しく繰り広げ、最後のW杯を戦う「ご苦労さま慰労大会」になるのだろう。

 まあ1回くらいそういう大会があってもいいかもね。

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【ハリル解任】W杯を取り上げられたのはハリルだけじゃない

2018-04-12 05:42:51 | サッカー日本代表
歴史的意義が失われたロシアW杯

 ワールドカップに参加することは歴史的な意義がある。各国は自分たちの流儀をW杯にぶつけ、そこから得たフィードバックをもとに自国のサッカーをさらに進化させて行く。それがW杯に参加する歴史的意義だ。

 まず自分たちが思う戦い方でやってみる。するとこんな結果が出た。じゃあ、ここをこう修正し、今度はこんなやり方をしてみようーー。この繰り返しでその国のサッカーは発展して行く。

 むろんこれはサッカー協会がW杯からフィードバックを得る、という意味だけではない。日本という社会全体がW杯での自国の戦いぶりを観察し、社会の各層からマスメディアやSNS等を通じてさまざまな議論がわき上がる。そして実りある多くの論点が提示され、議論が収束して行く。そのことによって日本のサッカー文化が発展して行く。

 われわれは、その機会を取り上げられたのである。

 どういう意味か?

 例えば相手にボールを持たせて縦に速いカウンターを狙うハリル流でW杯を戦えば、(勝つにしろ負けるにしろ)そこでどんな試合経過をたどり、どのような結果が出るのか? そのやり方は世界に有効か? 日本のどこが通用し、どこが通用しなかったか? 修正すべき点はどこか? という情報が得られる。この価値は非常に大きい。

 だが一方、「ロシアW杯本番限定」のワンポイントリリーフ監督が間に合わせの戦術と選手で大会を戦い、いったいどれほどの収穫があるのか? そこからどれだけのフィードバックが得られるのか? まったくゼロに近いと言わざるをえない。

 日本にとって、ロシアW杯の歴史的意義、社会的意義はもはや失われた。

 この損失はとてつもなく大きい。

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【女子W杯最終予選】緊張感のある好ゲーム 〜日本0-0韓国

2018-04-11 09:55:35 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
相手のミスに助けられた一面も

 緊張感があり、インテンシティの高い好ゲームだった。日本は要所でカラダを投げ出し、粘り強く力強く戦った。「この一戦は負けられない」という高いファイティグスピリットを感じさせた。

 逆にいえばなでしこは、良くも悪くも相手のレベルに合わせた試合をしてしまう。ベトナムのように相手が弱いとお付き合いしてユルい試合をするし、韓国のように相手が強いとインテンシティがグッと高くなる。ベトナム戦と韓国戦ではとても同じチームとは思えない。おそらくメンタルの問題だろう。

 その意味で日本は伸びしろがとんでもなく大きいが、とにかく相手のレベルに合わせて気を抜いてしまわないようにしたい。それができれば数年後には必ず世界一になれる。

攻守に修正点も出た

 韓国はオーストラリア戦の疲れがあるのか、前後半とも立ち上がりはトップギアで来たが、時間とともにがっくりペースダウンして行った。相手が万全の状態ならどうなっていたかわからない。特に前半は韓国に決定的なチャンスが2〜3回あり、あれを決められていたら前半で試合は終わっていたかもしれない。韓国がフィニッシに精度を欠いたので助かった。油断は禁物だ。

 守備の問題も出た。韓国の選手にドリブルで前へ持ち出されたり、ワンタッチでかわされ抜け出されたりすると、あとは誰もプレスに行かずスペースをやってしまうシーンが散見された。一歩の寄せがほしい。立って見てしまわず必ず前へ出てプレスに行くクセをつけたい。

 攻撃面ではパススピードをもっと速く。スペースのない密集したゾーンでパスを通すには、ボールスピードにもっと速さがほしい。現代サッカーの鉄則だ。

 またオフ・ザ・ボールのときの動き出しももっと速くしたい。ダイレクトプレーが2回、3回と続くシーンがあったが、あれができるのはボールを持ってないときの動き出しが速いから。ああいう動きと連携をもっともっと増やしたい。

 それができれば接触プレーすら起こらない、アジリティの高さを生かした軽快なこういうサッカーができる。女子の場合はフィジカルを高めようにも限界があるので、見上げるようなガタイのいいヨーロッパ勢に対抗するにはこの方向だろう。

 選手別では、小柄だが強さのあるCB市瀬はガッツのある粘り強い守備を見せた。フィードもいい。またMF長谷川は視野の広いパスワークと運動量で途方もない潜在能力の高さを感じさせた。ボランチの隅田も鋭い読みとカバーリングで相手の攻撃の芽をよく摘んでいた。

 次は強豪オーストラリア戦だ。ぶちかまそう。

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【ハリル解任】後任は西野氏、まったく何の期待感も湧かない

2018-04-10 06:42:54 | サッカー日本代表
最悪のタイミングで最悪の選択に

 日本代表監督のハリルが解任された。後任は技術委員長だった西野朗氏だ。これで川淵サンはじめ、日本人を監督に据えたくてたまらない日本サッカー協会の面々はニンマリだろう。

 西野氏といえば歴代一位の通算270勝監督だ。だがそんなものは世界から取り残され、すっかりガラパゴス化しているJリーグでの話だ。W杯で勝てるか? といえばまったく何の期待感も湧かない。

 サッカー協会の田嶋幸三会長は「(ハリルは)選手とのコミュニケーションに欠如があった」という。だがハリルは選手と厚い人間関係を築いて「このおっさんのためなら死んでもいい」と選手をモチベートし、それをチーム力に変えるような浪花節タイプじゃない。そんなことはすでに就任1年目でわかっていたはずだ。

 というよりハリルはむしろ敵をだまして寝首をかく業師である。ズル賢い稀代のトリックスターだ。選手とのリレーションシップを育む人格者を監督に求めるなら、これほど真逆な人物はいない。

 だいたいそういう精神的な信頼関係を理由に解任するなら、ハリルのこうした特異なメンタリティが表面化してきたこのタイミングでやるべきだった。そうすればまだW杯本大会まで2年もあった。それをなぜ取り返しのつかない今この時点まで引っ張ったのか? サッパリわけがわからない。

新体制でどんなサッカーをやるのか?

 さて西野新監督になりどんなサッカーをやるのか? 結局、スターの香川と本田が中心になり、「自分たちのサッカー」に走るのだろう。グラウンダーのショートパスを繋いでポゼッションし、中央突破にこだわる遅攻スタイルだ。

 速攻と違ってスプリントが少なくてすみラクができる。タメを作るぶん、お休みタイムがある。日本人らしく全員が平等にボールに触れる馴れ合いスタイルだ。複数の選手が近い位置にポジショニングし、集団でチマチマ小刻みにパス交換する「小さいサッカー」である。サッカーの目的は「パスを繋ぐこと」だと思っている日本人の特徴を生かし、長所を伸ばそうというわけだ。

 確かにこれなら個の力が必要で日本人が苦手なハリル流の「大きいサッカー」をするより、ギクシャク感はなくなる。一時的には日本人の欠点は覆い隠されるだろう。

 だが逆にいえば、個の欠如を集団で補うのでは、日本人選手が抱える個の弱さという問題点はますます潜在化する。サッカーでは短所を克服することも重要だが、そこが修正されないまま問題が先送りされてしまう。長所を伸ばすといえば聞こえはいいが、要はゆとり教育と同じだ。

ハリルは時間をかけて連携を熟成させるタイプじゃない

 そもそもハリルは直前まで実験を繰り返し、本番では対戦相手に応じてぶっつけで選手や戦術まで変えてしまう策士だ。時間をかけて同じパターンを熟成させるようなやり方を好む日本人の価値観には合わない。

 だがそんなことはオファーする前からわかっていたはずだ。すべての判断が遅すぎる。

 それでもあえてハリル的なやり方に賭けてみるならおもしろいなと思ったが、協会にはそんなつもりは毛頭なかったのだろう。日本人から見て至極ノーマルな人物がよかったわけだ。やれやれ。
コメント (1)
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