すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【J1リーグ】名古屋が優勝するにはウノゼロ勝ちではダメだ ~第19節 名古屋 1-0 広島

2021-04-15 08:55:02 | Jリーグ
セットプレーで勝つ

 名古屋は前半22分、マテウスがキッカーを務めた左CKをCBの丸山祐市がヘッドで決めて先制。そのままスコアは1-0で動かず、難敵・広島をセットプレーのみで下す絵に描いたようなウノゼロ(1-0)勝ちを決めた。

 名古屋のフォーメーションは攻撃時4-2-3-1、守備時4-4-2。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から宮原、中谷、丸山、吉田。

 セントラルMFは稲垣と米本。2列目は右からマテウス、齋藤学、相馬。ワントップは柿谷だ。

サイドを変える大きな展開

 名古屋は最終ラインからグラウンダーのボールでていねいにビルドアップする。インサイドキックから放たれるパスのボールスピードが速く、非常に気持ちいい。

 スパン! という感じだ。

 さて前半4分、右SBの宮原が左SHの相馬に向け、ピッチを斜めに横切る長い対角パスを送る。これが名古屋のトレードマークである「大きいサッカー」だ。

 おそらく名古屋のマッシモ・フィッカデンティ監督は、口うるさく(笑)「サイドチェンジを入れてゆさぶれ」と繰り返しているのだろう。

 ショートパス中心の川崎フロンターレあたりには見られない、大きな展開だ。このスケールの大きい組み立てが名古屋のサッカーにダイナミズムをもたらしている。

柿谷の守備意識に目を見張る

 この日、左SHの相馬は意識してハーフスペースにポジショニングし、そのぶん同サイドのSB吉田が高い位置を取っている。

 前半11分、中盤でボールを持ったその相馬が、広島のライン裏にできた大きなスペースにスルーパスを入れる。柿谷を飛び込ませる狙いだ。だが呼応して走り込んだ柿谷はシュートまで行けない。

 しかしそれにしても柿谷の前線での守備の意識はすごい。最前線でプレッシングするだけでなく、プレスバックも丹念に怠らない。このあたり、守備にうるさいフィッカデンティ監督に口酸っぱく言われているのだろう。

 さて、その10分後。冒頭に書いた通り左CKから丸山のヘディングシュートが決まり名古屋が先制する。ここから名古屋のお家芸であるウノゼロ劇場の始まりだ。

 なにしろ守備の堅い名古屋に先制点をやると、相手チームにとっては実質、「2点分」の意味がある。それほどこのチームのゴールを割るのはむずかしい。

3センターの4-1-4-1に変える

 そして1-0でリードしたままの後半30分には、フィッカデンティ監督は名古屋の攻撃の要であるマテウスに代えてセントラルMFの長澤を投入する。この日のハイライトだ。

 これにより米本をアンカー、長澤を左インサイドMF、稲垣を右インサイドMFとし、真ん中を厚くしたシステムである4-1-4-1に変えたのだ。

 つまりゲームが残り15分のところで、1-0でリードしたまま試合を終わらせる守備固めをしたのである。イタリア人であるフィッカデンティ監督には、こういう「ウノゼロの血」が流れているのだろう。

 たぶんフィッカデンティ監督は、「残り15分だからあの選手とあの選手を代え、中盤真ん中を3センターにして堅陣にしよう」などと、あれこれチームを固くする策を練るのが大好きなんだろうな。

 セットプレーで賢く先制し、4-1-4-1で逃げ切る。確かに手堅い采配だ。

 ただし今季に関しては、個人的には大きな危惧がある。

ウノゼロでは優勝できない

 首位を走る攻撃的な川崎フロンターレは、おそらく大量点を取ってマンチェスター・シティばりの全勝に近い勝ち方でシーズンを終わるだろう。

 それに対し2位の名古屋が彼らを凌駕して優勝するには、ウノゼロ、つまり1-0の勝ち方では上回れない。

 まだシーズン序盤のいまならいいが、シーズン中盤から終盤にかけて両者全勝に近い形で競ってくると得失点差や総得点数がモノを言う。

「2位でいい」ならウノゼロを楽しむのもいいが、優勝を狙う気があるならそれでは困る。どこかで点を取りに行く勝負をかける必要が出てくるだろう。

【関連記事】

【Jリーグ】名古屋が優勝するには攻撃力が足りない ~第8節 湘南 0-0 名古屋


【名古屋グランパス】優勝に向け爆進するウノゼロ軍団が熱い


【Jリーグ】強力補強で来季の名古屋は優勝を狙う

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【なでしこジャパン】フィニッシュが甘い。 ~日本女子7-0パラグアイ女子

2021-04-09 06:20:39 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
フィジカルと球際のデュエルを

 少ないタッチ数でテンポよくボールを回す速いサッカーをめざしていることはよくわかった。バックパスばかり繰り返していた高倉ジャパン立ち上げの頃とは見違えた。日本らしいパスサッカーができていると思う。

 ただ決めるべき決定機を決めていれば、あの倍くらいのスコアになっていたことは自覚すべきだ。フィニッシュが甘い。

 そこを決めないとアメリカやヨーロッパの強豪国相手では、ああはいかない。

 あとは例えば右SBから左SHを狙った長い対角パスやサイドチェンジ、フィジカルと球際のデュエル、競り合いの激しさを身につけてほしい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【Jリーグ】名古屋が優勝するには攻撃力が足りない ~第8節 湘南 0-0 名古屋

2021-04-08 08:33:16 | Jリーグ
湘南の術中にハマったグランパス

 前半43分に1人退場になった湘南が、粘りとハードワークで「勝ち点1」をもぎ取った。逆にゲームを支配した名古屋は、攻撃力と決定力の不足を露呈したゲームになった。

 名古屋のフォーメーションは攻撃時4-2-3-1、守備時4-4-2。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から成瀬、中谷、丸山、吉田。

 セントラルMFは長澤と稲垣。2列目は右からマテウス、柿谷、相馬。ワントップは山崎だ。

名古屋が終始ゲームを支配したが……

 名古屋はポゼッション率60%と終始ボールを保持した。CMFのどちらかが最終ラインに落ち、3バックを形成してていねいにビルドアップして攻撃する。

 これに対し、湘南が激しい球際でがっつりプレッシングし、カウンターを繰り出す展開である。

 逆に湘南はヘタにうしろからビルドアップしようとするとミスが出る。最終ラインから組み上げる能力は、名古屋とは1段差がある印象だ。

勝負を分けた湘南の退場劇

 ところが湘南は前半43分に1人退場者を出し、これで逆にやることがハッキリした。彼らは最終ラインを5バックに変えてシステムを5-3-1とし、堅く「負けないサッカー」をめざす。

 1人減った湘南が最終ラインを低くしたため、名古屋は敵陣でよくボールが持てるようになったが攻め切れず、フィニッシュがなかなか決まらない。

 逆にいえば名古屋は湘南にボールを「持たされ」て、ワナにはまった。

 これで後半は完全に攻める名古屋、守る湘南という展開になったが名古屋は決め切れず、最後は両者無得点のままタイムアップとなった。

 名古屋とすれば10人の相手に攻めあぐね、引き分けて「勝ち点1」は負けに等しい結果だ。一方、湘南は熱いハードワークで勝ち取った貴重な「勝ち点1」といえるだろう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【Jリーグ】一歩も引かないねじり合い ~第7節 名古屋 0-0 FC東京

2021-04-04 04:19:03 | Jリーグ
守備のコクを味わう

 両チーム一歩も譲らず、相手の攻めをどう粉砕するか? という知略のゲームになった。攻撃は6:4でFC東京のほうに分があったが、名古屋の守備がことごとく弾き返し、非常に緊張感のあるいい試合だった。

 名古屋のフォーメーションは攻撃時4-2-3-1、守備時4-4-2。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から宮原、中谷、丸山、吉田。

 セントラルMFは稲垣と米本。2列目は右から前田、ガブリエル・シャビエル、マテウス。ワントップは柿谷だ。

敵の攻めを逆用する知力のゲーム

 前半5分にFC東京は2本続けて強烈なシュートを放つが、GKランゲラックがことごとくセーブ。ここから次第にFC東京のペースになって行った。

 名古屋はしきりにサイドを使って攻めるが、肝心のバイタルエリアで攻めの形を作らせてもらえない。

 FC東京は守備が非常によく、中央でクサビを受けた選手を絶対に振り向かせない。

 勝負は後半に入り、12分に名古屋のフィッカデンティ監督が動く。ガブリエル シャビエルに代えて相馬、前田に代えて齋藤学を投入する。

 この攻撃的な交代によりボールが動くようになり、次第に名古屋がペースを握った。相馬とマテウス、齋藤学が再三ペナルティーエリア近辺に侵入したが、それでもFC東京の守備に弾き返される。

 終わってみれば、両者無得点の引き分けという結果になった。

 守備のいいチーム同士の対戦になったが、ただ守っているだけでなく相手の攻めを利用してどう反攻するか? そこを争う知力のゲームになった。ゴールはなかったが非常に見ごたえのある試合だった。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【名古屋グランパス】優勝に向け爆進するウノゼロ軍団が熱い

2021-04-02 07:35:50 | Jリーグ
1-0で勝つイタリアの美学

 J1開幕からここまで、名古屋グランパスの全試合を丹念に観戦してきた。彼らは実にすばらしい試合を展開している。

 成績は6勝負けなしで堂々の2位。首位の川崎フロンターレとは、1引き分け差で勝ち点1の差だ。

 しかもそのほとんどの試合が完勝といえるデキで、ウノゼロ(1-0)のシャットアウト勝ちが4試合。3-0の試合が1試合ある。要は相手に何もやらせてないのだ。いかにもイタリア人監督が率いるチームである。

攻守の切り替えが素早く帰陣が速い

 名古屋のフォーメーションは攻撃時4-2-3-1、守備時4-4-2だ。彼らはボールを失うと近くのファーストディフェンダーが素早く敵のボールホルダーにディレイをかけ、パスコースをふさぐ。

 で、速いトランジションからリトリートし、ミドルサードに4-4-2のブロックを作る。このボールロストから、ブロック守備に移るまでの切り替えがすばらしく速い。

 つまり相手チームから見ると、「ボールを奪った。さあ攻めよう」となった次の瞬間には、必ずこの難攻不落の守備ブロックを相手にしなければならないわけだ。

 特に敵のポジティブ・トランジション(守→攻への切り替え)に少しでも時間がかかると、サーッと鮮やかにブロックを完成させてしまう。こうして敵にボールを持たせ、「やらせておく」というゲームマネジメントができるチームだ。

 そして名古屋はブロックを作り終えると、2トップが敵のセントラルMFへのパスコースを切りながら、ボールをキープする相手のCBにプレッシャーをかける。

 こうして敵のボールをサイドに追い込み、サイドでボールを刈り取るのだ。

決して守備偏重のチームではない

 こんなふうに名古屋は組織守備が得意なチームだが、決して自陣に引きっぱなしでアバウトなロングボールを放り込むような守備偏重のチームではない。

 彼らはボールを持つと、強くて速いインサイドキックから放たれるグラウンダーのパスでスピーディーにビルドアップし、意図のあるボールを前線に送り込む。

 このとき繰り広げられるのは、次の展開を考えたパスワークだ。まるであらかじめ設計図を描いているかのようである。

「とりあえず隣にいる味方にボールを預けよう」というような、あいまいで意図のないプレイがない。その意味では11人が有機的につながっている。

 パスの種類は、2タッチ以内の速いパスワークが基本だ。

 またなかでも特徴的なのは、ピッチを斜めに横切る長いサイドチェンジを多用する点である。つまり「大きいサッカー」をする。狭いゾーンで必要以上にボールを足元でちまちまコネるようなシーンがない。

 特に得意としているのは速攻だが、なかでも素早い切り替えから繰り出す速いショートカウンターには威力がある。

2CMFと最終ラインは鉄壁だ

 選手別では、セントラルMFの稲垣祥と米本拓司(長澤和輝)が固めるバイタルエリアは鉄壁だ。
 
 また丸山祐市、中谷進之介という不動のCB、吉田豊と宮原和也の両SBによる最終ラインも固い。(吉田がなぜ日本代表に選ばれないのか、まったく不思議だ)

 攻撃陣では運動量が豊富な両SH、相馬勇紀とマテウスが光る。

 さらに最前線ではFWの柿谷曜一朗がポストをこなすなど瞬間的な動きをし、これにトップ下のガブリエル・シャビエル(阿部浩之)、前田直輝らがからむ。

 彼らは高いインテンシティで泥臭く球際のデュエルに挑み、強く激しくファイトする。

 全員が非常に献身的で、特にSHの相馬は相手ボールになれば自陣までこまめにプレスバックして「第2のSB」のような働きをする。

監督の哲学でチームが一体化している

 一方、マテウスは昨季あたりはすぐに倒れてなかなか起き上がらなかったり、攻撃から守備への切り替えが遅いなどトランジションに問題があったが、いまでは見違えるように修正された。

 本来、マテウスやムラっ気な柿谷あたりは献身性の薄い選手のはずだ。それが熱く献身的なプレイをこなしているのだから、明らかにこれは監督の力だろう。

 おそらく、あのイタリア人のおっさん(マッシモ・フィッカデンティ監督)がうるさく言うのだ(笑)

 またこのチームはリードして終盤になるとDFの木本恭生を投入し、5バックにしたり、3センターの4-1-4-1にするなど守備を固めるシステム変更を行い試合を終わらせる。

 いかにも守備にこだわるイタリア人監督がやりそうな手堅いゲームプランだなぁ、と思わずクスッと笑ってしまう。

 名古屋グランパスにはそんな、「この監督を信頼すれば勝てる」という一体感がある。そういう熱い息吹が観ている観客にひしひしと伝わってくる。

 なにを隠そう、私なんかは前世がイタリア人なので、ウノゼロで名古屋が辛い勝ち方をするたんびに超絶興奮して全身の血が沸騰してしまう。そんな日は早めに風呂に入って気持ちを静めることにしている。

 これでもし名古屋が優勝なんぞしたら、はてさていったいどうなることやら。

 いまから先が思いやられる。

【関連記事】

【Jリーグ】強力補強で来季の名古屋は優勝を狙う

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする