とんとんからしのあるがまま

ゆっくりと、のんびりと、ゆる〜いシニアの日々を綴ります。

童話「心の棘」

2024-05-09 | 俳句

夢見る夢子ちゃんは、

ちょっとせっかちだけど

心優しい女の子

桜を見ていたかと思うと

真っ赤なチューリップを

のぞいていたり

ネモフィラの海を

泳いでいたり

栗毛色の髪をなびかせて

毎日、走ってるわ!

 

くるんくるんと髪の毛を

指にからませると次の星に

飛んでっちゃう

 

そこは山と海の星で

太陽が燦々とふり注ぎ

青色の海は

どこまでも澄みきって

藻がキラキラと輝いてる

お魚たちも幸せそう

山の緑はとりどりで

もこもこと歌ってるよう

それ以外は

何もないのよ

 

青年はそんな夢を見たの

夢子ちゃんに会いたいなぁ

会いたいなぁって、いつも

思ってる

だって、青年の心には

棘が刺さっていて

夢子ちゃんならきっと

抜いてくれると

咄嗟に閃いたのね

 

それから、青年は夢の中で

夢子ちゃんを追いかけました

追いかけても追いかけても

夢子ちゃんに

追いつけません

青年は、追いかけるのをやめました

諦めたのではありません

反対向きに歩き始めたの

 

そうしたら

素敵な夕焼け

オレンジ色に空は染まり

太陽がゆったりと

海に沈んでゆく

静かな一日の終わりは

新しい夢の始まり

 

ある雨の日

青年が海辺を歩いていると

ずぶ濡れの女の子が

佇んでいた

「どうしたの?」って声をかけたら

女の子は振り向いて

「生のエネルギーが切れ始めたの」と

潤んだ瞳で答えたわ

「え、少女なのに!?」

「えぇ、わたしは永遠の少女だけど

生命には限りがあるの。。。

もう、終わりだわ。。。」

青年は答えた

「大丈夫だよ、僕がそばにいるよ、

だから頑張って」

 

すると、その時

青年の心の棘がぽろんと落ちた

それも、女の子の手のひらに

棘は輝いて

女の子の全身を包んだ

そうして女の子に

新しい生命が灯ったのです

それこそが

永遠の生命だったのです

青年と女の子は抱き合って喜んだ

二人は永遠に生きる

魂を手に入れました

 

追いかけてばかりではダメ

ちょっと立ち止まって

振り返って

昔を眺めてみませんか

きっと、素晴らしいことや

素敵な人に逢えるかも。

だって、地球は丸いんだもの。

 

(転載転用お断りします。。。)


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