風呂場へ案内する明子が、耕一の目の前を歩いている。
薄暗い廊下を歩く明子の身体から、若い女の匂いがした。
耕一は、明子を後ろから抱きしめたい衝動に駆られた。
抱きついて、むしゃぶりつきたい衝動に駆られた。
その時、
「耕一さん、こちらですよ」
と、明子が振り向いた。
ハッと我に返った耕一は、下を向いたまま脱衣所に入り、黙って着ているものを脱ぎ始めた。
明子が浴室で、風呂の湯加減をみている。
《明子になんと声をかけたらいいんだろう・・・・》
《いや、声などかけたらいけないのだろうか・・・・》
《俺はどうしたらいいんだ・・・・・・》
耕一は狂おしい思いで、自問自答しながら裸になってしまった。
「ちょうど良い湯加減ですよ。タオルはこちらにーーー」
と言いかけた明子の目の前に、全裸になった耕一は立っていた。
まさに、まさしく立ってしまっていたのだ。
耕一はどうしていいか分からない。
明子も目のやり場に困って動揺したようであったが、そんな時、女は度胸が座るものらしい。
「背中を流しますから湯船につかってください・・・・」
下を向いたまま静かにそう言うと、明子も着ているものをそっと脱ぎ始めた。
耕一は、もうどうして良いか分からない。
湯船に頭からもぐり込んだ。
その湯船に、熱くほてった若い女の身体が入ってきた。
それからは、耕一は明子のなすがままとなった。
明子は23歳。耕一より7歳年上だった。
弟のような耕一の若い身体を、明子は大事な宝物を扱うように丁寧に洗った。
耕一の処女航海は、めくるめく官能の悦びの航海となった。
気仙沼の章はこれで終わりです。