クロの里山生活

愛犬クロの目を通して描く千葉の里山暮らしの日々

耕一物語ー伊勢佐木町の根岸屋

2014-08-27 20:13:22 | 日記

戦後の横浜の繁華街・伊勢佐木町に根岸屋という店があった。

飲んで、食べて、踊って、騒いで・・・・

大衆食堂と大衆酒場とダンスホールを一緒にしたような、騒々しくも賑やかな店だった。

もとは進駐軍相手にオープンした店らしいが、その後は外国人船員や港湾労働者あるいは日雇い労働者なども来るようになり、かなり怪しい雰囲気の店となって行く。

後年、あの黒澤明監督が、『天国と地獄』という映画の中でこの根岸屋を使っている。ヤクの密売の舞台としてその根岸屋が登場するのだ。

黒澤が、「日本中で最もいかがわしい酒場を見つけてこい!」と号令を出して、白羽の矢が立ったのがこの根岸家だったという。

 

 

 

港町ヨコハマのそんな店に、愛友丸の男達も通って来た。

店の外壁には「INTERNATIONAL RESTAURANT NEGISHIYA」と書かれた大きな看板が掛けられていた。

店の中に入って行くと、奥の小さなステージでジャズバンドが静かな曲を奏でている。

天井には大きなミラーボールが妖しく輝いていた。

店内中程のテーブル席に松さん達が座ると、店を切り盛りしている女主人が明るく声をかけた。

「あら、松ちゃん、お久しぶり。いつハマに戻ったのよ」

「やあ、スミさん。相変わらず繁盛しているね」

「ええ、お陰様で。でも最近は色々とややこしい話があるのよね」

「そりゃそうだろう。ややこしい世の中なんだからな」

「アハハハーーーー。ところで松ちゃん、今日は何を食べるの?」

「そうだな・・・。牛肉たっぷりのカレーでも食うかな。後でウイスキーをロックで持ってきてよ。おい、みんなは何にするんだ?」

「俺もそれで良いよ」

健さんがそう言うと、他の仲間もみんな同じカレーとウイスキーになった。

 

奥のバーカウンターには、短いスカートをはいたスタイルの良い女が、長い足を組んでタバコを吸っているのが見えた。外人のような派手な格好をしているが、日本人のようだ。

その女をはさむようにして、進駐軍の兵隊らしい若いアメリカ人二人が、ジャズのリズムに合わせて身体を揺らしている。

バンドの音楽がアップテンポなジャズになっていた。

 

 

「これがヨコハマの夜か・・・・」

初めて見る店内のその光景に、耕一は心の中で思わず呟いていた。

 

続く・・・・・・・ 

コメント (4)
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