そんな次第でご主人様は合気道の先生、いや、これからは殿(との)とお呼びしよう、殿のお供でネパールへ行くこととなった。
今年の2月、寒い冬の日にご主人様はネパールへと旅だった。 ご主人様が渡航中、拙者は成田空港近くのペットホテルに預けられた。あんな不自由な生活はコリゴリだ。
しかし、ネパールから帰ってきたご主人様は色々面白い話をしてくれた。
「クロちゃん、ヒマラヤの眺めは凄かったぞ。お前にも見せてやりたかったよ」
(ご主人様は、時々このような心にも無いことを平気で言う)
「ヒマラヤ山脈とエベレスト、あれを眺めながらおいしいネパールカレーを食べてきたぞ。お前にも食べさせてやりたかったよ」
(・・・・・・)
「ところで、合気道場開所式のことだが、大変な歓迎振りでビックリしたよ。なにしろ訓練基地に着いたら、ゲートから新道場までの数百メートルに、歓迎の花々を持った隊員達が一列に並んで待っていたのだ」
ご主人様は興奮しながら色々な話をしてくれたが、その中で、レインジャー部隊(特殊部隊)隊員の合気道を使ったデモンストレーションの話に拙者は興味を引かれた。
自動小銃を手にし、20kgほどのリュックをしょった迷彩服姿の10名程の隊員が、ナイフなどを持って物陰から襲ってくる20人ほどの暴漢達を、瞬時に次々と組み伏せてしまう、そんなデモンストレーションがあったようだ。
「あれはまるでハリウッド映画を観ているようだった。来賓のゲスト達も釘付けだった。お前にも見せてやりたかったよ」
(・・・・・)
そんなオープニングセレモニーの後、隊員達は笑顔の殿を囲んで記念写真を何枚も撮っていた。
新しく建設された道場内に、殿の大きな写真が飾られていた。 ネパールレインジャー部隊隊員達は、これから毎日、殿に見守られながら日本武道の合気道トレーニングに励むことになる。そして、隊員達は日本人の殿との思い出を代々語り継いで行くことになるだろう。
雄大な ヒマラヤの山々を眺めながら、ご主人様は思った。
「あそこに殿がいる」
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