私は、行を授けるにおいて虎の頭も使う。これは伝承された「法」であるから行っているのであって、生き神様より伝承された方法なのである。よって虎ならば何でも良いことにはならない。中には濃硫酸などの類似品(砒素を含む)で肉片を溶かした骨が流通しているから危険を伴うからである。当然、頭骨は継承された物であるから登録も行われているものである。
この他に、いずれ発表することになるが「宝玉」を使って行う行を行わなければならないのだが、宝玉にも種類があり、そのうちの一つは、前回紹介した「如意宝珠ヒーリングステッキ」に収められている。ご存知のように、このステッキは上品の下に属するもので、宝玉はいずれ発表する中・上で使うことが決められているのである。
あせって伝授を催促した時に、このように仰られた。「あくせくガツガツ生きてても、死ぬ時は死ぬんですから、生きているのが趣味だと思う心境にならなければ、入るものも入るもんじゃありませんで。」
虎の骨について、中国の古書に書かれていることを抜粋してみる。
古人は、「死人の悪霊が神から送られて体の開口部、とくに鼻孔から体内に入ると痛みを生じる」と考えていた。
中国の古代において虎はかなり重要な扱いをうけていた。仰紹文化の河南漢陽西水披遺跡(紀元前四五一〇年頃)45号墓にすでに虎からすがいと龍が形象化されている。墓主人の遺体をかこみ、蜂の殻で虎と龍があらわされている。
同車には、上記とは別に、龍に騎る人の姿もある。後世、龍は天に登るとされることが多い。その特性を考えると、この時代にすでに龍は魂を天界に運ぶものであったように思われる。一方、虎は、魂のぬけたあとの遺体に入りこもうとする悪鬼をはらう役割をはたしていたと考えられる。
虎骨は邪悪の気を除き、鬼症の毒を殺し、驚悸を止どめ、悪瘡、 鼠痩を治することを主る。頭骨尤も良し。膏、狗の噛瘡を治す。 爪、悪魅を辟く。肉は悪心嘔かんと欲するを治し、気力を益す。 又、尿は悪瘡を治す。其の眼晴は癩を治す。其の燦中の骨廊愉 立退を治す。牙は丈夫の陰頭の瘡及び疽痩を治す。鼻は癩疾、 小児の禰を治す。
頭 骨
『別録』は虎骨の効能から説きはじめるが、 「頭骨もっとも良し」と頭骨が特別視さ托ている。ここでは頭骨の意味から考察したい。
人の場合、頭骨は本来、魂が入っていた場所と意識されていた。死によって頭骨を離れた霊魂も、ふたたびそこに依りつくと考えられた。そのことから中国の古代では頭骨信仰がおこなわれていたようだ。動物の場合もまた同様に考えられたのではないか。悪鬼(悪霊)を追いはらうには、やはり霊魂にたよらねばならない。神もまた霊魂である。ここは虎の頭骨によりつく虎の霊魂によって悪鬼を追いはらうのであろう。悪鬼は体内に入りこみ疾病をおこす。そこで虎の頭骨を服用し、体内の悪霊を追いはらう。
虎の頭骨を以て枕と為すという。 これらは内服するわけではない。呪術的な効果を期待してのことである。 虎の枕のことは膏、葛洪(二八三〜三四三)の『肘後備二方』にみえる。悪夢をさけるために、虎頭の枕を以てす。
魂が睡眠中に一時、肉体を離脱することが夢だと考えられていた。遊離した魂が悪鬼に出くわすことが悪魔であろう。古文には「人、眠睡すれば、則ち魂暁外遊し、鬼邪の魔屈する所と為る」と、夢中に魂が離脱し、悪鬼に連れさられることを記す。また甲骨文の「塵は悪夢にうなされて死ぬこ昂どされる・魂は頭の白門から抜けると考えられたようだが枕は頭に用いるものである。枕によりつく虎の霊魂で悪霊を追いはらうのであろう。