北朝鮮の軍事的脅威にどう対処するか
朝鮮人と日本人は米国の恐ろしさがわかっていないようである。日本人は忘れてしまったという方が正確かもしれない。私は、父が太平洋戦争でインパール作戦に参加し終戦後、イギリス軍の捕虜となったが、無事、日本に帰国したあと生まれたので空襲や爆撃の恐ろしさは体験として存在しない。
太平洋戦争において米国は日本人がどれほど死んでもかまわないという覚悟で主要大都市を空襲し、焼夷弾をまき散らし、最後には広島と長崎に原爆を投下し、戦闘員ではない一般市民を、女性、子どもを含めて何十万と“虐殺”したのである。東京や大阪の中心地は無数の焼夷弾と爆弾で焦土と化した。
米国は、日本がほとんど手を上げかかっていたのに、日本本土の上陸作戦を敢行すると50万人以上の米国将兵の戦死者が出るとして、広島と長崎に原爆を投下したのである。アメリカの将兵を守るためには日本人にいくら死者が出ようとかまわない、というのが当時の米国の為政者のとった方針であった。
金正恩は大陸間弾道ミサイルの開発、改良をすすめ、米国を射程の範囲に入れようとしている。核兵器の開発もすすめ、その小型化もすすめ、ミサイルに搭載可能な段階に到達しようとしている、と言われている。そして、ミサイルも発射場所をいろいろと変更し、多様な場所から打てることを示そうとしている。つまり、発射場所を特定しにくいようにして敵からの攻撃を避け、米国や日本に向けていつでもミサイルを撃ち込めることを誇示したいようだ。潜水艦の開発もその一環である。そして、この状況に対して日本のマスコミや評論家は恐れおののくばかりに見える。
北朝鮮から流れてくる映像情報をマスコミは垂れ流して、一般日本人に恐怖心を植え付けているようにしか見えない。私が怖れていることは、北朝鮮が核弾頭を搭載したミサイルの発射基地を多様化することが米国に対する脅しになり日本や韓国に対する脅しになると単細胞的に考えてしかいないように見えることである。
が、この考えは危険きわまりないものである。米国は太平洋戦争において日本全域に焦土作戦敢行した国である。どこからミサイルが飛んでくるのか分からなければ、可能性のある場所はすべて攻撃するというのが米国の立場であろう。北朝鮮は面積的にも日本と同様にひじょうに小さな国である。戦術核を使えば5、6発でほぼ国土の全域が使用不能におちいる。米国が日本に対して太平洋戦争で行なったように、北朝鮮に焦土作戦(かならずしも焼夷弾やナパーム弾を用いることを意味しない)を展開することはあり得ることである。その場合、北朝鮮人民の被害は甚大なものとなる。
金正恩のやり方は、日本と韓国を脅して(人質にとって)、米国と渡り合おうということであろうが、無数の北朝鮮人民の命を危険にさらしていることになる。自国は世界の反対を無視して核開発、ミサイル開発を続け、周辺国の“善意”は利用し、信用できるものと思いこんでいるようである。しかし、米国は北朝鮮が期待しているほど“甘い”国ではない。
北朝鮮が一発でもミサイルを撃ち込めば、北朝鮮のありとあらゆる場所にミサイルの雨が降るだろう。なぜなら、米国の大統領なら、トランプ大統領でなくても、自国(同盟国の日本と韓国も含んでいると考えておきたい。両国の米軍基地には米国の軍人だけではなくその家族もいる)にミサイルを撃ち込んでくる国に容赦はしない。米国は自国民を守るためには北朝鮮の一般国民に多大の犠牲が出てもかまわないと考えるだろう。それが米国のやり方である。
日本のマスコミや評論家に今もっとも必要なことは、北朝鮮から入ってくる情報を垂れ流すのではなく、北朝鮮国民の命が危険にさらされているということを声を大にして言うことである。一般の日本人を脅すのではなく、北朝鮮国民とその関係者(シンパも含めて)に“忠告する(脅す)”のである。
米国にとっても北朝鮮に対して軍事戦略論的にも戦争をしないで勝つことが最良である。日本国内には北朝鮮シンパが多数いるとされている。マスコミの中にもシンパがまぎれ込んでいる可能性がある。彼らは無意識的にかもしれないが日本や米国の善意によりかかり、その恐ろしい“最終決断”を考えることを避けているようにみえる。日本は甘いかもしれないが米国はあまくはない。
NHKが太平洋戦争中の米国の空爆に関して『なぜ日本は焼き尽くされたのか』という番組を今夏放映した。太平洋戦争において米国将兵の被害を最小限におさえ、戦争をできるかぎり早く終わらせるために、また、米国空軍の地位を確立するために一般市民の甚大な被害は無視するという形で、米国空軍は容赦なく主要都市を含む60以上の日本の都市に焼夷弾を投下し続けた。そして、米国内で焼夷弾攻撃の非人道性が問題となりはじめたとき、原爆を広島と長崎に投下し日本の降伏に至らせた、という形で米国の空爆、焼夷弾攻撃を総括し、米国の当時の空爆の非人道性と戦争の悲惨さを伝えていた。
NHKのこの番組の製作意図は、表面的には簡単に理解できるが、北朝鮮が核開発とミサイル開発に突き進むなかで、なにか隠された意図があるのだろうか、とも考えた。勘ぐれば、北朝鮮情勢が緊迫度を増すなか一般日本国民に対する脅し、米国への非難である(もし、これが正しければ北朝鮮側を利する行為であり、制作者は非難されなければならない)。が、さらに、勘ぐれば、北朝鮮(人民)とそのシンパに対する脅しである(これは私の勘ぐり過ぎであろう。が、もし、そうなら私は制作者に拍手を送りたい。今、日本の政府やマスコミにいちばん欠けている姿勢である。ただし、政府が自ら行なう場合には言い方がある)。この番組の制作者のバックグラウンドには興味はあるが、それはともかく、この番組を見て北朝鮮側は恐怖しなければならない。
戦争ができない日本がとれる最良の軍事戦略は北朝鮮側がみずからその体制を変えるようにもって行くことである。あまり、露骨に書くことは控えるがそのヒントはこのNHK番組の中にある。
※今までに何回か北朝鮮の方向を変える機会は軍事力を使えない日本にもあったはずである。しかし、その機会を活かすことはできなかった。それには、最高権力者の勇気と竹中半兵衛や黒田官兵衛のような軍師が必要である。 (9月4日追記)
※米国には(形はともかく)勝ってもらわなければならない。安易に妥協して(それを唱道する評論家もいるが排除すべきだ)北朝鮮のような三流国が核を持った状態で居すわることは日本の安全にとって危険な状態が継続するということである。三流国には三流の指導者しかいない。愚かな銀行の経営者が総会屋の脅しに震えあがって金を巻き上げられるような状況を作り出すべきではない。(9月8日追記)