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北朝鮮問題3

2017-09-29 14:28:58 | 時事問題

「炎と怒りの米軍事力」と北朝鮮

  トランプ大統領が9月19日の国連総会の演説において北朝鮮に最終警告をした。

  The United States has great strength and patience, but if it is forced to defend itself or its allies, we will have no choice but to totally destroy North Korea. "Rocket Man" is on a suicide mission for himself and for his regime.

  米国は大いなる力と忍耐力を持っているが、もし、自国と同盟国を守らざるをえなくなれば、我々は北朝鮮を完全に破壊する外に選択の余地がなくなるだろう。“ロケットマン”は自身と自分の体制のために自爆作戦を行っているのだ。

  The United States is ready, willing and able. But hopefully, this will not be necessary.

  米国はその用意ができていおり、意志も持っており、能力も持っている。が、願わくは、このような行動が必要でなくなることである。

  トランプ大統領の発言は恐ろしい内容である。前々回のブログ(9月2日)で私は次のように書いた。

  (北朝鮮が多様な場所から多様な方法でミサイルを発射できることを示していることに対して) が、この考えは危険きわまりないものである。米国は日本全域に焦土作戦敢行した国である。どこからミサイルが飛んでくるのか分からなければ、可能性のある場所はすべて攻撃するというのが米国の立場であろう。北朝鮮は面積的にも日本と同様に非常に小さな国である。戦術核を使えば5、6発でほぼ国土の全域が使用不能におちいる。米国が日本に対して太平洋戦争で行なったように、北朝鮮に焦土作戦 (かならずしも焼夷弾やナパーム弾を用いることを意味しない) を展開することはあり得ることである。その場合、北朝鮮人民の被害は甚大なものとなる。

 

  この中で「北朝鮮は面積的にも日本と同様に非常に小さな国である」と書いているが、実際には狭い日本の32・5%しかない国である。また、制空権も制海権も無いに等しい。トランプ大統領が「北朝鮮を完全に破壊する」、「北朝鮮人民の被害は甚大なものとなる」 と言い放ったのは“核兵器”か“核兵器以上に破壊力のある兵器 (まだ開発されていないと思われるが)”を使うという意味である。つまり、金正恩の脅しは、日本のマスコミや評論家には効いてもトランプには効かないということである。

    北朝鮮は「ソウルを火の海にする」、「東京を火の海にする」と金正日の時代から脅しの言葉を吐きつづけている (このようなヤクザ発言を続けさせておく政治が無能であったと思う)。ソウル市民と東京都民を人質にとって米国と対峙するつもりであろうが、自国が火の海になることは想定していないのかもしれない。まさか、金正恩がそれほど愚かとは思わないが、もし、そのように考えているのなら愚かにもほどがある、ということになる。「北朝鮮を壊滅させる(=火の海にする)という言葉はおそらく北朝鮮指導部の想定外の言葉であろうが、トランプ大統領の言葉は単なる脅しではないと北朝鮮側は考えたほうがよい。それに私が心配し、怖れているのは、トランプ大統領が日本に原爆を落とした大統領トルーマンの言葉を国連演説にも引用したし、8月9日にも北朝鮮の挑発に対して応じた言葉もトルーマンが広島に原爆を投下した後に出した言葉に似ていることである。

   President Trump said North Korea "will be met with fire and fury like the world has never seen" if they continue making nuclear "threats." (Reuters)

「北朝鮮は“世界が今まで一度も見たことがないような炎と怒りを経験させられることになるだろう、核の〈脅し〉を続けるならば”」とトランプ大統領は言った。(ロイター発)

  続けて、トランプ大統領は次のように同じ内容を繰りかえした。  

   North Korea “will be met with the fire and fury and, frankly, power, the likes of which this world has never seen before” if it continued with this behavior.

  「北朝鮮は“この世界が今まで一度も見たことがないような炎と怒りと、はっきり言えば、軍事力経験させられることになるだろう”、このような振る舞いを続けるならば」

  トランプ大統領のこの発言は、広島に原爆を投下したあとの当時のトルーマン大統領の演説によく似ているのである。

   If they do not now accept our terms they may expect a rain of ruin from the air, the like of which has never been seen on this earth.

   もし、我々の条件を今すぐ受け入れないなら、彼らは(=日本の指導者たちは)今までこの地上で一度も見られたことのないような空からの破滅の雨を経験するかもしれない。

  トランプ大統領は、国連演説でもトルーマン大統領に二度言及しており、トルーマンの過去の言動を意識していることは確かである。彼がトルーマンの影響をうけているとしたら、北朝鮮に対してトルーマンと同じ行動をとる可能性がある。北朝鮮側は本当に憂慮しなければならない。“犬の遠吠え (この表現は日本や米国が北朝鮮に対して使うべきもの) ”で日本や韓国をビビらすことはできても、米国には無理であろう。

  米国に対して、たとえ核の小型化に成功し、何発かの大陸間弾道ミサイルを持ったとしても北朝鮮の地政学的状況や制空権も、制海権もほとんど無い環境で米国と張り合うことはできない。インドもパキスタンも核を保有しているが米国を威嚇するような無謀なまねはしていない。核兵器の数もミサイルの性能も米国の比ではない。米国に次ぐ核大国のロシアや中国も米国を威嚇するようなことはしていない。それは彼らが北朝鮮よりはもう少しまともな国であることもあるが、それよりも米国の恐ろしさを知っているからである。もし、米国が核で脅すようなことがあれば、共倒れを覚悟なら反撃する能力をロシアと中国は恐らく備えている。が、そのような状況を米国とロシアと中国はつくり出すようなことはしないし、できないだろう。

  北朝鮮の威嚇行動は日本や韓国 (の軍事戦略的思考の欠如したマスコミや評論家) には効くかもしれないが、米国の指導層には効き目はない。

  トランプ大統領の一連の言動を見て私が思い出すことがある。1962年(昭和37年)の10月(何日だったかは覚えていない)、突然、ラジオからニュースが流れ、アナウンサーが緊張した声で「沖縄の米軍が臨戦態勢に入りました」と伝えたのである。当時、高校1年生の私はキューバ危機のことは頭に入っており、背筋に冷たいものが流れたことをよく覚えている。当時の米ソ対決の時とは大きく様相は異なるが、今は危機的状況にあることは確かである。しかし、ピンチはチャンスでもある。

  朝鮮半島が北朝鮮の崩壊によって韓国主導で統一されることを怖れているのは中国だけではなく、ロシアもまたそうであろう。実現すれば、米国軍の駐留する統一政権と直に対峙することになる。これは評論家たちが言うとおりであろう。が、朝鮮半島の統一には日本も十分な注意を払わなければならない。朝鮮半島全体に反日政権ができることは好ましいことではないからだ。全体が親日政権で統一されるなら、それに越したことはないが、現在の韓国と北朝鮮を見ればわかるように、 (全ての朝鮮人ではないことはよく承知しているが、反日の声が渦巻き、多くの穏健な人たちが声をひそめている状況にある韓国に象徴されるように) 朝鮮人は日本式の控えめな態度、譲歩、誠意、約束が通じる相手ではない(この点、長い間、朝鮮半島を属国として支配していたことのある中国は朝鮮人の扱い方をよく知っているようである)※注1。統一政権ができたら、“甘ちゃん”の日本はより強力な反日政権に悩まされる可能性が高い。

  朝鮮半島は古代には百済、新羅、高句麗というように三国に分裂していた。分裂して安定する地理的条件を持った領域があり、朝鮮半島は地政学的に南北からの力の影響をうけやすく、分裂して安定する傾向が強いのである (ついでに言えば、中国も三国時代や南北朝の時代のように二分裂、三分裂して安定していた時代もある)。日本の朝鮮半島への関与も地政学的によく考えて行なっていく必要がある。

  北朝鮮問題解決の最善のシナリオは北朝鮮の指導層が交代(排除も含む)し、核と中・長距離ミサイルを放棄し、日米韓に対する敵視政策をとらない政権が誕生することである。そのために日本は米国と連携し、韓国とも連携しなければならない。米国が軍事的選択をせずに、この状況をつくり出すためにはヤクザ的恫喝国家・北朝鮮に対してもっと脅しをかける必要がある。トランプ大統領が発言しているように、米国が軍事的選択をすることは、北朝鮮全土(ミサイルの発射される可能性のある場所のすべて)を壊滅させることを意味することを、北朝鮮側に明確に伝えることである。

  トランプ大統領は国の最高指導者であるから、あまり本人が直接的なことを言うのはどうかと私は思う。私が大統領なら、ナンバー3、かナンバー4くらいの高官に「今のように米国を威嚇するなら、北朝鮮の人民に甚大な被害が出る」と言わせる。そして、大統領はその発言を否定しなければよいのである。ただ、現在、米国は日本が望む、最善ではないかもしれないが最善に近い道をとってくれているように思われる。

  日本のマスコミや評論家なども、ヤクザに脅される一般市民のごとく怯えるのではなく、はっきりと「北朝鮮人民が危険だ」と言わなければならない。日本には北朝鮮のシンパや工作員も多数まぎれ込んでいるとされている。北朝鮮指導部と通じている連中もいるだろう。その連中に「北朝鮮人民が壊滅の危機にある」ことを認識させれば、彼らは北朝鮮人民のように一方的な情報の世界にはいないのだから何らかの体制変革の行動を起こす可能性が出てくる。彼らから北朝鮮の一定の層に「北朝鮮人民が危機にある」ことが伝われば大きな変化が起こるかもしれない。日本のマスコミは日本人を怯えさせるのではなく、北朝鮮関係者を脅す(にアドバイスする)のである。これが米国を軍事行動に走らせず、北朝鮮指導層の交代を起こさせる、日本にとっても、北朝鮮にとっても、米国にとっても最善の道である。

  すべてとは言わないが、日本のマスコミの大多数は、戦前、「満州は日本の生命線」などと軍部の尻をたたき、日中戦争から太平洋戦争に日本人を駆りたてたではないか(その結果、日本は大きな破局を迎えた)。現在、日本のマスコミは日本の政府や日本の組織を批判する勇気は持っているようであるが(大切な勇気である)、米国や中国やソ連などの大国や、北朝鮮のようなヤクザ国家の横暴をたたく勇気はないように見える。(よく言えば日本人の控えめな態度であり、悪く言えば内弁慶の性格のあらわれである)今こそ声を大にして「北朝鮮人民が危機にある」ことを言うべきだ。それが北朝鮮人民と北朝鮮という国を破滅から救う道である。

  「ソウルを火の海にする」「東京を火の海にする」というような暴言を国家機関として吐く“ヤクザ”国家がどうして国連の一員にとどまっているのか(北朝鮮国民がヤクザだと言っているのではない、誤解のないように、念のため)。 米国の学校では教師に対して“I'll kill you. (殺すぞ)”と言うような言葉を生徒が吐けば、即、退学となると私は同僚であった米国人AETのBill Griffinさんから聞いたことがある(日本の学校はこの点では生徒に甘い)。国家として暴言を吐くような国は、即、除名処分にし、その他の制裁も即刻、課すことができる機関に国連を改革する必要がある。 

  

  ※北朝鮮の経済制裁に関連して太平洋戦争前の日本と比較する人がいるが、今の北朝鮮と当時の日本では、対米比率の軍事力に大きな差がある。1939年当時では、保有航空機数は日本のほうが米国より倍以上も多かったとされているし、海軍力においても、英米が日本の拡大をおそれ、ワシントン海軍軍縮条約(1921年)、ロンドン海軍軍縮条約(1930年)により、日本の海軍力の膨張を抑制 (英米日の戦艦の総排水トン数比・ 英5: 米5: 日3) しようとしたほど、米英と大差ない海軍力も有していた。有能な軍事指導部と参謀(軍師)がいれば、米国とも有利な条件で講和できた、つまり、勝利した可能性はかなりあったと私は考えている。(※日本が負けたほうが良かったとは決して思わないが、もし、太平洋戦争で勝利を収めていたら、その後、軍人が威張ってのさばる世の中になっていたのかもしれないと考えると、その後の思考が停止してしまう。)

  ※日露戦争において日本が“勝利”した、とされている。日本は日本近海においてロシアのバルチック艦隊を撃破し、旅順のおいても陸戦を制した。しかし、広大なロシア全土を制圧したわけではなく、“部分的勝利”に過ぎなかったが、講和に持ち込み、日本に有利な条件で決着したのである。太平洋戦争でも、このような有利な段階で決着する方法があったはずである。        

 

※注1) 私は「朝鮮人」という用語を使っている。以前に在日コリアンの人権活動家から、「韓国の方」「韓国の人」や「朝鮮の方」というような言い方は止めて欲しい、「朝鮮人」という言葉を使って欲しいと言われたからである。日本の永住権を持つ朝鮮人に関して、現在、韓国籍の朝鮮人と“朝鮮籍”の朝鮮人を含めて「在日コリアン」と呼ぶことが多い。

 1945年に日本が太平洋戦争に敗れ、朝鮮半島は北部をソ連軍が統治し、南部は米軍が統治する状況となっていたが、それぞれ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と大韓民国(韓国)として独立し、1952年のサンフランシスコ講和条約の発効により、朝鮮系日本人は日本国籍を失った。日本在住の日本国籍を失った“元”朝鮮系日本人は、はじめはすべて「朝鮮籍」を持つ外国人とされていたが、1966年の日韓条約の批准後、多数の人が朝鮮籍から韓国籍に切り替えた(2016年12月現在:韓国籍 約48万5千人 朝鮮籍 約3万2千人)。が、切り替えなかった人たちは「朝鮮籍」のままである。この「朝鮮籍」の在日コリアンは北朝鮮籍ではないが、大多数の日本人は「朝鮮籍=北朝鮮籍」と思っている。日本に北朝鮮籍の在日韓国・朝鮮人はいない。この点において、マスコミも誤解している場合が多く見受けられる。現在、日本に“北朝鮮籍”の人間は密入国者かスパイでもないかぎり存在しない。「朝鮮籍」を持っている在日コリアンは、国際法上は“無国籍”になる。朝鮮籍の在日コリアンは、韓国籍を取ろうとすれば取れるのにそうしないのであるから、北朝鮮を支持する人が多いと思われるが、そうでない人もいる。北朝鮮は自分たちのシンパを増やすために「朝鮮籍=北朝鮮籍」のように見なしていると思われる。在日コリアンの中には二人の子どものうち一人には韓国籍をとらせ、もう一人は朝鮮籍のままとし、自分も朝鮮籍のままという人もいる。これは私の知り合いの在日コリアンの例である。 (2017年9月29日記 9月30日修正追記)