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世論調査と出口調査

2021-11-10 21:51:27 | 時事問題

世論調査と出口調査

選挙当選者予測数の大きな外れ

永井津記夫(ツイッター:https://twitter.com/eternalitywell)

 

  今回の衆院選でNHKをはじめとする各主要メディアは政党別の当選者の予測数を大きくはずしました。私はよく視聴しているユーチューブの動画のコメント欄に下記の趣旨の文章を投稿しました。

  朝日新聞は、今回の衆院選の世論調査で、「新聞社は23、24日、全国約38万人の有権者を対象に電話とインターネットによる調査を実施し、全国の取材網の情報も加えて、選挙戦中盤の情勢を探った。現時点では、①自民党は公示前の276議席より減る公算が大きいものの、単独で過半数(233議席)を大きく上回る勢い ②立憲民主党は比例区で勢いがなく、公示前の109議席からほぼ横ばい」と伝えていました。

  立民が96人となり数をかなり減らすことは予想できませんでしたが、NHK をはじめとする他のメディアに比べて実際の結果にいちばん近い予想を出していたと言えます。

  また、衆院選当日の投票終了直後の午後8時の各メディアの獲得予想数はNHKを含めて大きくはずれていました(フジがとくに大きくはずす)。これは選挙での出口調査を含めて回答拒否者を世論調査の予想の中にどのように含めるのか、という事を考えていないことに起因すると思います。

  回答拒否者は政治等に積極的な見解をもっている人が多いと考えられます。私はかなり前の選挙で(1990年前後)出口調査の声をかけられた時、「法で投票の秘密が保障されており、自分の投票行動を明らかにする必要はない」と考えて回答を拒否しました。その後、出口調査には出会っていませんが、もし、あれば今は「虚偽か虚偽に近いニュースを垂れ流すことがよくあるメディアの調査は拒否する」として調査には応じないでしょう。

  私の場合はともかくとして、出口調査や政党支持率の(電話などを利用した)世論調査において調査を拒否する人たちの“隠し持つ”意見をどのように調査結果の分母の中に入れ、どのように処理するかが大きな問題です。ここを克服しないと今後も各メディアはほぼ正しい予測をすることができないように思われます。

  我が家の電話は振込詐欺対策モードになっていて相手が名乗るまで応答しないようになっています。それを無視して無理やりアンケートの調査事項の録音を流してくる新聞社などがありますが、その場合は電話を切ります。

  この場合でも、この調査に応じたくない場合は1のボタンを押してくださいとの質問事項を加えて相手の拒否の態度を確認することもできるし、それに加えて、調査を拒否する理由として

  ① マスコミは信用できないから

  ② 今いそがしいから

  ③ 後で電話してくれたら応じる

などの質問も付け加えておけばよいのではないかと思います(さらに適切な選択肢も考案すればよいでしょう)。

  とにかく何度か調査を重ねれば、質問拒否者を

  a)常に電話を切って応じない人

  b) 応じないが、その理由を出してくれる人

などに分類し、(政党支持率調査の場合)この人たちの〇〇%は与党支持などと推定できる材料が集まってくるはずです。質問拒否者を分母から省いて当選者の予測数や政党支持率を出しても今回の衆院選の当選者予測数のように大きくはずす可能性が高いように思います。

  2016年の米大統領選挙でヒラリーを支持するのかトランプ支持なのかを各メディアや関連調査会社が調査を行ないましたが、1社を除いて他はすべてヒラリーの勝利を予測しました。正しくトランプの勝利を予測した会社は各戸をまわっての調査で投票姿勢を明らかにしない人たち(未定や拒否の人たちに対して)“新たな質問事項”を発明(考案)したのです。それは「隣の人はトランプ支持者だと思いますか」という質問です。この質問によって投票態度不明者がだれを支持しているのかを推定し、正しい予測を行ないました。つまり、“態度を明らかにしない人たち(質問応答拒否者)”の多数からその答を引き出し、質問応答拒否者も予測のデータとして使うことに成功しました。

  日本の世論調査を行なうメディアや機関も質問に応じない人たちを調査の分母に入れる努力、新たな質問事項の“考案”をしないと今後正しい予測はできないでしょう。

  各政党の支持率を選挙から離れた時期に“適当”に出してもボロは出にくいですが、選挙の当選者予測数はすぐに結果が分かるので今回のようにNHKを含めて各新聞が大きくはずすと、日ごろの論説や事件報道も虚飾や誇張や場合によっては捏造もあるのではないかかという疑いを多くの人に抱かれかねません。もっと、世論調査の精度を上げる努力をすべきで、それは不可能なことではないと思います。 (2021年11月10日記)