2021年4月1日【第11回】ユングスタディ報告
.
今回は『分析心理学セミナー』第14回を取り上げました。人間の心におけるアニマ・アニムスが、それぞれ男性・女性の心理の中でどう働いているかについての説明が主となります。
ここでのユングの男性性・女性性、あるいはアニムス・アニマに関する説明は、近年のジェンダーに関する現代の知見からすれば、強い偏りが感じられたり、過度に本質主義的に思われたりと、今に生きる私たちには必ずしも首肯できない面があります。そこをユンギアンたちはどう議論してきたか、私たちはそれをどう捉えたらよいのかが、今回のひとつの大きなテーマでした。
.
まず最初、本文に入る前に、会で公開している「ユング心理学基本用語集」をもとに、ユングのアニマ・アニムス論の概観をしました。
つまるところユングにおいては、男性性・女性性を社会構成的に見る観点と、本質論的に見る観点とが混在しており、そこを巡って様々に論争がなされていることになります。これらの批判的観点があることを確認した上で、本文を読み進めていきました。ユングは具体的には、以下のような指摘をしていきます。
.
・男性の集合的意識、アニマ像、集合的無意識には、肯定的・否定的な関係の二重性が見られる。
.
・女性における実際の男性との関係は、ただ一人の男性に限定されて排他的であるが、逆に無意識の中には複数のアニムス像がある。男性についてはこれが反転しており、複数の女性と関係を持つ一方で、無意識の中には唯一のアニマ像がある。
.
・男性のアニマは情動的で、男性がこれに憑依されると情動的になる。女性のアニムスはロゴス的なので、女性は諸々の意見に憑依される。
.
・女性の意識的態度は母の態度である。女性の無意識には二重の側面がある母親像が見出される。
.
・男性は二重性を区別し分離させようとするが、女性は二重性を結合して一緒に受け取ろうとする。
.
・女性の動物性には人間と融合した精神性が含まれているが、男性の動物性は単に暴力的なものである。
.
・男性の望む女性像は人工的なもので、現実の女性はそれと異なる一人の人間である。
.
これらのユングの見解について、現在の男女にどの程度当てはまるのか、どこが問題であるのかについて、様々な意見が取り交わされていきました。