第７章 変化（２）

そんな中に決して有能とは言えない私が突然抜擢された理由は、
前にもお話したように、若手の中では少々目立っていて、
特に柔道が得意であったり、色んなことにチャレンジしていた
積極性が評価されていて、新規部門の人材を
そろそろ自社で育てようとの考えもあって選ばれたようだった。

私の方では何の前触れもなく降って湧いたような話で、
まるで環境の違うところで全く何の準備も知識もない事への不安で、
どう答えていいか分からずにいたのだが、
どうやら社長は即答を望んでいるようで、
しかもYESの返事以外有り得ないだろうかという雰囲気だった。

私は暫くの沈黙の間、恐らくここで考えさせて欲しいとか
言っていたのでは話は終わりとなるだろうし、
今まで通りの予測できる変わらぬ毎日と新しい世界、
新しい自分への挑戦を短時間のうちに考えを巡らしながら比較検討し、
結局その場で了承することとなった。

出発については調整もあるが、早くて１～２ヶ月位の話だったのだが、
結局渡米したのは話があってから１年を過ぎる頃となっていた。

その間たまに本社から準備について連絡があったり、
東京支社のエアクラフト・マリン本部という
聞いたことも無かった部署から
航空機の雑誌や記事が送られてきていた。

社長との話の内容は私の方から
直接所属していた部署の責任者に報告した。

その後部署内の上司、先輩、同僚はもちろん、
同期の仲間にも話したのだが、
殆どの人にはいなくなることに
多少残念がられながらも応援して頂き、
背中を押される思いだった。

ただ一人だけ悔しさも隠さず、
なぜ承知したのかと問い詰めてきた人がいた。

その人はその当時お付き合いを始めたばかりの彼女で、
付き合い始めてまだ数ヶ月というところだった。

やっとお互いのことをよく分かり合うようになってきた矢先の話に、
彼女のことよりも仕事を選んだと思われたようだった。

・・・つづく

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