愛詩tel by shig

プロカメラマン、詩人、小説家
shig による
写真、詩、小説、エッセイ、料理、政治、経済etc..

かすみ草

2009年07月25日 09時50分41秒 | 写真詩

 

「いよいよ退院ですね」

窓のかすみ草を眺めていると、ナースの亜希子さんが声をかけてくれた。

僕の大好きなかすみそうのように、決して派手な女性ではない。
だけど、僕は彼女に惚れてしまっている。

「ねえ、もしもこのかすみ草が揺れたら、僕と付き合ってくれないかな?」

「私?こんなおばさん、それもバツ一よ」

「あなたしかいない。だから申し込んでいる」

「いいわ。風もない病室のかすみ草が揺れたらね」

僕らはかすみそうを見つめていた。
そのとき、揺れた。
確かにかすみ草がしかっりと揺れたのだ。

「やった!うそみたいだ!」

亜希子さんはただ、微笑んでいた。

時は流れ、小さな教会で結婚式をした。

彼女のベールを脱がすとき、亜希子さんは小さな声で言った。

「あのとき、かすみ草が揺れたのは、私が息を吹きかけたからよ」

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