新経世済民新聞より転載
2020年10月28日
2020年10月28日
【藤井聡】炎上で隠蔽される「大阪市のサービスレベルは確実に下落する」という真実
ーーー転載開始ーーー
From 藤井聡@京都大学大学院教授
(1)行政サービスが約200億円分、下落する、という報道
都構想を巡って、毎日新聞にある記事が出ました。
都構想を巡って、毎日新聞にある記事が出ました。
『大阪市4分割ならコスト218億円増 都構想実現で特別区の収支悪化も 市試算』
https://mainichi.jp/articles/20201026/k00/00m/040/061000c
https://mainichi.jp/articles/20201026/k00/00m/040/061000c
すると、この点について、「反対派の毎日新聞はえげつないネガキャン」だとか「訂正が必要だ」だとか言う激しい反発が起きました。
しかし、当方がこの記事を見たところ、内容に誤りがあるとは到底思えない内容でした。中身を普通に読めば、この記事は、次の様な事が書かれているのです。
1)大阪都構想を実現すれば行政サービスレベルは必然的に下がる。
2)したがって、サービスレベルを下げないようにするなら、行政支出を増やさなければならない。その時に必要な支出増加分を大阪市がある前提(このケースでは4つの政令市にするという前提)の下で計算したら約200億円となった。
ちなみに、この金額は「基準財政需要額」という概念を巡るもので、我々の様に、都構想問題を長年扱ってきた研究者・専門家からすれば、この記事は当然の話。だからこの報道は、「都構想が実現したら、行政支出が約200億円増えてしまう」という話ではそもそも無いということは、明白だったのです。
毎日記事の「コスト」という言葉を「出費増」と解釈する方もいるのかもしれませんが、一般に「コスト」はオカネだけでなく手間暇やサービス下落も意味するもの。だから、この記事を読めば誰でも、「サービスを落とさない様にするなら、本来なら200億円はかかるのだ」という事実が分かる内容になっているのです。
もちろん、(この記事にも書かれているように)もし仮にサービス下落を抑えるために支出を増やせば収支も悪化するでしょうが、そうとでもしなければサービスが下落は防げないぞ、という話なわけです。
(2)それは「行政サービスの下落」であって「出費増ではない」という大阪市説明
ただしこの記事が発表された後に、大阪市はこの試算は今回の都構想を実現することによって実際に増える行政支出ではない、報道を見てそう考えるのは誤解だという主旨の文書を公表し、記者会見を開きます。
産経記事:https://news.yahoo.co.jp/articles/90dcb84fe8e9ff173c4f04eeaba8aeffca238b3e
文書:https://www.city.osaka.lg.jp/fukushutosuishin/page/0000517765.html
産経記事:https://news.yahoo.co.jp/articles/90dcb84fe8e9ff173c4f04eeaba8aeffca238b3e
文書:https://www.city.osaka.lg.jp/fukushutosuishin/page/0000517765.html
この文書は、専門家筋から見れば至極当たり前の事を記述したものであり、もとより基準財政需要額の話である以上、行政支出がそれだけ増える話ではないというのは、当然の話をあえて書いてあるだけのものでした。
要するに、この行政の文書や記者会見は、この試算そのものが「間違っている」ということを言っているのではなくて、あくまでも、「この数字はコレコレこういう意味だから、誤解しないで下さい」と言ったに過ぎないわけです。
ただし繰り返しますが、毎日の記事をよく読めば、出費増とは書かれておらず、あくまでも、サービスを同じにするなら、それだけのカネが本来かかりますよ、と「誤解」無く理解できる内容となっているのでした。
(3)毎日新聞はデマ報道をした、と炎上
ところがこの文書、さらにはそれを報ずる報道を目にした都構想の賛成派の方々は、この大阪市の記者会見が開かれたという事実を持って、まさに鬼の首を取ったようにこの話は全部デマだったんだ!と主張し始めます。
ところがこの文書、さらにはそれを報ずる報道を目にした都構想の賛成派の方々は、この大阪市の記者会見が開かれたという事実を持って、まさに鬼の首を取ったようにこの話は全部デマだったんだ!と主張し始めます。
要するに「反対派の話はデマだ、それが明らかになったのだ!」という趣旨の罵詈雑言が一斉に書き込まれています。(※ 例えば、下記ツイッターのコメント欄をご覧下さい。
https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1320908239186259970)
https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1320908239186259970)
つまり、いわゆる「炎上」現象が起こったわけです。
何度も繰り返しますが、この記事でも、さらには例えば下記ツイートなどでも、「支出が増える」とは言っておらず、ただ単に、大阪市の上記文書でも共有されている上記の1)2)の話を解説しているだけなのです。
https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1320908239186259970
https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1320908239186259970
また、こうした毎日記事を批判するものとして、「都構想は大阪市を四つの特別区にする話なのに、この試算は四つの政令市をつくるっていう話になっている、おかしいぞ!」と主張するものもあるのですが、上記の1)2)の話はあくまでも、
「サービスレベルを維持するには、どれだけのカネが余分にかかるのか」
という話をしているわけですから、なにもおかしくは無いのです(前提がなければ、計算など出来る筈がないのです)。
つまり、この毎日記事をデマだと主張している方々は、この毎日記事内容を十分に理解しないままに発言されている疑義が濃厚なわけです。
(4)「毎日はデマだ!」という方は、「都構想によるサービスの下落」という事実を知らない疑義が濃厚
では、この「誤解」がどこから来るのかというと、それは、「大阪市を4特別区に分割すればサービスレベルが下がる」という話を理解していないところからくるように思われます。
そもそも、一つの自治体でやっていたのを四つに分けるわけですから、本来なら職員を大幅に増やしたり、建物を新たに建てることでもしないと、同じサービスを維持することは出来ません。
ところが今回は支出増加を最小限に食い止めようとしているので、そんな職員の大幅増とか新たな建物投資は「しない」事になっているわけです(やるのはせいぜい、初期費用200億円、ランニングコスト年間30億円の支出増だけ)。
だから、(本来必要とされる200億円と推計されるオカネを出さないので)行政サービスは都構想が実現したら、確実に「下落」するのです。
このあたりの話は、『「大阪都構想で行政サービスが下がる」役所が明らかにしたそのメカニズム(藤井聡)』
https://news.yahoo.co.jp/articles/2478188ce3aa14b490c9a47d2559ea491631dd3e
https://news.yahoo.co.jp/articles/2478188ce3aa14b490c9a47d2559ea491631dd3e
にて詳しく解説していますので、是非、そちらをご参照下さい。
(5)炎上で、有耶無耶にされる「都構想によるサービスの下落」という真実
以上が、今回の「炎上」の一件の解説なのですが、ここで重要なのは、そもそも、「大阪市廃止と4特別区への移行に伴って行政サービスレベルが低下する」という「真実」が、今回の「炎上」を通して有耶無耶にされてしまっている、という点です。
以上が、今回の「炎上」の一件の解説なのですが、ここで重要なのは、そもそも、「大阪市廃止と4特別区への移行に伴って行政サービスレベルが低下する」という「真実」が、今回の「炎上」を通して有耶無耶にされてしまっている、という点です。
これは大変に危険な現象です。
そもそも毎日報道の内容は、炎上するような「間違い」を含んだものではなく中身を読めば誰でもその主旨が分かるものに過ぎないからです。
そもそも大切なのは、イメージ論では無く、「大阪都構想によってサービスは下がるのかどうか」という一点な筈です。
大阪都構想の住民投票までわずか後3日。
本件を通して本件に関心をもたれた方は是非、この一点にしっかりと着目してご判断いただきたいと思います。
追申:
本件についてさらにご関心の方はコチラに詳しく解説しましたのご参照下さい。
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/2941325719301685)
本件についてさらにご関心の方はコチラに詳しく解説しましたのご参照下さい。
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/2941325719301685)
【緊急対談】大阪都構想“追加コスト218億円はデマ”という大嘘 三橋貴明 × 藤井聡(京都大学大学院教授)16:14
ーーー転載終了ーーー