田中宇の国際ニュース解説より転載
2020年6月4日 田中 宇
新型コロナの脅威を誇張する戦略
https://tanakanews.com/200604corona.htm
ーーー転載開始ーーー
今年3月、欧州のデンマークの政府が新型コロナウイルスへの対策を決めようとしている際、政府内の保健省の専門家たちが「新型コロナは、感染時の重篤性があまり高くなく、致死率もそれほど高くない。それほど危険な病気でないので、人々の外出禁止や集会禁止、店舗や企業の強制閉鎖などの都市閉鎖策をやる必要はない」という見解を保健省としてまとめた。
だが、フレデリクセン首相をはじめとする政府上層部はこの見解を拒否し、与党を巻き込んで議会で保健省の政策決定権を剥奪して実権のない顧問役に格下げする非常事態法を制定し、都市閉鎖策を強権的に実現した。
当時、保健省の役人側の専門家のトップである次官(Per Okkel)が、政治家である保健省の長官(Søren Bostrøm)に対して「政治面のアドバイスをする時は専門家としての判断を停止することにした(専門家から見て間違っている都市閉鎖策を政府が挙行するのを保健省は看過せざる得ないので、われわれ保健省の専門家は、専門家としての思考を停止することにした)」という趣旨の抗議・皮肉的な電子メールを送った。 (Leaked mails reveal battle over Denmark's lockdown)
最近になって、世界的に、コロナの致死率が実際よりはるかに大きな数字として誇張されてきた(コロナ以外の死因の死者が多数コロナの死者として計上されたり、致死率の分母である感染者数が実際よりはるかに少なく見積もられてきた)ことが発覚し、都市閉鎖策をやるほどの病気でなかったという議論が、世界的に専門家たちの中から出てきている。
都市閉鎖策は、経済破壊と外出禁止による失業急増やコロナ以外の健康被害、精神的打撃などの人々への悪影響が巨大であり、コロナ以外の死者が急増する愚策だ。
都市閉鎖策は、コロナ自体の解決策としても不必要に事態を長期化させる(一時的に感染拡大が減るが、都市閉鎖を緩和すると感染が再拡大し、何年も閉鎖と経済停止を続けねばならない)。都市閉鎖策はひどい失策だという指摘が世界的に増える中、3月末に保健省の次官が長官に送った抗議皮肉のメールが先日、地元の新聞にリークされ、デンマーク政府の政治家たちが保健省の専門家たちの意見を抑圧して愚策の都市閉鎖策を強行したことが明らかになった。
("It's All Bullsh*t" – 3 Leaks That Sink The COVID Narrative)
似たような話が最近、ドイツでも暴露された。
ドイツ政府の内務省では専門家たちを集め、独政府のコロナ対策を評定する報告書を作らせた。
報告書は、新型コロナが毎年流行するインフルエンザなど一般的な他の病気のウイルスと同程度の危険性しか持っていないのに、コロナがとんでもなく危険な病気であると誇張され、その誇張をもとに悪影響が巨大な都市閉鎖策が行われてしまったと指摘している。報告書は「コロナで死ぬ人は、もともと他の持病などで今年じゅうに死ぬような人々であり、コロナは、それ自体だけで死ぬ人がほとんどいない重篤性の低い病気だ」「コロナに関しては、国家が最大のフェイクニュースの発生源だ」「コロナの都市閉鎖のせいで病院に行けないコロナ以外の病人が急増、ガンなどの手術が延期され死者が増えている」「政府は、都市閉鎖すべきでないと指摘した政府内の専門家の忠告を無視して都市閉鎖を挙行した」「都市閉鎖の悪しき副作用が今後何年も続く」とも指摘。
ドイツを含め世界的に採られている都市閉鎖策を厳しく批判している。
報告書の内容は、コロナ危機の発生以来、私が米欧のオルタナティブメディアなどを見て書いてきた分析と大体同じだ。 (German Official Leaks Report Denouncing Corona as ‘A Global False Alarm’)
報告書は5月初めに完成したが、内務省の最上層部(大臣ら政治家)は報告書を公表しないことを決めた。
内務省内には、鋭く厳しい内容の報告書を隠蔽しようとする最上層部のやり方に不満な勢力がおり、彼らは報告書をマスコミにリークした。
ところがマスコミは最上層部とぐるで、もらった報告書について報道しなかった。
仕方がないので内務省筋はドイツのオルタナティブメディアに報告書をリークし、こちらは報道された。
この報道に対し、内務省の副大臣(Günter Krings、国会議員)は「これは、省内の個人が勝手に書いたもの。
妄言の陰謀論であり、まじめに検討すべき内容でない」と、報告書を陰謀論扱いして取り合わなかった。
マスコミも、オルタナティブメディアの後追いで報告書の存在を短く報じたが、その内容について分析や議論をすることを避け、事実上無視した。報告書をリークした内務省内の専門家(Stephen Kohn)は更迭された。
(KM4 Analyse des Krisenmanagements)
人類の多数を占める、政府やマスコミの発表を鵜呑みにしている軽信的な人々から見れば、デンマークとドイツの事例はいずれも政府上層部の方が正しく、反対論を出して潰された政府内の専門家たちの方が「陰謀論者」であり間違っている。
「どんな事案でもおかしな異論を言う少数派がいる。そういう奴らは潰されて当然」「コロナはとても危険な病気なんだから都市閉鎖は当然だ」という話で終わる。しかし、コロナ関連のこれまでの私の記事を読んである程度納得している人は「新型コロナの危険性は大したものでないのに、各国政府はコロナの危険性を誇張し、まっとうな反対意見を出す専門家たちを陰謀論扱いして潰し、悪影響がものすごく多い愚策の都市閉鎖策を強行した」と思うだろう。
これは「闇夜の枯れすすき」を「単なる枯れすすき」と見破れるか、扇動されて「恐ろしい化け物」に見えてしまうか、という話だ。
(都市閉鎖の愚策にはめられた人類) (911とコロナは似ている)
ロシアでは5月末、政府のコロナ関連広報の責任者であるミャスニコフ(Alexander Myasnikov。医師・元テレビタレント)が、ロシア人にコロナに関する「正しい知識」を教えるためのテレビのインタビューの中で、コロナの危険性についていろいろ語った後、最後にすでにインタビューが終わってテレビカメラが止まっていると勘違いしたミヤスニコフが「すべてはインチキな話だ。すべて誇張されている。本当は、致死率がとても低い感染症なのに。なぜ、こんな大したことない病気への対策として、世界を破壊せねばならないのか。私自身、理解できない」と本音を言ってしまった。
この出来事からは、ロシアでも、ドイツやデンマークと同様、プーチン大統領ら政府上層部が、コロナの危険性を誇張して悪影響ばかり多い都市閉鎖策を続けていることがうかがえる。
(‘It’s All Bullsh*t,’ Russia’s Coronavirus Information Chief Says of Virus Fears)
ドイツやデンマークやロシアは、3月後半から4月前半にかけて、都市閉鎖の策を開始した。
この時期に英国や日本、フランス、イタリア、スペイン、米国など世界の多くの国々が都市閉鎖策を開始した(日本は強制の少ない準都市閉鎖)。
時期的な一致から考えて、各国はバラバラに検討して都市閉鎖策を決めたのでない。
当時、都市閉鎖策が妥当かどうか世界的・国際的に議論された痕跡もない(国際議論があったなら非公式でも全く秘密裏でなく、何らかの情報が流布したはずだが、何も出ていない)。
考えられる筋書きとして、米国の覇権運営筋(米英、軍産複合体、トランプ。トランプに乗っ取られた軍産)が、同盟諸国や非米諸国を加圧したり説得したりして全世界を都市閉鎖策に誘導した、というシナリオがある。
国際社会、とくに同盟諸国をある方向に隠然と誘導する策をやれるのは軍産しかいない。
生物化学兵器を研究している米軍や、世界中のウイルス研究所にスパイに仕立てた研究者を潜り込ませている米英諜報界も軍産の一部なので、武漢でのコロナ危機の発症から軍産が手がけた可能性すらある。
(Many US states have seen LOWER infection rates after ending lockdowns that are are now destroying millions of livelihoods worldwide, JP Morgan study claims)
米国(米英)の覇権運営筋である軍産はこれまで3回にわたり、覇権を強化するために脅威を誇張してきた。
(1)第2次大戦の敗戦国となった独日の「悪さ」を誇張して「永久の極悪」のレッテルを貼り、独日を半永久的に米英に従属させたこと。
(2)ソ連やロシアの脅威や悪さを誇張して冷戦構造を作り、西側諸国に対米従属を強いたこと。
(3)911事件の犯人像を歪曲し、アルカイダなどイスラムテロの脅威を誇張して「テロ戦争」の構図を作り、世界各国をその構図下に従属させようとしたこと。
以上の3回のやり口と、今回のコロナの脅威の誇張のやり口の類似性から考えても、コロナ危機の「解決策」として世界に都市閉鎖を隠然と強要したのは軍産だと考えられる。
(CDC Admits COVID-19 Antibody Tests Are Wrong Half The Time & Virus Isn't That Deadly)
軍産は以前から、世界的な感染症(パンデミック)が起きた場合、その危険性を誇張しつつ、同盟諸国や国際社会の全体に同じ対策を取らせ、世界的な感染症対策を口実に世界政府的な覇権機能を行使・拡大する策を持っていた。
米国のジョンズホプキンス大学やMITなどの軍産の「研究(と称するプロパガンダ発案)機関」が、それっぽいシナリオを何度も出してきた。
Jホプキンスは昨秋、今回のコロナ危機を先取りするかのようなシナリオを出している。
シナリオは以前から繰り返し出されてきたが、パンデミックが本当に覇権運営の道具に使われたのは今回のコロナ危機が史上初めてだ。
新型コロナの都市閉鎖策が持つ強烈な国際政治性(パンデミック対策として頓珍漢なのに上から国際的に強行されたという面)と比べると、以前のスペイン風邪もHIVエイズも、それほど国際政治的に使われていない。
(It could take TWO MILLION deaths across the US to reach herd immunity says political scientist at Johns Hopkins)
覇権運営権を握る軍産の目標は従来、米国(米英)覇権の維持拡大だった。しかし今回のコロナ危機の対策として世界的に上(軍産)から強要されている都市閉鎖は、長期的に、世界経済を破壊して米連銀のQE急増からドルの基軸性喪失・米経済覇権の崩壊につながり、世界各国をバラバラな人的鎖国状態にし続けるので政治諜報的にも米覇権低下を加速する。
都市閉鎖は軍産の目標と正反対に、米国覇権を自滅させる。
世界への都市閉鎖の強要は、やり口から見て軍産の仕業だが、損得の道理からは軍産の仕業と考えにくい。
(500 Doctors Write To Trump Warning Lockdown Will Cause More Deaths)
この矛盾点は、すでに私の中で解決している。
トランプ米大統領は、軍産と米国覇権体制を潰して、世界の体制を軍産製の米単独覇権から、軍産登場前の多極型(ヤルタ体制)に戻すために当選・就任した。
トランプ当選後、軍産はロシアゲートなど濡れ衣的な事件を作ってトランプを潰そうとしたが、この暗闘は逆にトランプの勝利となり、軍産は弱体化した。
トランプは、弱体化した軍産を乗っ取り、軍産の皮をかぶって軍産的な戦略を過激に稚拙にやって意図的に失敗させることで、米国覇権と軍産を自滅させようとしている。
軍産の皮をかぶったトランプによる覇権自滅策の一つが、コロナ危機で世界に都市閉鎖を強要することだった(ほかに、中国敵視を強化して中国を対米自立させる策などがある)。
軍産(に入り込んだ多極派)が自滅策をやるのはトランプが初めてでなく、ブッシュ政権のネオコンによるイラク戦争が先例としてある。トランプはネオコンのバージョン2である。
(The Unspoken Reason For Lockdowns) (スパイゲートで軍産を潰すトランプ)
トランプに乗っ取られた軍産(軍産の皮をかぶったトランプ)は、どうやって各国政府の上層部に、経済自滅を引き起こす都市閉鎖策をやらせるように仕向けたのだろうか。
ひとつ考えられるのは、情報や印象を歪曲する軍産の策を駆使して、各国政府の上層部が誇張された新型コロナの脅威を信じ込み、自国政府内の専門家たちの反論を軽視無視抑圧するよう誘導した、という筋書き。
もうひとつ考えられるのは、有事体制である都市閉鎖策をとることで各国の権力者や与党が強くなり、野党や反対派を抑えられる点だ。
ドイツのメルケルはもともと軍産系の権力者だが、コロナ危機前に落ち目で、若手への権力継承を迫られていた。
しかし、都市閉鎖策の導入とともに権力を再掌握して強くなった。
(Lockdowns failed to alter course of pandemic, JP Morgan study claims) (軍産の世界支配を壊すトランプ)
日本は、日米同盟の維持と引き換えに準都市閉鎖(非常事態宣言)を強要された。
英国も、米国との同盟維持と引き換えに、集団免疫策を引っ込めて都市閉鎖策をやった。
いずれも、都市閉鎖の自滅性をしりつつも、それより米国との同盟関係を重視せざるを得なかった感じだ。
米国自身も都市閉鎖策を導入し、その結果、大量の失業と金融のQE依存、各地での暴動発生など、覇権の自滅への道を着々と歩んでいる。
(Johnson’s Top Aide Pushed Scientists to Back U.K. Lockdown) (The US Is Dramatically Overcounting COVID-19 Deaths)
今回の記事ですでに書いた、ロシア政府のコロナ広報担当責任者であるミャスニコフが、テレビ出演時に、コロナの危険性が誇張されて広報されており、都市閉鎖策がトンデモな愚策であることをうっかり認めてしまったことからは、ロシア政府の最上層部つまりプーチン大統領が、コロナの脅威を誇張しつつ都市閉鎖をやる愚策を同意ないし主導していることを示している。
ロシア諜報機関の出身であるプーチンは、この愚策が米国の軍産(の皮をかぶったトランプ)の誇張策・歪曲術であることを知っているはずだ。
いや、最初は知らなかったので騙されたのか??。
ロシアは4月初めから都市閉鎖策を急にやり始め、その時点でミャスニコフがプーチンからコロナ広報責任者に任命されてコロナの脅威を誇張した。
だがその後、5月半ばにプーチンは都市閉鎖をやめる方向に転換し、ほどなくしてミャスニコフがテレビでうっかり(を装って)コロナの危険性が誇張されていることを暴露した。
プーチンが一時的にトランプに騙されていたのか、それとも最初から愚策と知りつつあえて乗っていたのかは不明だ。 (Russia's head of coronavirus info says alarm over virus is 'bulls---' - Business Insider)
世界中の諸国が、コロナの危険性を誇張して都市閉鎖をやる愚策に乗ったが、唯一この愚策を自国に導入するのを拒否し続けたのがスウェーデンだ。スウェーデンは、都市閉鎖の強要以前に欧州などが採ろうとしていた集団免疫策を採り続けた。
軍産傀儡のマスコミやうっかり軽信者たちは、都市閉鎖の愚策性を棚に上げ、集団免疫策を危険な愚策だと喧伝誹謗し続けている。
国際的(軍産的)に信用されている国であるスウェーデンを一定以上誹謗することは難しいので「集団免疫はスウェーデンの特殊な文化に基づいた政策であり、スウェーデンと文化が異なる他の諸国にはやれないことだ」という、まことしやかな解説のふりをした大間違いのプロパガンダも流布している。
集団免疫策は、奔放でない慎重な国民性を持った国なら、どこでもうまくやれる。
日本は、4月初めにトランプからの加圧で都市閉鎖に転向するまで、宣言も検査もしない「こっそり集団免疫策」をやって成功していた。
(Freedom and Sweden’s Constitution) (都市閉鎖 vs 集団免疫)
奔放な民族性のイタリアは、スウェーデンの逆を行っている。
イタリアは3月後半から都市閉鎖をやり、同時にコロナ以外の死因の死者をコロナの死者統計にどんどん入れることで死者数を誇張し、大変な状態を演出した。
イタリアは、ドイツが主導するEUから資金援助をもらうため、この演技を展開した。
だが、ドイツやEUはイタリアのインチキな演技を見抜き、思ったような資金援助をしてくれなかった。
あきらめたイタリアは都市閉鎖を解除し、こんどは逆に、できるだけ早く外国人観光客にイタリアに戻ってきてもらって観光業で稼ぐ態勢に戻すため「もうイタリアのコロナ問題は解決した」「イタリアの新規のコロナ感染者は弱いウイルスしか持っておらず、他人に感染させない」と言い出している。
すべてはカネ目当てだ。
イタリアは奔放で素晴らしい。
(New coronavirus losing potency, top Italian doctor says)
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