愛詩tel by shig

プロカメラマン、詩人、小説家
shig による
写真、詩、小説、エッセイ、料理、政治、経済etc..

海の見える坂

2018年03月28日 17時45分32秒 | 写真詩

突然 理由(わけ)なく来たくなった
予約を入れ 伊丹を飛び立ち
先程、空港に着いた
真っ赤なオープンカーを借り
真っ直ぐにこの坂道まで 走らせた

潮の香りがする
石畳の坂 見下ろせば
坂の先に 海が見える



函館に来たんだ

セーラムを 一本 取り出す

旅は ひとりがいい
想い出とだけ 語り合うことが出来る

前に来たときは ひとりではなかった

どうして この坂が 好きなの

君は聞いたね

理由なんかないさ

僕は嘘をついた

君をモデルに 写真を撮った
君は 恥ずかしそうにしながらも
ポーズをとっていた

そして 二人で 礼拝に出た ハリストス正教会
ろうそくを買って 火をつけて
ロシア正教会独特の 立ったままの礼拝 イコンに囲まれて
アカペラの合唱に 君は最初から最後まで 泣いていた
そして 教会の外で 一言

神様っているのね

うん

今まで生きてるの 辛かった 苦しかった
「誰でも疲れている人は 私のもとに来なさい 私が休ませてあげよう」
イエス・キリストが言ったの 本当?

うん

この坂道で 君は また 泣いた 笑いながら

僕はあの日 なぜか言えなかったことを想い出す
この坂の上から 見下ろすと 思うんだ
自分の歩いてきた道を
こんなに真っ直ぐでも 平坦でも無かったけどね
でも、随分遠くまで来た 苦しみながら

坂の下を見ると 君の幻の向こうに
海が 光っていた

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