インターネットの掲示板で 女の子と知り合いになった
彼女は楽しく 優しく 僕の理想のタイプだった
その掲示板はマイナーな車についてのもので 最初いたメンバーは次第にいなくなって
とうとう僕たちだけになってしまった
二人は車の話は二の次になり 会話はお互いの趣味 好みの料理などに移っていった
やがて僕たちはお互いを意識しはじめた
顔も見ないのに
そして遂に僕たちは会うことにした
君は東京 僕は大阪だから中間をとって 場所は名古屋に決めた
やって来た女の子はとっても可愛かった
二人で駅前のホテルのラウンジで喋り ホテルのレストランで食事をした
ねえ 遠距離だけどつきあわない?
僕は遂に言った
彼女は目を伏せて黙っていた
どうしたの
近く結婚するの 8年もつきあった腐れ縁の彼と
もうときめきはない でも決めたことだから
じゃあ なぜ 僕と会ったりしたんだい
好きだから
たった一度でいいから会いたかったから
パソコンを通してでなく生身のあなたに
会えてよかった
僕は何も言えなかった
冷めてしまったコーヒーを飲み干し
僕たちは駅に向かった
君の乗る新幹線の案内があったとき 僕は決意した
扉が閉まるとき 飛び乗ったのだ
そう 君は止めて欲しかったんだ だから名古屋くんだりまで来た
君の座席に来たとき 君は僕を見つけて泣いた
僕はあたり構わず大声で言った
誰にも渡さない 君は僕のものだ
君は泣き続けた