植草一秀の『知られざる真実』より転載
2019年9月18日
『食べものが劣化する日本』
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2019/09/post-4711d5.html
ーーー転載開始ーーー
オールジャパン平和と共生の顧問、ならびに運営委員を務められている安田節子氏が新著を出版される。
『食べものが劣化する日本』
(食べもの通信社、本体1400円)
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アマゾンではすでに新著購入の予約受付が開始されている。
食の安全・安心が壊されている。
安田氏は本書冒頭で次のように指摘する。
「かつて日本は、食品公害事件を教訓に、世界でも厳しい食品安全規制が行われている国だった。
しかし、農産物輸出大国である米国が、日本に農産物の輸入拡大と農薬などの食品安全規制の緩和を要求し続けてきた。
国際的には、農薬や遺伝子組み換えなどによる健康や環境への影響が明らかになり、規制や禁止する国々が広がっている。
それに逆行して、日本の食品業政が規制緩和を続けていることは大きな問題である。」
安田氏は長年にわたり、生活者として遺伝子組み換え食品などの食の安全を求めて運動してきた。
その安田氏がいま、かつてない危機感を持たれている。
2018年3月末に主要農作物種子法(種子法)が廃止され、コメなどの穀物種子が内外のアグリビジネスに明け渡された。
日本の食糧安全保障の根幹を揺るがす重大な事態である。
現在の日本の食料自給率は37%。
遠からず日本は食料の自給能力を失い、米国に食料を握られ、従属化が総仕上げの段階を迎える。
本書は、日本の食料の安定供給と安全性が危機に瀕している実態を明らかにするとともに、日本の食事上が粗悪な輸入食品の吹き溜まりになっている現実を明らかにする。
日本の医療費は増大し続け、2017年度には過去最高の42兆円に達している。
この水準は50年前の100倍をこえるものである。
安田氏は医療が進歩しているのに病気の人が増え続けている背景に、国民が摂取する食べものの質の劣化が関係していると指摘する。
私たちはいまこそ、脱農薬社会に転換しなければ取り返しのつかないことになる。
この社会をこのまま次代に引き渡すわけにはいかない。
子どもたちを安心な食べもので守る必要がある。
安田氏の訴えは切実であり、極めて重要なものだ。
韓国のソウル市は、2021年からすべての小・中・高校で「オーガニック無償給食」を施行すると発表した。
安田氏は、日本でも全国で有機・無償の学校給食を実現するなら、日本の有機農業が大きく広がると指摘する。
未来の世代のために、日本の食の安全を保障し、日本が有機農業国に転換することを目指すことに、私たちが思いを共有することを願い、本書を刊行されたという。
食は命の源であり、命に直結する重要性を帯びている。
すべての市民が強い関心を持つ分野であり、本書によって重要事実を把握し、問題意識を共有する意義は極めて大きい。
食の安全、安心に関して、近年強い関心を集めているのが、
遺伝子組み換え
グリホサート(ラウンドアップ)
ネオニコ系農薬
抗生物質投与
成長ホルモン剤
ラクトパミン
食品添加物
放射能汚染
である。
本書では、これらの重要事項について、項目毎に分かりやすく解説が示されている。
主要な論点、データが網羅されており、それぞれの問題についての百科事典の役割を果たしてくれる。
TPPで米国産牛肉のステーキが安く食べられるようになる。
権力の御用機関に堕落してしまっているテレビメディアは、このようにしか伝えない。
しかし、米国産の牛肉には成長ホルモン剤やラクトパミンが投与されており、その影響で乳がんなどに罹患するリスクが著しく上昇することも懸念されている。
米国では、毒であることが「科学的に」立証されるまでは「有害ではない」と判定して摂取に規制を設定しないという行政が行われている。
これを「科学主義」と称するが、大量に摂取してがんになってしまった後で、因果関係が科学的に立証されたので使用を規制するとされても、後の祭りということになってしまう。
リスクが認識されているものについては、安全性が「科学的に」立証されるまでは摂取を制限する、あるいは禁止するのが適正な対応ではないか。
この姿勢を「予防原則」と呼ぶ。
欧州では「予防原則」が基本に置かれるが、日本の行政は米国の圧力を受けて「科学主義」に急旋回している。
これでは私たちの命と健康を守ることはできない。
ーーー転載終了ーーー