ヤフー記事より
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20171114-00078115/
日本でも「受動喫煙」に健康格差が
石田雅彦 | フリーランスライター、編集者
11/14(火) 8:00
受動喫煙と健康格差の関係は明かだ
タバコ問題にも「健康格差」が見え隠れする。健康意識の高い高学歴高収入の世帯が
多い地域の喫煙率は低く、そうでない地域の喫煙率は高い。学歴と喫煙率の関係もあり、
高学歴ほど喫煙率が低い。
受動喫煙にさらされる率も同様となっている。これは日本に限らない。
世界中の疫学調査によって明らかになっている事実だ。
EUでの受動喫煙の実態を調べた研究によれば、経済的な困窮者や若年層などが
不公平に受動喫煙にさらされていると警告しているドイツで行われた
家庭における子どもへの受動喫煙調査では、保護者が喫煙者の場合や
社会的に恵まれない家庭の子どもに対する受動喫煙防止対策が急務としている。
国別でも高所得国から低所得国まで、社会経済的な格差により受動喫煙に
明かな不平等があることがわかっている(※3)。
日本でも受動喫煙と学歴の関係についての調査があるが、やはり
学歴が高いほど受動喫煙にさらされる割合が低くなっている。だが、
社会経済格差、健康格差と受動喫煙の関係についての研究は
まだそれほど多くない。
先日、東北大学大学院の研究者が日本の学会誌に、宮城県の
成人非喫煙者を対称にして教育と家庭や職場における
受動喫煙の状態を調べた論文を発表した。東北大学のプ
レスリリースによれば、タバコを吸わない人の受動喫煙の実態を調査したそうだ。
知識があっても受動喫煙を避けられない
調査の材料は、2014年の宮城県健康調査によりランダムに抽出した
成人2632人に自己記入式のアンケート調査票を郵送し、2443人(92.8%)から
回答を得たと言う。その中から喫煙者を除外し、家庭と職場での受動喫煙の
状況に対し、有効回答が得られたデータを分析した。
その結果、家庭での受動喫煙は19%にみられ、職場や学校での受動喫煙は
39%の非喫煙者にみられた。また、教育年数が13年以上(中卒以上)の
非喫煙者に比べるとそれ以下の教育年数の人に受動喫煙に
さらされる機会が多いということがわかった。
さらに興味深いのは、非喫煙者がタバコを吸うことで健康に害がある
という知識があった場合、家庭での受動喫煙の機会は減るが、職場での
受動喫煙は減らない、という点だ。つまり、いくら知識があっても
職場という、自分ではどうしようもできない環境で受動喫煙に
さらされてしまうことが多いことが示唆される。
研究者は、今回の調査研究により日本でも受動喫煙に社会格差、
健康格差があることがわかったのと同時に、特に職場での
受動喫煙防止対策が必要と訴えている。個々人がいくら避けようとしても、
社会環境がともなわなければ、受動喫煙から自分を守ることは出来ない。
宮城県の成人非喫煙者を対象にしたアンケート調査の結果。教育年数という
格差と受動喫煙の関係、職場での受動喫煙の状況がわかる。タバコの
健康被害についての知識があれば、家庭での受動喫煙を避けることができるが、
職場では難しいということだろう。東北大学のプレスリリースより。
国会が始まるが、国の受動喫煙対策強化法案はタナざらしに
されたままだ。厚生労働省案と自民党内の意見が折り合わない
状況は変わっていない。今回の研究結果で明らかになったように、
飲食店を含む職場環境を変え、受動喫煙という健康被害を
なくしていくことが政治に求められている。