【オーディン】
オーディンは、北欧神話における最高神です。神々の世界「アースガルズ」に君臨し、自らの宮殿にある高座から世界を見渡しています。オーディンとは「狂気、激怒の主」という意味です。妻の女神フリッグとの間には、多くの神々の子供がいました。通常、オーディンは、長い髭を持った片目の老人として描かれます。片目がないのは、魔法を得る代償として失ったからです。普段の服装は、黒いローブを羽織り、つばの広い帽子を目深に被っています。
オーディンは、もともと風や嵐を司る天候神でした。ギリシャ神話では、ヘルメスに相当します。ヘルメスは、知恵と計略に長けた風の神です。ローマ暦の「ヘルメスの日」は、現在の水曜日に当たります。北欧では、水曜日が「オーディンの日」とされました。
【持ち物と従者】
オーディンの槍を「グングニル」と言います。グングニルは、決して的を外さない魔法の槍でした。戦場でのオーディンは、黄金の兜と鎧に、青いマントを羽織っています。乗り物は「スレイプニル」と呼ばれる8本足の馬です。スレイプニルは、非常に速く走ることが出来き、空さえも飛ぶことが出来ました。オーディンの諜報係が、フギン「思考」とムニン「記憶」という二羽のワタリガラスです。その二羽を世界中に飛ばし、彼らが持ち帰るさまざまな情報を得ていました。その他の従者は、2匹の狼です。
【戦争と死の神】
オーディンの住居を「ヴァルハラ」と言います。ヴァルハラには、戦死した勇者の魂が集められました。その勇者を選別するのが、戦乙女ワルキューレです。ワルキューレには、戦いの勝敗を決定する力がありました。オーディンの命令で、戦場に送られ、そこで勝つべきだと判断した方に助力したとされています。
ヴァルハラに集められた勇者たちは、毎日、ラグナロク「神々の黄昏」に備えて、大規模な軍事演習を行いました。ラグナロクとは、世界の終わりの戦争のことです。演習で死んだ者も、日没とともに復活しました。夜には大宴会を開き、翌日には、また演習をしていたとされています。勇者たちは、ラグナロクでの戦力として期待されました。
【魔術の神】
オーディンは、魔術の達人でもあります。「ルーン文字」の秘密を解くために、世界樹「ユグドラシル」の木に自分の首を吊り、槍で自分自身を突き刺しました。そのまま状態で、9日9夜過ごしたとされています。この時、助かったのは、たまたま縄が切れたからです。その結果、ルーン文字の秘密を解き、十八種類の魔法を使えるようになりました。タロットカードの一つハングマン「吊るされた男」は、この逸話が元だとされています。
オーディンの魔法の一つが変身能力です。巨人が隠していた詩の蜜酒を略奪した時、忍び込むために、蛇の姿に変身しました。その蜜酒の番をしていたのが巨人の娘です。オーディンは、美青年の姿に変身して、その巨人の娘から、蜜酒を3口分貰いました。そこから、すぐに逃げた時は、鷲に変身しています。オーディンは、蜜酒の力によって、詩の才能を人間に与えることが出来ました。そのため、吟遊詩人たちのパトロンとされています。
【知恵の神】
オーディンは、知識の神として、貪欲に知識を求めました。知恵を得るためには、自らの片目をも代償にしたことがあります。オーディンは、ユグドラシル「世界樹」の根元にある巨人族の賢者ミーミルの「知恵の泉」を飲むことで知恵を身に付けました。その担保として差し出したのが、自らの片目です。また、新たな知識を求めて、自ら地上を彷徨うこともありました。その場合は、従者を連れません。「通りすがりの老人」「片目の美青年」「貧しい小百姓」などの姿に変装し、人間に紛れて行動したとされています。
【万物の主】
オーディンは、 2人の兄弟のヴィリとヴェーと共に世界を創造しました。ヴィリとヴェーは、その後、あまり神話には登場しません。三人は、協力して当時の巨人の王ユミルを殺害し、その死体を使って、万物を創造しました。そのため、オーディンは、万物の主とされています。この時に創り出されたのが人類の始祖です。オーディンは、不死身というわけではありません。ラグナロクで、ロキの息子フェンリルに噛み殺され、最後を迎えたからです。
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