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プラトンの「エロス」

2023-09-13 11:20:00 | 西洋哲学

【エロス】 

 エロスは、古代ギリシャ神です。一説では、万物を誕生させた神々の最年長者とされています。エロスは、混沌としていた全宇宙を調和させ、秩序をもたらしました。別の説では、若々しく好色な愛の神とされます。時に若者の魂に宿り、無節操な行いをさせました。エロスは、一般的には、愛と美の女神アプロディーテの子供とされています。ちなみにラテン語では、キューピッドです。プラトンの説では、エロスは、父ポロス「富裕」と、母ペニヤ「窮乏」の子供とされています。そのため母親の性質を受け継ぎ常に窮乏していました。

 【哲学者】

 プラトンにとって、エロスは、知恵を愛し求める者です。そのため、愛智者「フィロソフィア」と呼ばれました。フィロソフィアは、英語の哲学の語源です。そこからエロスは、哲学のシンボルとなりました。哲学者の欲望とは、思想を産み出すことです。その欲望は、もともと人間の魂に備わているとされています。

 プラトンは、エロスが、そもそも神々でも人間でもないとしました。死すべき「人間」と、不滅の「神々」との間の中間的な存在だと考えたからです。プラトンは、それを偉大なる神霊「ダイモン」と名付けています。エロスには、神々と人間の媒介者として、両者を結ぶ役割がありました。知恵と無知の中間に立ち、人間の友として真理へ導くとされています。

 【生】 

 全てのものは、新陳代謝するものです。生と死によって、古い者と新しい者は、常に入れ替わります。プラトンは、それら全てを司っているものは、エロスだとしました。生殖があるのは、肉体を持つ生き物だけではありません。人間の魂も出産を求めています。ただし、魂が産み出すものは思想です。思想も、肉体と同様に期が熟さなければ生まれません。全ての人間の魂は、思想の懐妊の状態にあります。その思想が生み出されるのは、魂にエロスが宿った時です。

【魂と肉体】 

 プラトンは、魂が完全なものを追求しているとしました。完全なものとは「善いもの」や「美しいもの」のことです。不完全な魂は、常に欠けているものを追求しています。プラトンの思想は、心身二元論的で、魂を肉体より価値があるものだとしました。魂は、もともと天上界の不滅の存在だとされています。それが堕落したため、地上に追放され、人間の肉体に押し込められたのだとしました。その魂は、死によって、肉体的なものから解放されます。

 【美】 

 エロスには、肉体的な美を求める「地上のエロス」と、精神的な美を求める「天上のエロス」があります。地上のエロスとは、普通の肉体的な生殖のことです。それに対して、天上のエロスを心に宿す者は、その精神が生産的になります。例えば、美を求める詩人などです。詩人というものは、エロスの働きによって生産的になります。その働きは、段階的です。下位の肉体的な美から、上位の精神的な美へと移行していきます。




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