だんじり祭りが超有名な岸和田に、昭和の名作庭家・重森三玲(しげもりみれい)が手掛けた知られざる名庭があります。岸和田城「八陣の庭(はちじんのにわ)」です。「永遠のモダン」と称される重森らしいデザインが実に、かっこいい庭です。
- 東福寺本坊庭園と双璧の重森三玲の最高傑作
- 庭の周囲360度どこから見ても、多彩な石組の表情が味わえる枯山水庭園
- 城の縄張図をアレンジした幾何学的な石組は、隣接する岸和田城天守閣から見下ろすと感動的
- 天守閣がこれほど見事な借景として映える庭はめったにない
前回レポートした9月14-15日に岸和田城周辺で開催されるだんじり祭り期間中も、八陣の庭を鑑賞できます。だんじり祭りとは対照的な岸和田の魅力をぜひインプットしてみてください。
岸和田は江戸時代、現在の大阪府の岸和田市以南を領地とした岸和田藩の城下町でした。その居城・岸和田城は戦国時代末期にルーツがあると考えられており、秀吉の時代に根来寺征伐の拠点として本格的な築城が行われました。江戸時代初めにはほぼ現在の姿となり、岡部氏が幕末まで城主として53,000石の藩を治めていました。
天守閣は江戸時代後期に落雷によって焼失、明治維新により城は石垣を除いて破却されました。現在の天守閣は1954(昭和29)年に市民の熱意により、一回り規模を縮小して再建されたものです。
八陣の庭は、天守閣再建の前年に、三国志の諸葛孔明が考案したとされる陣立て「八陣」をイメージして作庭されました。城の縄張のように上中下三段で構成されていますが、水平方向からでも全体を見渡せるよう高低差はほとんどありません。
上段中央に大将を示す石組み、中下段には大将を守る八つの陣の石組が配されており、周囲を歩きながら眺めると庭の表情が流れるように変化していきます。
また日本庭園では珍しく、あらかじめ天守閣の上から眺めた際の美しさも計算して作庭されています。八陣の庭は周囲を歩きながら水平方向に鑑賞する場合は無料ですが、天守閣に登るのは有料です。必ず天守閣の上から眺めることをおすすめします。
天守閣の上からは「永遠のモダン」という重森三玲の代名詞が最もフィットする眺めが目に飛び込んできます。城の縄張図を上から見たように、石垣を示す石組みが周囲を取り囲んでいる様子がよくわかります。
形状は不規則ですが、石垣のラインに曲線を用いていないため、幾何学的で神秘的にも思える印象を与えます。どこかナスカの地上絵のような、中南米の古代文明のデザインを彷彿とさせます。
【東福寺 公式サイトの画像】 本坊庭園
東福寺本坊庭園の「永遠のモダン」も、古刹と調和した絶妙の空間が感動的ですが、こちらは城との調和が絶妙です。
天守閣からは市内を一望
岸和田城「八陣の庭」と東福寺「本坊庭園」は、国の名勝に指定されています。昭和になってから造られた庭園が国の名勝に指定されていることは極めて珍しく、他には金沢の末浄水場にある庭園だけです。そんな稀有な名勝に重森三玲の庭園が今年2019年にまた一つ加わります。大阪・豊中にある西山氏庭園です。公開されていないようですが、機会を待ちたいものです。
【豊中市 公式サイト】 西山氏庭園
岸和田の魅力は、「動」のだんじりに対して、「静」は何と言っても八陣の庭です。ぜひ訪れてみてください。
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
重森三玲の庭は全国にある
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<大阪府岸和田市>
岸和田城 天守閣
【岸和田市公式サイト】 岸和田城(天守閣)
【岸和田市公式サイト】 岸和田城庭園(八陣の庭)
原則休館日:月曜日、12/29-1/3、展示替え期間
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00(4月上旬~20:00)
◆おすすめ交通機関◆
南海本線「岸和田」駅下車、南出口から徒歩10分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した「岸和田」駅までの平常時の所要時間の目安:60分
大阪駅(梅田駅)→大阪メトロ御堂筋線→なんば駅→南海本線→岸和田駅
※この施設は隣接する有料の市営駐車場が利用できます。
※イベント開催時は渋滞/駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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