いにしえの貴族や武家が自然との調和を楽しんだ庭園は、質的にも量的にも京都が日本一であることに誰も異論はありません。その多くが京都を代表する観光スポットになっていますが、近年は京都の庭園でも”第三の勢力”が人気を集めています。その一つが、洛北・鞍馬の手前にある白龍園(はくりゅうえん)です。
- 戦後になってから市民の手で平安時代の廃寺の跡地を整備、空間は周囲の自然と絶妙に調和
- 鞍馬に至る静かな山あいにあり、鞍馬川のせせらぎの音しか聞こえないような時間を過ごせる
- 春秋のみ一日限定100名に公開、紅葉・桜期は超プラチナチケット
5月は輝くような新緑を楽しめる割には、案外空いています。京都では近年、”青もみじ”というキャッチコピーで5月の新緑をアピールしています。白龍園は、輝くような京都の新緑を味わえる筆頭格です。
朱い鳥居が絶妙に写真映えする
現在の白龍園は、京都の子供服メーカー・青野株式会社の創業者・青野正一が、現在地を1962(昭和37)年に入手したことで産声を上げます。この地は洛中から鞍馬に至る鞍馬街道沿いにあり、平安時代から貴族の隠棲の地として知られていました。白龍園の地には発掘調査の結果、廃寺になった安養寺があったと推定されています。小野小町の別荘や源義経の隠れ家があったという伝説もあります。
青野正一はこの地に伝わる伝説と自然の美しさにほれ込み、荒れ放題になっていた土地の整備に着手します。まず1963(昭和38)年に山の神に祈る祠と鳥居を建立し、その後半世紀もの時間をかけて、重機に頼らず昔ながらの手作業で整備が続けられてきました。
担い手となったのは社員や地元の人が中心です。プロの庭師や建築会社が施工したような完成された美しさではなく、穏やかな手作り感を白龍園の空間に感じ取ることができます。
えいでん・二ノ瀬駅
白龍園のチケットは、今年2019年の春季公開は現地でも発売されているようですが、叡山電鉄(通称:えいでん)の始発・出町柳駅で購入する方が確実でしょう。現地にはコインパークも含めて駐車場が全くなく、叡電もしくは路線バスでないと行けません。
二ノ瀬駅は終点・鞍馬駅の二つ手前で、結構な山あいにあります。電車が急カーブを繰り返し進んで行くと、二ノ瀬駅に到着する直前にうっそうとした木々のトンネルのような箇所を通過します。近年は鉄道ファン以外にも有名になった「もみじのトンネル」です。近づくと車内アナウンスがあります。カメラを手にして待ちましょう。とても京都らしい絶景が、四季それぞれの色で楽しめます。
【えいでん公式サイトの画像】 もみじのトンネル
入口すぐの大灯篭
園は山肌にそって順路が造られており、階段や斜面が少なからずあります。苔の海の中を石の上だけを歩くような箇所もあります。さほど大きくはなく、順路そって立ち止まらずに進めば一周するのに30分もかかりませんが、白龍園の各所の美しい表情がそうはさせてくれません。
入口を入ると、輝くような苔の海の先に階段と大灯篭が見えてきます。上野の寛永寺に元あったこの大灯篭は、下から見上げると絶妙な位置に立てられています。生い茂る木々の緑のシャワーを「これからたっぷり浴びることができるぞ」と、訪れる者に呼び掛けているようです。
大灯篭のある階段のひなびた感も、戦後になって整備されたものとは思えません。自然に逆らうことを一切排除して整備を進めてきたと感じられます。
あずま屋「彩雲亭」と「鶯亭」
座って休めるあずま屋は5か所も設けられており、とにかくゆったり過ごせるよう配慮されています。しかも一日100名限定です。著名な庭園のように人であふれかえることはなく、人が写らない写真も容易に撮れます。あずま屋でも他のグループと一緒になる機会はかなり少なめです。
5か所のあずま屋からは高低差を活かして、様々な角度の園の表情と鞍馬川の渓谷の緑が楽しめます。おそらく最も眺望の良い場所にあずま屋を設けたのだと思われます。壁がほとんどないため、360度で絶景と緑のイオンが楽しめます。ぜひ5か所とも腰を下ろしてみてください。なお園内は飲食禁止ですので、あずま屋でお弁当は広げられません。
飲み物をいただきながら休憩できるところは、園の入口の反対側、鞍馬川沿いに「河鹿荘」があります。江戸時代末期の古民家の中で、タイムスリップしたような空間を楽しむことができます。
【白龍園公式サイト】 河鹿荘
河鹿荘
入場者数を1日100名に限っているため、心無い人が石ではなく苔の上を歩いて苔を死なせてしまうような事態が避けられていると感じます。庭を愛する青野株式会社の判断として敬意を表します。
青野株式会社の雑貨のお店「kitekite」は、河原町と京都タワーにあります。通販も行っています。白龍園のように穏やかでほのぼのとしたデザインが特徴です。こちらも立ち寄ってみてください。
【公式サイト】 kitekite
京都の庭園の”第三の勢力”としてはもう一つ、洛北・鷹峯の先にある「原谷苑」がよく知られるようになりました。こちらもいずれレポートしてみたいと思います。
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
白龍園ツアーガイドを務める庭園デザイナーが感じ取る庭の「しかけ」
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<京都市左京区>
白龍園
特別公開 2019春
【施設による特別公開公式サイト】
会期:2019年3月30日(土)~6月16日(日)
原則休館日:4/7,24,25、5/8,9,29,30、6/5、荒天日
入館(拝観)受付時間:10:00~13:30
※この施設は毎年、春(3月末~6月中旬頃)、秋(10月中旬~12月上旬頃)のみ公開されます。
※観覧券は8:30~12:30に叡山電車出町柳駅インフォメーションでのみ発売されます。
白龍園では普段は観覧券を購入できませんが、2019春の公開では白龍園でも発売されます。
※前売り券はありません。当日券のみ購入できます。
※1日の観覧者数は100人に限定されています。購入は1人1枚しかできません。
※桜/紅葉期など混雑する日を中心に発売開始時間前に行列が限定数に達した場合は、
1人1枚整理券が配布されます。整理券所持者のみ、発売開始時間後に観覧券を購入できます。
※荒天日は観覧が中止になります。
※この特別公開は、非営利かつ私的使用目的でのみ、撮影禁止場所以外の写真撮影が可能です。
三脚/一脚/動画撮影は禁止です。
※この施設は、車いすやベビーカーでの観覧には適しません。
※この施設は、ハイヒールの靴では入場できません。
◆おすすめ交通機関◆
叡山電鉄「二ノ瀬駅」下車、徒歩7分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:60分
京都駅→JR奈良線→東福寺駅→京阪電車→出町柳駅→叡山電鉄→二ノ瀬駅
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には駐車場はありません。周辺にも駐車場はありません。
※現地付近のタクシー利用は事前予約をおすすめします。
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