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スコットランドから素晴らしい印象派作品が来日_バレル・コレクション展

2019年07月06日 | 美術館・展覧会

東京・渋谷・Bunkamuraザ・ミュージアムの「バレル・コレクション」展に、会期間際に訪れました。印象派を中心としたフランス近代絵画の巨匠の作品から、日本で鑑賞機会の少ないスコットランドの画家の作品まで、個性あふれる作品が見応えのある展覧会に仕上がっていました。

  • スコットランドの海運王バレルが蒐集、欧州の近代絵画コレクションのすそ野の広さに驚かされる
  • バレエの稽古を描いた「リハーサル」は傑作、ドガらしい大胆な構図に注目
  • スコットランドの美術館が改修工事中のため実現した展覧会、日本で見られるのはおそらく最後


欧米の首都以外の都市の美術館は、日本では多くが無名ですが、コレクションの層の厚さはいずれも目を見張ります。バレル・コレクションもその典型例で「こんなところがあったのか」と驚くことになります



バレル・コレクションはスコットランド最大の都市・グラスゴーにある美術館の名称で、海運王ウィリアム・バレル(William Burrell)が蒐集し、グラスゴー市に寄付した美術品を所蔵・展示しています。

バレルは1861年に生まれ、海運王として築いた巨万の富を元に1890年代から1920年代にかけて、コレクションを形成しました。寄付の際に「英国外に作品を持ち出さないこと」を条件にしていましたが、美術館が改修工事で展示できないため、特例で英国外を巡回する展覧会が実現したものです。

こうした特例は欧米の美術館ではまれにあります。改修工事費を捻出するためなので「寄付者も許してくれるだろう」と考えるのでしょうか。



展覧会には80点が出展されており、すべてがGlasgow Museumsに所属するバレル・コレクションもしくはケルビングローブ美術博物館の所蔵品です。

【Glasgow Museums Collection 公式サイトの画像】 ゴッホ「アレクサンダー・リードの肖像」

展覧会冒頭では、一目でゴッホの作とわかる存在感のある肖像画が展示されています。モデルのリードは、バレルにフランス絵画を積極的に紹介した画商で、ゴッホとも親交のあった人物です。とても写実的に描かれており、リードが意志の強い人物だったことをうかがわせるような描写が見事な名品です。これから始まる展覧会への期待感がぐっと高まります。

展覧会は絵のモチーフ単位で構成されています。第1章の「室内の情景」と「静物」では、フランスやオランダの写実派を中心とした作品がまとめられています。

【展覧会公式サイト】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています

フランスの庶民の日常を描いたフランソワ・ボンヴァン(François Bonvin)の「スピネットを弾く女性」は、ピアノに似た楽器を演奏する女性の後姿が魅力的です。水色の縦じま模様のスカートが絵の印象を引き締めています。

写実的な静物画と肖像画で人気の高いアンリ・ファンタン=ラトゥール「春の花」も写真のような描写が輝きを放っています。当時の英国ではとても人気のある画家であり、入手したバレルはご満悦だったでしょう。

巨匠セザンヌの「倒れた果物かご」も素晴らしい作品です。黄色で明るく描かれた果物が、青いテーブルクロスの上にとても美味しそうに描かれています。

【Glasgow Museums Collection 公式サイトの画像】 ペプロー「バラ」

スコットランドの画家、ペプローの「バラ」は、暗い背景にピンクのバラを描いており、とても目立つ作品です。展示されている同時代の作品は、印象派を中心に明るい光を描いた作品が多いためです。静物画としてとても斬新な構成です。

【Glasgow Museums Collection 公式サイトの画像】 ドガ「リハーサル」

第2章「街中で」と「郊外へ」は、ドガの傑作「リハーサル」から始まります。バレエの稽古場をやや高い位置からの目線で描いた作品で、ドガの構図のマジックをたっぷりと味わえます。螺旋階段を描くことで、不思議なことに稽古場の様子に躍動感が加味されます。片手で螺旋階段を隠して鑑賞してみてください。マジックを体感できます。

【Glasgow Museums Collection 公式サイトの画像】クロホール「二輪馬車」

クロホールもスコットランドの画家です。「二輪馬車」は街の様子を写実的にしっかりと描いています。出展されているスコットランドの画家の作品からは、同時代のイングランドの画家と比べ、フランスやオランダの写実表現の影響が強いことがうかがえます。

【Glasgow Museums Collection 公式サイトの画像】 マリス「ペットの山羊」

オランダの写実主義・ハーグ派のマリスの作品も見応えがあります。「ペットの山羊」はバルビゾン派を思わせる素朴な表現で、田舎の少女が山羊と戯れる様子を描いたキュートな作品です。


撮影OKの展示室の一部

スコットランドの画家の作品は日本では普段目にしないこともあり、貴重な体験ができました。ファンタン=ラトゥールら、日本では知名度は高くない画家のすぐれた作品も多く含まれており、こちらも西洋近代絵画への関心を上手に刺激してくれます。

東京展は終了し、展覧会は折り返し地点を過ぎました。8月から静岡市美術館、11月から広島県立美術館に巡回します。開催美術館の地元の方はもちろん、まだ行けてない方も静岡/広島までぜひお出かけください。


美術館の隣にはパリの名物カフェ「ドゥ・マゴ」があります

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



スコットランドに興味を持った方におすすめの一冊
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<東京都渋谷区>
Bunkamuraザ・ミュージアム
印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション
【美術館による展覧会公式サイト】
【主催メディアによる展覧会公式サイト】

主催:Bunkamura、毎日新聞社
会期:2019年4月27日(土)〜6月30日(日)
原則休館日:5/7、5/21、6/4
入館(拝観)受付時間:10:00~17:30(金土曜~20:30)

※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※この展覧会は、2018年10月から福岡県立美術館、2018年12月から愛媛県美術館、から巡回してきたものです。
※この展覧会は、2019年8月から静岡市美術館、2019年11月から広島県立美術館、に巡回します。
※この美術館は、常時公開している常設展示はありません。企画展開催時のみ開館しています。

※この展覧会一部の展示室は、非営利かつ私的使用目的でのみ、会場内の写真撮影が可能です。
 フラッシュ/三脚/自撮り棒と動画撮影は禁止です。




◆おすすめ交通機関◆

JR山手線「渋谷」駅下車、ハチ公口から徒歩7分
京王井の頭線「神泉」駅下車、北口から徒歩7分
東京メトロ銀座線、京王井の頭線「渋谷」駅下車、徒歩7分
東急東横線・田園都市線、東京メトロ半蔵門線・副都心線「渋谷」駅下車、3a出口から徒歩5分

JR東京駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
東京駅→東京メトロ丸の内線→赤坂見附駅→東京メトロ銀座線→渋谷駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場(東急本店)があります。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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