前回で書ききれなかったMIHO MUSEUM龍光院展の続き、後半戦をレビューします。
美術館棟1Fからの幽玄な眺望
【展覧会公式サイトの画像】蜜庵咸傑墨蹟 璋禅人宛法語(展示は3/21-4/7)
国宝の蜜庵咸傑(みったんかんけつ)墨蹟(ぼくせき)は、日本にある中国の禅僧の墨蹟の中で最も名高い一幅です。日本に3つしかない国宝茶室の一つ、龍光院にある「蜜庵席」は、この墨蹟だけを掛ける床があることから名づけられました。南宋の高僧が禅の道をわかりやすく示した内容です。力のこもった筆のタッチに威厳を感じます。4/7までのI期だけの展示です。
龍光院所蔵のあと2つの美術品の国宝の内、「竺仙梵僊(じくせんぼんせん)墨蹟 諸山疏」は5/8-19の展示、「金剛般若経」は前後期で場面替えされますが通期展示です。
【展覧会公式サイトの画像】喝石巌図
寛永の三筆の一人として寛永文化をリードした石清水八幡宮の社僧・松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう)の作品も見応えがあります。江月と親交が深く、この展覧会にもたくさんの昭乗の書や絵画が出展されています。
喝石巌図(かっせきがんず)は、岩を割ろうと呪術をかける僧の表情がとてもなまめかしく感じます。昭乗は書の達人ですが、絵画でも充分に達人であることがわかります。
【展覧会公式サイトの画像】春屋宗園頂相 江月宗玩請(展示は3/21-4/21)
師の春屋宗園の頂相(ちんそう)や墨蹟も多く出品されています。「春屋宗園頂相 江月宗玩請」は自分の法灯を継がせる証として江月に与えたものです。頂相は長谷川等伯の筆である可能性が高いと考えられています。江月と並んで当代一流の文化人と多くの親交を持った春屋の顔立ちからは、実に腹の座った人物だったことがうかがえます。顔の肉付きの描写も実にリアルです。
春屋の頂相は複数ありますが、この作品は忌日法要に用いられていることから、龍光院にとって最も重要な頂相です。この作品の展示は前期4/21まで、4/23からの後期はもう一点の江月宛の頂相が展示されます。
【展覧会公式サイトの画像】江月宗玩頂相 衆徒請(展示は3/21-4/21)
江月の頂相も龍光院に数多く伝わっていますが、「江月宗玩頂相 衆徒請」は江月の忌日法要で使用される最も重要な頂相です。狩野探幽による作品で、高僧としての威厳よりも、一人の人間としてのリアリティを感じさせます。顔には白い髭まで描かれています。江月の美意識を表したものでしょう。この作品の展示は前期4/21まで、4/23からの後期は他の頂相が展示されます。
【展覧会公式サイトの画像】水仙・菊・牡丹図(展示は3/21-4/7)
「水仙・菊・牡丹図」も松花堂昭乗の傑作です。南宋の花鳥画のように、きわめて洗練された描写に目が釘付けになります。江月はこの作品をいたく気に入り、箱書きを自ら記しています。
【展覧会公式サイトの画像】竹石図
狩野探幽も江月と親交の深かった文化人の一人で、龍光院に多くの作品がのこされています。「竹石図(ちくせきず)」は、探幽による幽玄な薄墨の竹と石の描写が目を引きます。江月自身による賛は左右で文字の大きさが異なり、構図として絶妙のバランスを見せています。
この展覧会では、龍光院が所蔵する美術品の国宝4点と重文9点のすべてが展示替えされながら登場します。3回行けば全部を鑑賞できます。とても”行きにくい”ですが、とても”行く価値”があります。
後期展示の「江月宗玩墨蹟 遺偈」、II期展示の松花堂昭乗「十六羅漢図」、4/9-5/6展示の重要文化財・伝牧谿「柿・栗図」、後期展示の狩野探幽「大燈国師像」など素晴らしい作品が今後も次々登場します。私も再び訪れることになりそうです。
あと2つの国宝・曜変天目も同時期に奈良と東京の展覧会で登場します。3か所で同時に観ることができる期間は4/13-5/19のほぼ1か月間です。
【奈良国立博物館】国宝の殿堂 藤田美術館展(4/13-6/9)
【静嘉堂文庫美術館】日本刀の華 備前刀(4/13-6/2)
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
寛永の三筆の本隋に迫る
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MIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市)
大徳寺龍光院 国宝曜変天目と破草鞋(はそうあい)
【美術館による展覧会公式サイト】
主催:MIHO MUSEUM、日本経済新聞社、京都新聞
会場:北館
会期:2019年3月21日(木)~2019年5月19日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00
※4/21までの前期展示と4/23以降の後期展示、もしくは4/7までのI期展示と4/9-29のII期展示と5/1以降のIII期展示で
一部展示作品/場面が入れ替えされます。
※前期・後期展示期間内でも、展示期間が限られている作品/場面があります。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っていますが、企画展開催時のみ開館しています。
◆おすすめ交通機関◆
JR琵琶湖線「石山」駅下車、帝産バス乗り換え「MIHO MUSEUM」下車、徒歩1分
新名神高速「信楽」ICから車で15分、「草津田上」ICから車で20分
名阪国道「壬生野」ICから車で35分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:00~00分
大阪駅→JR京都・琵琶湖線→石山駅→南口3番バスのりば→帝産バス150系統ミホミュージアム行→MIHO MUSEUM
【公式サイト】 アクセス案内
※バスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
※この施設には無料の駐車場があります。
※現地付近のタクシー利用は事前予約を強くおすすめします。
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