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日本最高峰の拝観謝絶寺院の展覧会_滋賀 MIHO 龍光院展 5/19まで

2019年03月31日 | 美術館・展覧会

滋賀県のMIHO MUSEUMで、寺の塔頭に伝わる文化財では日本トップクラスの質の高さを誇る京都・大徳寺・龍光院(りょうこういん)の全貌を公開する展覧会「大徳寺龍光院 国宝曜変天目と破草鞋(はそうあい)」が始まっています。

  • 世界に3つしかない完全な曜変天目茶碗が3カ所の展覧会でほぼ同時公開される内の一つ
  • 龍光院は観光目的の公開を一切行わない寺として有名だが、所蔵文化財の質の高さは大徳寺随一
  • 所蔵品を大々的に公開する展覧会開催も初めて、この規模で鑑賞できる機会はめったにない
  • 絵画や書・茶道具からは、小堀遠州ら寛永文化をリードした数寄者たちの息吹が伝わってくる


とても”行きにくい”美術館ですが、展示の質の高さが不便さをはるかに上回ります。わざわざ出かける価値のある展覧会です。


トンネルを抜けると曜変天目の宇宙が待っている

大徳寺の塔頭・龍光院は1606(慶長11)年、福岡藩主・黒田長政が父・孝高(よしたか=如水、官兵衛)の菩提を弔うために建立しました。開基は、秀吉時代に千利休など数々の文化人や戦国大名からの信奉が篤かった春屋宗園(しゅんおくそうえん)です。春屋は龍光院建立後まもなくこの世を去り、実質的な開基として龍光院を大徳寺山内でも指折りの名刹に育てたのは、2世の江月宗玩(こうげつそうがん)です。

戦国時代後期から江戸時代初期にかけて、茶の湯を介して上流階級が集まるサロンとしての大徳寺の繁栄は、一流の文化人となった高僧を次々輩出したことが礎になっています。知名度の高い一休や沢庵よりも、大徳寺ブランド確立により貢献したのは、春屋・江月の師弟です。展覧会もこの二人の足跡を軸に構成されており、いかに幅広い交流があったかがわかります。



江月は1574(天正2)年に堺の豪商・津田宗及の子に生まれます。宗及は千利休・今井宗久とともに茶の湯の天下三宗匠と呼ばれる一流の文化人であると同時に、当時の日本トップクラスの商人として天王寺屋を率いていました。江月はいわば三井・三菱・住友の御曹司に生まれたようなもので、この出自の高さが江月の人生と龍光院の隆盛に大きく影響します。

【展覧会公式サイトの画像】欠伸稿

展覧会は、龍光院の住職として江月がのこした足跡の紹介から始まります。「欠伸稿(かんしんこう)」は、江月が前半生を詩文形式で日々の活動を記録したものです。すべて漢文で字をくずさず書かれており、より高いレベルの僧侶を目指していた気概が伝わってきます。

【展覧会公式サイトの画像】宗及茶湯日記

続く展示は、江月の実家・津田家がのこした名品です。個人蔵「宗及茶湯日記」は、江月の兄で天王寺屋を継いだ宗凡からさかのぼる三代が出席した茶会の記録です。安土桃山時代の上流階級の交流を通じ、茶の湯文化のリアルな足跡を今に伝えます。ところどころに見られるとても洒落た挿絵が、この日記をことさら上質に見せています。

【展覧会公式サイトの画像】曜変天目

この展覧会の目玉「曜変天目」は、MIHO MUSEUMで企画展が行われる会場の2F北展示室の中で、最も視線が集まりやすいコーナーに展示されています。ひし形のフロアの中心のガラスケースの中で360度鑑賞ができます。

その仕上がり状態から、最高峰の”曜変”とみなされる天目茶碗は世界に3つしか完存せず、すべて日本にあることはよく知られています。まさに世紀の大珍品です。3つとも国宝です。龍光院所蔵品は、津田宗及から江月に相続されたものと考えられています。

あと2つの曜変・静嘉堂文庫美術館と藤田美術館の所蔵品に比べ、曜変の特徴である”宇宙空間の瑠璃色の銀河”のような神秘的な輝きは、最も地味と評価する声が少なくありません。美術品の美しさは、観る人自身がどう思うかで決まります。他人の評価でみなすものではありません。どのように美しく、逆にちっぽけに見えるかはみなさん次第です。

静嘉堂/藤田/龍光院所蔵の本物3品とも私は見たことがあります。並列して見たことはありませんが、龍光院の曜変は深い静けさが魅力です。静かだからゆえに、その幽玄な魅力を見極めようと最も長時間見つめてしまいます。

宇宙の瑠璃色の銀河を思わせる妖艶な輝きは、3品すべてに備わっています。熱帯の昆虫の羽のように見える人もいるでしょう。あとは”どれが好きか”の違いだけです。そうした究極に怪しげで議論を呼び起こす魅力が、曜変天目なのです。

【展覧会公式サイトの画像】油滴天目 附 螺鈿唐草文天目台

曜変に続いて、龍光院所蔵の天目茶碗のもう一つ、重要文化財の「油滴」が展示されています。油滴はその名の如く、水面に油の滴がうかんだ様に、無規則にアナログに斑文が散りばめられているのが魅力です。

「曜変が最高峰で、油滴は二の次」、永らく形成されてきた天目茶碗の格付けイメージですが、私は油滴にむしろ魅力を感じます。”宇宙空間の銀河”のような神秘的な輝きは、油滴にもあてはまります。曜変は雲海のように見えますが、油滴は無数の星をちりばめたように見えます。油滴の方が果てしなく広い宇宙空間を感じさせます。


美術館入口 レセプション棟

曜変と称される天目茶碗はもう一つあり、加賀前田家に伝来していたものを現在MIHO MUSEUMが所蔵しています。龍光院展の期間中のコレクション展で展示されています。曜変の特徴である雲海の中に斑文が漂うような発色はわずかながらも、虹のような色の変化は美しく表れています。”完全ではない”曜変と呼ばれており、重要文化財です。雲海がないため”油滴”だと呼ぶ声もあります。

やれ国宝だ重文だというお上の格付けとは別格の、美しさ・怪しさをこの茶碗は持っています。宇宙のような紋様が現れるかは焼いてみないとわからない曜変ワールドを象徴する逸品です。

【展覧会公式サイトの画像】耀変天目(MIHO MUSEUM蔵)

展示後半のレビューは次回に続きます。



天目とは何ぞや?

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MIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市)
大徳寺龍光院 国宝曜変天目と破草鞋(はそうあい)
【美術館による展覧会公式サイト】

主催:MIHO MUSEUM、日本経済新聞社、京都新聞
会場:北館
会期:2019年3月21日(木)~2019年5月19日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00

※4/21までの前期展示と4/23以降の後期展示、もしくは4/7までのI期展示と4/9-29のII期展示と5/1以降のIII期展示で
 一部展示作品/場面が入れ替えされます。
※前期・後期展示期間内でも、展示期間が限られている作品/場面があります。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っていますが、企画展開催時のみ開館しています。



◆おすすめ交通機関◆

JR琵琶湖線「石山」駅下車、帝産バス乗り換え「MIHO MUSEUM」下車、徒歩1分
新名神高速「信楽」ICから車で15分、「草津田上」ICから車で20分
名阪国道「壬生野」ICから車で35分

JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:00~00分
大阪駅→JR京都・琵琶湖線→石山駅→南口3番バスのりば→帝産バス150系統ミホミュージアム行→MIHO MUSEUM

【公式サイト】 アクセス案内

※バスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
※この施設には無料の駐車場があります。
※現地付近のタクシー利用は事前予約を強くおすすめします。


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