栃木県の足利市の目玉観光スポット・足利学校の北に隣接して、鑁阿寺(ばんなじ)があります。足利将軍家の菩提寺で、国宝の本堂を中心に堂々とした境内が魅力です。
- 足利氏の居城に創建されており、境内を外から見ると城のよう
- 鎌倉時代初期に足利将軍家の祖を弔うために開かれた菩提寺、寺の歴史は足利家の歴史でもある
- 国宝の本堂は真言宗寺院では珍しい禅宗様で、鎌倉時代を代表する名建築
北関東では有数の古刹です。足利将軍家は、京都以外にも素晴らしい文化遺産をのこしました。
楼門
鑁阿寺は、足利将軍家の祖である足利義康(よしやす)が、平安時代末期の12c半ばに居城を構えた地にあります。鑁阿寺が土塁と堀で囲まれ、城のような趣があるのはこの名残です。鑁阿寺境内が史跡に指定された際の名称も「足利氏宅跡」です。
義康の父・義国(よしくに)は、後三年の役で知られる源氏の嫡流、八幡太郎義家(よしいえ)です。義国は源氏の嫡流を継げず、二人の息子に所領を分割相続します。下野国足利を相続したのが義康、足利の西隣の上野国新田、現在の群馬県太田市付近を相続したのが義康の兄・義重(よししげ)です。
義重は新田氏を名乗るようになります。足利尊氏と共に鎌倉幕府を滅亡に追い込んだものの、後に尊氏に滅ぼされる新田義貞(にったよしさだ)は義重の嫡流の子孫です。
鑁阿寺を取り囲む堀
義康を継いだ義兼(よしかね)が1196(建久7)年に居城内に持仏堂を設け、守り本尊として大日如来を祀ったのが、鑁阿寺のはじまりです。義兼を継いだ義氏(よしうじ)が現在の堀の外にも広がる大伽藍を形成し、足利氏の氏寺とします。
源氏の嫡流が三代将軍・実朝で途絶えた後、執権北条氏によって源氏一門が粛清される中で、足利氏だけは執権北条氏との関係を良好に保ち続けます。鑁阿寺は鎌倉時代を通じて、幕府の有力御家人であり続けた足利氏により、寺勢を保ち続けました。
大伽藍の面影は、現在も境内を取り囲む土塁と堀に感じられます。堀はほぼ正方形で一辺200m近くあります。外見からは城にしか見えません。土塁には手入れの行き届いた松が整然と並び、堀には悠々と鴨の親子が泳いでいます。南面する山門にかけられた太鼓橋を渡ると、どんな境内が現れるのかと、とてもワクワクします。
国宝・本堂
境内は四辺の中心に門が四か所設けられ、門から延びる参道の交わる中心に国宝の本堂があります。現在の本堂は、1299(正安元)年に足利尊氏の父・貞氏が再建したものです。当時流行していた中国風を取り入れようとしたのでしょう、外観のデザインが禅宗様であるところが注目されます。大日如来を本尊とし、創建時から真言宗の寺に禅宗様の建築がある例は多くありません。
後世の改修で正面に向拝が付けられたため禅宗様に見えにくくなっていますが、四隅の屋根の反りはとても美しい禅宗様らしいカーブを描いています。屋根の尾根部分にあたる大棟には、足利氏の二つ引(ふたつひき)紋が燦然と輝いています。堂内は板敷きで密教寺院の様式になっています。大日如来への信仰と流行のデザインを両立させた素晴らしい建築です。
本堂の屋根裏は禅宗様の詰組
堀の内側の境内はとても広く、堂宇が点在しています。重要文化財の経堂(きょうどう)は、その巨大さが目立ちます。おそらく国内最大級でしょう。室町時代の再建で、足利氏が納経に非常に熱心だったことがうかがえます。
多宝塔の傍には樹齢600年の天然記念物・大銀杏があり、参拝者をなごませてくれます。境内は公園になっています。隣接する足利学校とあわせて、ゆっくり散策するのがおすすめです。
足利義兼の名は一般的に無名ですが、近年脚光を浴びる機会がありました。2008年にクリスティーズのオークションで、作風から運慶作と推定される大日如来像を、宗教法人真如苑が落札した際です。この大日如来像は義兼の発願で造立された可能性が高いと考えられています。
この大日如来像は義兼が創建した樺崎寺(かばさきじ)にあったもので、同じく作風から運慶作と推定される光得寺所蔵の大日如来像と瓜二つです。光得寺は明治の廃仏毀釈で廃寺となった樺崎寺の寺宝を受け継いでいます。両像は運慶&樺崎寺というキーワードで一致するため、義兼の存在が脚光を浴びることになったのです。
【東京国立博物館の画像】特集陳列「二体の大日如来像と運慶様の彫刻」
真如苑蔵の大日如来像は、真如苑所蔵美術品を公開する半蔵門ミュージアムで常設展示されています。歴史の縁とはとても奥深いものだと改めて実感させられます。
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
足利氏の始まりから現在に至る歴史を地元新聞社がたどる
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鑁阿寺(栃木県足利市)
【公式サイト】 http://www.ashikaga-bannaji.org/
※公開期間が限られている仏像や建物・美術品があります。
※境内は都市公園です。いつでも無料で拝観・見学できます。
※本堂と一切経堂室内の拝観は事前予約が必要です。
◆おすすめ交通機関◆
JR両毛線「足利」駅下車、北口から徒歩15分
東武伊勢崎線「足利市」駅下車、北口から徒歩15分
北関東道「足利」ICから車で15分
JR東京駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:2時間10分
東京駅→上野東京ライン常磐線→北千住駅→東武伊勢崎線特急りょうもう→足利市駅
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には無料の駐車場があります。
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