大阪・難波の山王美術館で「没後50年-藤田嗣治展」が行われています。山王美術館のコレクション全28点が登場しており、フジタらしさが味わえる質の高い作品が揃っています。
美術館のあるホテルモントレグラスミア大阪
山王美術館は、ホテルモントレグループのオーナー一族のコレクションを展示する施設で、ホテルモントレグラスミア大阪22Fの一角に展示室が設けられています。近代洋画・日本画・陶磁器を中心にルノワールのコレクションも充実しており、春夏と秋冬の年2回、コレクションを順次テーマに応じて公開しています。
両大戦間に花開いたエコール・ド・パリの画家、藤田嗣治(ふじたつぐはる、Foujita)は、1886(明治19)年誕生し、1968(昭和43)年に逝去しています。一昨年2016年は生誕130年、今年2018年は没後50年となり、各地で展覧会が相次いでいます。
フジタは多作の画家で、その作品は全国の美術館に所蔵されています。山王美術館のフジタ作品は初期から晩年まで幅広く、中でも晩年に多く描いた市井の子どもの絵は充実しています。
※ご紹介する作品の一部の画像は、展覧会の公式サイトに掲載されています。
「椅子に座る婦人像」は、フジタがパリで人気絶頂だった頃の、フジタらしさを代表する乳白色の肌が美しい作品です。
フジタの人物画のほとんどがそうであるように、無表情の顔がその時代を一生懸命生きている人間の意志の強さを表しています。首や胴・腕を長く描くことで、モデルの女性の神秘性を増しています。モデルは裸婦ではなく、中産階級の女性と思われます。普通の女性の存在感を巧みに表現した見応えのある作品です。
「家馬車の前のジプシー娘」は、戦後にフランスに帰化してから多く描いた市井の子どもの絵です。「家馬車」とは貧困層が住居代わりに使っていた老朽化した馬車です。フジタはカメラ好きで、絵画の構図の元となるデッサン代わりによく使用していました。この作品も写真を元に描いたと考えられています。
少女は無表情ですが、その眼には社会に対する強い反骨心がうかがえます。しかし胸の前で手を合わせ、どこかポーズをとっているようにも見えます。フジタがこの少女に敬意を表したように思えてなりません。
「ネコとチューリップ」は、「家馬車の前のジプシー娘」とほぼ同時期の作品で、晩年に好んだ花がモチーフです。しかしこの絵は花より猫が主役に見えます。
猫もフジタが好んだモチーフですが、多くがエコール・ド・パリ時代に自画像や裸婦と一緒に描いています。その頃は猫は脇役であるため、正面を向いていません。しかしこの作品は、まるで偉人の肖像画のようにセンターに堂々と鎮座し、正面を向いています。フジタが昔世話になった猫に敬意を表しているようです。
フジタの魅力をあらためて実感できる作品が、大阪・難波にたくさんあります。美術館は土日が休館ですが、ぜひお立ち寄りください。
7/31からは東京都美術館で、10/19からは京都国立近代美術館でも大規模な回顧展が行われます。あわせてお楽しみに。
こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。
会田誠がフジタの少女の絵を追いかける
山王美術館 春・夏季コレクション展2018「没後50年-藤田嗣治展」
https://www.hotelmonterey.co.jp/sannomuseum/exhibition.html
会期:2018年3月1日(木)~7月31日(火)
原則休館日:土曜・日曜日
※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。
おすすめ交通機関:大阪メトロ四つ橋線「なんば駅」下車、30番出口より徒歩3分、もしくはJR大和路線「JR難波駅」下車徒歩1分、ホテルモントレグラスミア大阪22Fへ
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:25分
JR大阪駅(西梅田駅)→メトロ四つ橋線→なんば駅
公式サイトのアクセス案内
※ホテルモントレグラスミア大阪の駐車場を利用可能
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