かまたさとるの今日のぶつくさ

1日の出来事や日常生活で感じることを「ちょっとだけ」ぶつくさとつぶやきます。

9月20日の代表質問①

2023年10月04日 | Weblog

9月20日に行なった代表質問の質問と答弁について以下に記載しましたが、文字数が多くてシステムの都合上一度に載せられませんので明日と2回に分けて掲載します。

本日は、1.TSMCに関する諸課題について 2.県民サービスを支える県職員の人員確保3.川辺川ダム事業について 4.水俣病問題についての4項の質問と答弁を記載していますので、お時間がある時にご一読ください。

 

T S M Cに関する諸課題について

(質問)かまたさとる

T S M Cの菊陽町進出に伴う半導体関連産業の集積による経済波及効果について、九州フィナンシャルグループが、今後10年間で約7兆円に上るという試算を出しました。このように県経済発展に対する県民の期待も大きいのですが、一方で、労働環境、渋滞対策、環境への影響などへの不安も大きくなっています。今回は、その不安な部分について数点お尋ねします。

まずは、県内地場中小企業への支援についてです。

T S M Cの社屋工事が大変早い工期で進められて、設備等の納期も厳しい日程で進められており、労働者の負担も大きくなっています。これまで労働事故が発生していないのか懸念します。

また、T S M Cや関連企業への人材流出が顕著になっていて、既存の県内地場中小企業における人材確保が困難な状況になってきています。最低賃金も10月8日には45円上がって898円となり、地場中小企業でも賃金引き上げが必要となりますが、賃上げを実行するための基礎体力が十分ではないところも多く、加えて現下の物価高という状況下での対応となり厳しさを増しています。そのため県内中小企業からは、国・県の支援を求める声が多く聞かれます。

そこで、私が昨年12月の一般質問で申し上げ、その際は商工労働部長の大変つれない答弁で国の業務改善助成金への上乗せはないとの回答でしたが、改めてこの厳しい状況下で、労働環境の改善や賃上げを行う県内中小企業に対しての県としての支援策を講じる考えはないのか、お尋ねします。

 

(答弁)知事

県では、社会保険労務士等の専門家の派遣や、働く人がいきいきと働き続けられるブライト企業をPRすることなどにより、労働環境の改善や処遇の向上を図る企業への支援を行っています。

また、国や県の補助事業を活用して生産性向上に取り組み、賃上げを実施する中小企業者を、更に力強く後押しするため、補助事業の自己負担を軽減する予算を、今定例会に提案しています。県としては、国の施策の動向を注視しながら、商工会、商工会議所などの商工団体と連携して、物価高騰の影響で厳しい経営環境におかれた中小企業者、小規模事業者の方々をしっかりと支えて参ります。

 

(質問)かまたさとる

T S M Cの操業に伴う地下水の枯渇と汚染への不安が広がっています。

T S M Cは半導体製造過程で地下水を1日約8千500トン採取する計画になっており、その採取量を超える地下水を涵養する考えを表明されています。阿蘇山の火山灰を土壌に含む白川中流域は、水の浸透量が他地域の5〜10倍とも言われていて地下水を蓄えて育む涵養を効率よく進めることができますが、T S M Cをはじめ数社が進出をしてきている状況で、白川中流域の水田での涵養が可能なのでしょうか。

現在、進出してくる企業に対して、これまで地下水採取量に対する涵養が採取量の10%だったものを採取量に見合う量の涵養を義務づける「地下水涵養の促進に関する指針」の見直しをされようとしていますが、T S M Cをはじめとして企業進出が多くなってきていて、実際に涵養をする水田を確保するのは困難ではないでしょうか。

そこで、お尋ねですが、「地下水涵養の促進に関する指針」の見直しは現実的に可能なのか、そして、実際、T S M Cは採取量の8千5百トンを超える涵養を行う水田を確保できているのか、お尋ねします。

 

(答弁)知事

熊本の宝である地下水に支えられた経済発展と地下水保全を両立するためには、現状の取水量とかん養量のバランスを維持する必要があります。具体的なかん養に向けて、5月16日にJAS M、県、菊陽町、水田湛水(たんすい)に取り組む2団体で協定を締結しました。

この協定に基づき、白川中流域におけるかん養期間の拡大や冬期湛水の実施、自川中流域以外での水田湛水の拡充など、農業者の方々と連携し、具体策の検討を進めています。

これらの取組みにより、本年度についてはJASMの取水量を上回る水田の湛水が実現できる見込みであります。

さらに、農地以外においても、雨水 (うすい) 浸透ますや雨庭(あめにわ)、浸透性の調整池の設置など、地下水のかん養量を確保して参ります。

 

(質問)かまたさとる

T S M Cが製品の洗浄に使用した工場排水は、工場で浄化された上で、菊陽町の下水道に流されて、下水管を通って熊本市北区にある県の施設の熊本北部浄化センターまで流されてくることになります。そこから、坪井川に流されることになりますが、その排水による汚染の検査は完全にできるのでしょうか。そして、T S M Cがどのような物質を流すのかも明らかにされていません。

北部浄化センターには1日平均約7万トンの下水が流入してきて、センターで浄化処理を行なっていますが、その際に、汚染濃度の環境検査を実施すると聞いていますが、安全性や安心性を担保する意味でもその検査の数値をぜひ公表していただきたいと思いますが、それはできないでしょうか。そして、万が一センターで有害物質が発見された場合、その流入水を止めることは可能なのでしょうか。もちろん、TSMCの工場から有害物質を排出させないことが重要ですが、流れてきた場合のチェックと対応が求められます。

あわせて、下水道法に基づく有害物質の調査は28品目となっていますが、知事は、議会開会日の議案説明の際に、県としてより多くの化学物質のモニタリング調査を行うと言われました。

そこで、質問ですが、T S M Cから排出される物質は明らかにできないのか、そして、北部浄化センターでの環境検査の数値の公表と、もしもの場合の対応はどうするのか、そして下水道法では対象外の化学物質の調査についてどのように実施するのかお尋ねします。

 

(答弁)知事

(答) 次に、TSMCの工場排水についてお答えします。

まず、工場排水に含まれる下水道法における対象物質については、関係法令に則って公表することは可能と考えています。

なお、これらの物質については、あらかじめ、公共下水道管理者である菊陽町が、下水道法に基づき、基準に適合していることを事前に確認しています。

次に水質検査の数値の公表について、熊本北部浄化センターでは、これまでも問合せに応じ、検査結果を提供してきました。今後は、更に積極的な公表の方法を検討して参ります。

また、有害物質が発見された場合については、各段階において県、菊陽町、企業が連携し、迅速かつ確実に対応します。

具体的に言うと、まず、工場からの排水の水質を菊陽町と企業がそれぞれ検査します。

併せて、その水が流入する熊本北部浄化センターにおいても、県が流入水の検査を行うことで、法令の基準が守られているかを監視します。

その上で、基準を超える有害物質が確認された場合は、菊陽町の命令により、企業は直ちに排水を停止し、原因となった施設を改善します。

さらに、下水道法の対象外の化学物質については、県では熊本北部浄化センターの放流水も環境モニタリングの対象としています。

モニタリングでは、規制外の18種類の金属類や有機フッ素化合物250種、そして1万種を超えるその他の化学物質等について、新たな工場が稼働する前後で変化がないか、客観的かつ科学的に環境の変化を把握していきます。

そして、その結果については、環境分野等の専門家で構成する委員会を設置し、委員の皆様に検証していただいた上で、県の適切な対応につなげて参ります。

このように、工場からの排水については、関係法令に基づく規制や確認・監視はもとより、あらゆる手法を用いながら、地域の環境保全と県民の皆様の不安解消に取り組んで参ります。

 

(質問)かまたさとる

県の環境影響評価条例施行規則の見直しについてお尋ねします。

今回県の環境アセス条例の規則を改正して、地下水保全地域のアセス対象の立地企業の面積を25haから50haに見直すことになっていますが、T S M C進出に伴い立地企業が増えてきて開発が進んでいく状況下で環境保全の取り組みはこれまで以上に重要になると考えますが、なぜ面積要件を緩和するのか疑問に思います。そこで、アセス条例の面積要件を緩和する理由について知事にお尋ねします。

 

(答弁)知事

今回の、施行規則の改正は、環境審議会の答申を踏まえ、地下水かん養指針の見直しに加えて、事業者による自主的な地下水かん養の取組みを促進するため行うものです。

今回の規則改正により、県の指定する地下水保全地域において、取水量を上回る更なるかん養に向けた取組みが進むことを期待しています。

県としては、こうした仕組みを活用しながら、引き続き、事業者による積極的な地下水かん養の取組みを促進して参ります。

 

 (質問)かまたさとる

県民サービスを支える県職員の人員確保について質問いたします。

TSMC関連の対応などで、県庁内の多くの部署で業務が増加したあるいは今後増加することは必至です。

例えば、新工場建物に伴う課税評価、地下水保全や地中への影響調査、これは建設工事の影響から工場稼働後は継続的な調査が必要になります。また、農振地域の土地利用、地域の農業や酪農を支える取り組み、渋滞解消にむけた道路整備や公共交通の利活用の検討。さらには、TSMCに勤務する従業員の家族などが工場周辺にお住まいになると思いますが、そういった新たに地域にお住まいになる外国籍の方々はもとより、受け入れる地域の方々も安心して生活できるように支える取り組み、教育関係の環境整備など県庁内の多くの部局にまたがる業務が想定されます。

県も部局横断的なプロジェクトチームを立ち上げて検討を進め、そこには担当する県職員を割り当てなければなりませんが、このTSMC関連業務にあたる職員の確保はできているのでしょうか。

年々熊本県庁の受験者数あるいは受験倍率が下がってきており、県職員の全体数が増えない中にあって、このビッグプロジェクトにしっかり対応できるのか心配しています。

県職員の受験者数の低下については、ここ数年議会でも取り上げられており、昨年9月議会において西県議からも質問されたところであります。例えば、大卒程度の採用試験について、事務系の受験倍率について、昨年は4.3倍でしたが、今年令和5年は3.3倍となり、技術系は昨年1.6倍だったものが今年1.1倍まで低下しております。

特に心配していたのは、総合土木職です。

昨年の西県議の質問を受けて、具体的な対策として、今年度から、試験実施時期を前倒しし、教養試験を民間企業で広く使われているSPIに変更した新たな試験枠(春季SPI枠)を設け、この試験の受験倍率は2.9倍となりました。一定の結果には結びついていると感じます。

しかしながら、受験者数の低下、欠員が生じている職種がある状況は変わりません。県民サービスの維持・向上のためには現場で実務を担う県職員は不可欠ですが、このような中で、TSMC関連をはじめとする県の重要な課題に余裕をもってあたれる人員体制が整っていると言えるのでしょうか。

また、今年度から公務員の定年年齢が2年に1歳ずつ引き上げられ2031年度、令和13年度に定年年齢が65歳になります。2年に1回定年退職者が出ない年が生じるわけですが、定年退職者が出ない年にあっても、新規職員の採用については、採用数を平準化し継続的に一定数の採用を行いたい、と議会の場でも総務部長が答弁されています。今年度末は定年退職者が出ない年となっておりますが、今年度の採用試験における新規採用予定者数は昨年並みに確保してありましたので、採用予定者数が満たされれば、年度によっては、一時的に増加するのではないかと思います。先ほど紹介したように受験者数が低下したり、あるいは欠員が生じている職種もあるなかで、この先の県職員の人員数の見通しについてどのような考えをお持ちなのでしょうか。

そこで質問ですが、TSMC関連業務などの新たな行政需要に適切に対応するため、今後の職員採用や職員数のあり方についてどのようにお考えか、総務部長にお尋ねします。

 

(答弁)総務部長

(答)TSMCの進出とそれを契機とする半導体関連産業の集積というビッグチャンスが到来していますが、これに伴う新たな行政需要に対応するためには、県職員の人員確保が必要と認識しております。

現在、「熊本県職員の定員管理の基本方針」に基づき、現行の定数を維持することとしておりまして、熊本地震や豪雨災害からの創造的復興を優先しつつ、災害関連業務の進捗状況等を踏まえ、TSMCの進出などに伴う新たな行政需要にも対応できる人員体制の確保に努めております。

具体的には、半導体関連産業の集積が急速に進む中で、周辺の道路ネットワークの整備や地下水の保全対策、立地企業との協議、土地利用調整などに対応するため、今年度から新たに、合計20人程度の職員を重点的に配置しております。

職員の採用につきましては、議員御指摘のとおり、受験年齢人口の減少や民間企業、国等との人材獲得競争の激化等を背景といたしまして、厳しい状況にございます。しかし、このような中でも、意欲ある人材を採用していくために、様々な取組みを進めております。

具体的には、対面による採用ガイダンスの実施やSNS等を活用した情報発信等の取組みに加えまして、今年度からは、民間企業や大学院などを志望する方も受験しやすくするため、SPI試験の導入や採用候補者名簿の登載期間の延伸などを進めております。

こうした取組みによりまして、近年特に人員確保の難しい総合土木職につきましても、採用予定者数の確保に手応えを感じているところでございます。

定年年齢の段階的な引上げに関しましては、60歳超の方々には、様々な場面で、これまで培ってこられました多くの経験ですとか、専門的な知識を発揮いただくことを期待しております。また、2年に一度の定年退職者が生じない年でございましても、計画的に新規採用を行って参ります。

引き続き、関係各部や人事委員会事務局と連携し、職員の採用を着実に進めるとともに、熊本地震や豪雨災害からの創造的復興を成し遂げる、それから、半導体関連産業の集積などに伴う新たな行政需要にも適切に対応できるよう、今後も必要な人員体制の確保にしっかりと取り組んで参ります。

 

川辺川ダム事業について

(質問)かまたさとる

川辺川ダム事業に関連して、2点質問をいたします。

 1点目は、環境影響評価、いわゆる環境アセスメントについてです。昨年の12月議会でもこの問題を取り上げましたが、引き続き申し上げます。

今回のダム計画に際して、知事が環境アセス法に基づいたアセスもしくはそれに準じたアセスの実施を要望されたことを受けて、国土交通大臣は「アセス法に基づいたものと同等の手続きを行う」と表明し、現在その手続きが進んでいます。しかしながら、現在実施されている環境アセスは、「法に基づくものと同等」とは到底言えないものです。

アセス手続きは、これまでアセス法で配慮書にあたる「配慮レポート」、方法書にあたる「方法レポート」が終了し、今後、環境影響評価結果の素案が「準備レポート」として示され、それに国民や知事の意見を反映し修正した「評価レポート」が発表されると、ダム事業に着手されることになります。

アセス法では、手続きの各段階において知事意見を聞くことが義務付けられています。川辺川ダムに関する今回のアセスでも、2022年6月、2023年4月に、それぞれ配慮レポート、方法レポートに対する知事意見が提出されています。前回も申し上げましたが、現在進められているアセスの大きな問題の1つは、住民の意見もこれら県知事意見も反映されることなく、手続きが進んでいる点です。

「配慮レポート」の中で国がダムによる球磨川流域への環境影響が球磨村渡地点までとしていた点について、知事は意見書で「渡地点より下流域への影響が考えられる場合は、調査・予測・評価の対象とすること」と要望されていますが、国はそれを反映せず、次の「方法レポート」の段階でも同様に環境影響評価対象地域を渡までとし、下流域は「必要であれば対象とする」との消極的表現に留まっています。

また、160ページを超える「配慮レポート」のうち、事業計画に関する記載はわずか半ページで、具体的な構造物については一切示されていませんでした。これに対しても知事は、「放流設備等の構造や完成イメージ図、試験湛水に係る湛水期間及び維持流量の検討の状況等が記載されていないため、方法レポート以降においては、ダムの実施設計の進捗に応じ、検討状況や結果等を可能な限り詳細に示すこと」と意見を述べられています。

ところがこれについても国は無視し、次の「方法レポート」においても極めて簡易な事業計画のみで構造については何も示しませんでした。

これら2点は、アセスの住民説明会においても参加者から指摘をされた点です。構造がわからなければダムが環境や生き物にどのような影響を与えるか知るためにどのような調査が必要なのかは分からないので、当然の指摘です。

その他の点も含め、「配慮レポート」に関する知事意見の一部は「方法レポート」に反映されることなく国から同内容が示されたため、知事は「方法レポート」に対しても再び同じ内容の意見を提出されています。重要な知事意見聴取に対しても「聞き置く」のみで反映させない現在のアセスは、「法に基づくものと同等」と言えるものでは到底なく、国にアセスやり直しを求めるべきと考えます。

流水型ダムは下部に穴があり、環境影響が比較的少ないと説明される場合がありますが、すでに完成した各地の事例を見ても、ダム完成後は上流下流の河川環境や生態系、水質や地形に甚大な影響が起きていることが指摘されています。

ダムが完成して大きな環境影響が起きた際に、県民に対し、知事はどのように説明され、どのような形で責任を取られるつもりでしょうか。

川辺川ダムができれば清流や生態系が失われるのではないかという懸念の声は、今なお、根強く寄せられています。県としてはこの県民の声に答えるべく、独自に流水型ダムの環境影響を検証し県民に説明を行うべきです。これらの環境影響評価に関する件について知事の考えをお尋ねします。

 

(答弁)知事

(答)まず、環境影響評価についてお答えします。

「流水型ダム」は、命のみならず清流をも守るものとなるよう、球磨川・川辺川の環境に極限まで配慮したものにする必要があります。

私は、この点を、流域の皆様に確認していただくため、客観的かつ科学的な環境への影響評価が必要であると判断し、「法に基づく環境アセスメント、あるいはそれと同等のもの」の実施を国に求めました。

そして、現在、法と同等の環境アセスメントが、適切に進められています。

御質間の「大きな環境影響が出た場合の県民への説明と責任の取り方」についてですが、知事の責任とは、流域の安全・安心を確保した上で、環境面への影響を極限まで最小化することと考えます。そして、その責任を果たすためには、議員御懸念のような大きな環境影響が生じないよう、私自身が国に求めて実現した環境アセスメントの手続きをとおして、適切な知事意見を国にしっかりと述べることが何よりも重要だと思います。

私は、これまでも、国から示された各レポートにおいて、最新の知見・技術や既存の流水型ダムの調査データなどを用いて、調査・予測・評価及び環境保全措置の検討を行うことなどを国に求めて参りました。

今後も環境アセスメントの手続きを通じて、市町村長、住民の皆様及び専門家の方々の御意見を踏まえた適切な知事意見を述べることで、知事としての責任を果たして参ります。

次に、「県独自の環境影響の検証」についてお答えします。

私は、事業主体である国が事業内容の検討と環境保全措置の検討を一体として行うことが重要と考えています。

現在、国は、これまでの知事意見を踏まえ、生物の移動経路の確保など様々な着眼点から環境への影響が最小となるようダムの模型実験を繰り返し行いながら慎重にダムの設計や運用方法を検討するとともに、専門家による委員会で議論を重ねています。

こうしたことから、県独自の環境影響の検証を行うことは考えておりません。

 

(質問)かまたさとる

次に、住民への説明責任についてお尋ねします。

球磨川豪雨災害とダムの必要性との関連については、これまでも流域住民や市民グループ等から多くの疑問が寄せられています。

流水型ダムの環境影響だけでなく、気候変動の影響を受けた記録的豪雨や線状降水帯の発生に対して、治水能力に限界のあるダムが本当に役に立つのか、支流からの氾濫の原因を国が「本流の水位上昇によるバックウォーターが原因」と早々に結論付けた不自然さ、人吉大橋に設置された水位計データの信ぴょう性、「緑の流域治水」と声高に謳いながらも実際には人吉球磨地域の森林保全対策が加速度的に進む県の施策が一切ないこと等、国と県に丁寧な説明を求める要望が度々出されています。

 これらの説明責任を果たす場の1つとして、県は昨年「新たな流水型ダムの事業の方向性・進捗を確認する仕組み」を設置しましたが、この会議メンバーは、12流域自治体首長と首長が選んだ住民代表各1名ずつと、各団体、専門家によって構成されており、住民参加とは到底かけ離れたものです。また、内容も協議や質問に答えるものではなく、出された意見が国の計画に反映される保証もなく、また第2回目以降の会合がいつ開催されるのかも不明です。本県には、川辺川ダム住民討論集会という全国に誇るべき、住民説明と対話の場を開催した経験があります。今回のダム計画に対しても、県が選ぶごく少数の住民や団体代表に対してではなく、県民に対し、広く参加を呼びかけ、透明性と中立性を担保した公開の場で、一方的な説明ではなく対話する手続きなしには、問題の早期解決と合意形成は実現しないと考えます。

そこで質問ですが、県は、「選ばれた委員」ではなく広く県民に開かれた場において、真の説明責任を果たして住民参加による丁寧な合意形成を図るべきと考えますが、その考えはないのか、知事にお尋ねします。

 

(答弁)知事

続いて、住民への説明責任についてお答えします。

令和2年7月豪雨災害を受けて、球磨川流域の治水の方向性を決断するに当たり、私は、ダム建設を巡る地域の「対立」を再び引き起こしてはならないと、心に誓いました。

この気持ちを第一に、流域の皆様の御意見や復興への思いに耳を傾け、対話を重ねて参りました。その中で、「命」と「環境」の両立こそが、全ての流域住民に共通する「心からの願い」であると受け止めました。

そして令和2年11月、「新たな流水型ダム」を含む「緑の流域治水」を進めていくことを表明し、議員御質間の「仕組み」の構築をお約束いたしました。

第1回目となる、この仕組みの会議は、昨年12月、人吉市で開催いたしました。この構成員は、国、県及び流域市町村、流域住民の方々、そして有識者としています。

中でも、流域住民の方々については、より多角的な見地から多様な意見をいただくため、「市町村別」と「分野別」に区分しました。

「市町村別」の構成員は、各市町村から推薦された、地域のために尽力されている方々です。第1回目の会議においても、地域の状況を踏まえた率直な御意見をいただき、その一つ一つに、国、県から回答を行いました。

「分野別』の構成員は、「自然保護」や「漁業」「観光」など、流域の河川環境の整備と保全に関連する各分野において活動している団体の方々です。なお、球磨川・川辺川において清流保持活動に取り組む市民団体は、第1回目は参加いただけませんでしたが、第2回目の開催に向けてお声掛けをして参ります。さらに、有識者は、構成員の理解を深めるため、専門的知見を踏まえた解説を行う役割を担うことから、球磨川の治水及び環境に精通した方々に委嘱いたしました。

また、この仕組みは、流水型ダムに関する情報を県民へ周知することも目的の一つであります。このため、会議は公開で開催し、同時ウェブ配信を行うとともに、熊本市、八代市及び人吉市の3カ所に傍聴会場を設けました。

さらに、会議後は議事録等を県のホームページで公開し、また、会議概要を新聞広告に掲載しました。

なお、現在、国において準備レポートの作成に向けて検討が進められており、その進捗状況を踏まえ、できる限り早く、次回の会議を開催したいと考えています。

今後も、この仕組みを通じて、流水型ダムについて、流域の市町村や住民の皆様と一体となって、事業の方向性や進捗をしっかりと確認して参ります。そして、広く県民の皆様に対して丁寧に周知し、説明責任を果たして参ります。

 

水俣病問題について

(質問)かまたさとる

水俣病問題について3点質問します。

6月27日に「水俣病の原点」である百間排水口が撤去されようとしているので現地の意見を聞いて欲しいとの声を受けて、私たち立憲民主連合は現地を視察して、被害者団体の皆さんから残して欲しいとの声をいただきました。水俣病の原因企業チッソが、1932年から68年まで有機水銀を含む工場排水を排出したのが、百間排水口で、水俣病発生の象徴的な場所です。チッソが建設し、現在、水俣市が管理していますが、6月中旬、市は突然「老朽化」を理由に、百間排水口の樋門の扉と足場を撤去することを発表。これに対して水俣の市民、患者、支援団体などから、百間排水口は水俣病の貴重な歴史的遺構であり、修繕して保存すべきとして、撤去工事の中止を求める声が次々とあがりました。

「水俣病胎児性小児性患者・家族・支援者の会」では6月28日に水俣市へ、30日には西県議立ち会いのもと熊本県へ要望書を提出されました。また、7月に発足した「水俣の歴史的遺構を残す会」ではオンライン署名を開始。署名は9月5日現在、1400筆を超えています。こうした動きを受けて、知事は、撤去については市民の十分な理解を得られていないとして、現場保存の可能性を含めて、県と市が協議していく考えを示されました。この対応について高く評価するところです。

そして、その後の協議で、何らかの形で現場保存することを前提に、老朽化した樋門の扉を取り外すことについて、患者団体や市民が了解し、8月下旬(8/26)に4枚の扉の取り外し作業が完了したとのことです。取り外した樋門の扉をどうするのかなどについては、県と水俣市は、団体側と協議を行っていくと伺っていますが、引き続き丁寧に関係者の皆さんへの理解を得ながら進めていただきたいと思います。

そこで質問ですが、現在のところ、県としては、取り外した扉の取り扱いを含めた百間排水口の現場保存や活用についてどのように考えているのでしょうか。また、今後は、水俣病の貴重な歴史的遺構である百間排水口について適切に保存管理し、国内はもちろん、世界に向けた水俣病の情報発信に活用していくべきと考えますがいかがでしょうか。

 

(答弁)知事

(答)まず、百間排水口についてお答えします。

先日、私は現地に赴さ、患者の方々から百間排水口に対する思いを直接お伺いするとともに、水俣病原点の地とされるその場所をこの目で見て参りました。これにより、水俣病の歴史と教訓を伝える取組みの重要性と、百間排水口の意義についても、再確認することができました。

改めて、団体等の意向も踏まえ、樋門の扉と足場の現場保存という方針を示すことができたことは、本当に良かったと思います。

現場保存の方法やその活用に関する今後の具体的な検討に当たっても、団体等の意向を丁寧に把握し、県が水俣市と連携しながら主体的に検討を進めて参ります。

また、水俣病を学ぶために来られた方々が最初に訪れる、この百間排水口を生かして、国内、そして、今もなお水銀拡散が続く世界に向け、更なる情報発信に努めて参ります。

 

(質問)かまたさとる

次に、補償協定の見直しについてお尋ねします。

水俣病公式確認から67年。水俣病の認定患者が原因企業チッソと結ぶ補償協定は、本年7月9日で締結から50年となりました。

水俣病認定患者に対しては、医療費や毎月の手当が支給され、症状が悪化した場合は補償を拡充する仕組みとなっていますが、補償のランク変更に伴う審査基準が不明です。補償協定は症状の重さによってA〜Cランクに分かれていて、一人当たり一時金1600万円〜1800万円や医療費などを受け取ります。補償協定には上位のランクに該当するような変化が生じた時は、ランク変更を申請できると明記してありますが、受け付ける委員会はランク変更の審査基準を公表していません。

ランク変更の判定は、国の公害等調整委員会か第三者機関の水俣病補償ランク付委員会が担います。認定患者の平均年齢は80.2歳。50年前は加齢による変化を考慮していませんでしたが、身体機能の明らかな衰えがあるならランクを引き上げるべきです。

また、補償協定は患者の医療費を負担することになっていますが、介護の分野では、一部重症患者への手当が支給されているものの、介護保険制度の各サービスについては、医療系のサービスを除き、支給されません。

補償協定には、「将来の健康と生活を補償することに最善の努力を払う」と明記してあり、「範囲外の事態が生起した場合は交渉する」という文言もあります。加害者のチッソが自発的に補償内容の拡充に取り組むのが本来の姿だと考えます。

そこで、質問ですが、認定患者の補償ランク変更や内容の拡充についてチッソに対して強く働きかけていただきたいと考えますが、知事の考えをお尋ねします。

 

(答弁)知事

次に、補償協定の見直しについてお答えします。

議員御指摘のとおり、水俣病患者補償ランク付けについては、国の「公害等調整委員会」

と、患者とチッソの補償協定に基づき設置した「水俣病患者補償ランク付委員会」の2つの機関で決定されます。そのため、県は、補償のランク変更や内容の拡充について、関与することができない仕組みになっています。

しかしながら、患者の方々の状況については、これまでも適宜、県とチッソで情報交換を行ってきており、その中で課題も含めた情報共有を図って参りたいと思います。

一方で、高齢化が進む胎児性・小児性患者の方々が将来にわたり安心して暮らしていただくため、入浴介助や通院の付添いなどの日常生活支援に県独自で取り組んでおります。

また、先日は5年ぶりに、私自らが患者の方々のもとを訪問し、日々の生活の困り事などを直接伺って参りました。特に、日常生活等を支援する地域生活支援事業の自己負担については、今回患者の方々と直接お会いしたことで、御要望いただいていた見直しの必要性をより強く実感いたしました。今後は、来年度からの患者負担軽減の実現に向けて、検討を進めて参ります。

これからも、患者の方々の安全・安心な暮らしの確保に向け、お一人お一人の気持ちに寄り添い、御希望を丁寧に汲み取りながら、取組みの充実に努めて参ります。

 

(質問)かまたさとる

次に、2009年施行の水俣病特別措置法で、「速やかな」実施が規定されながら、14年経過した現在も実施されていない不知火海沿岸の住民健康調査についてです。

環境省は6月30日に不知火海沿岸の住民健康調査の実現に向けた専門研究班を発足させました。研究期間は2025年度までの3年となっています。環境省は磁気で脳の活動を捉える脳磁計と磁気共鳴画像装置(MRI)を組み合わせた手法を健康調査に活用し、水俣病に特徴的な感覚障害の有無を調べる方針で、研究班はその手法の精度向上のほか、調査の対象地域、対象者などを検討するとしています。メンバーは公衆衛生や脳神経内科の専門家7人で公募に申請された方々です。

法施行後14年間、速やかに住民健康調査を実施するよう国に求めるべきと私は何度もこの議会で知事に求めてまいりましたが、調査手法の開発中という国の動きに沿った答弁に終始されています。これから開発された調査手法をどう活用するのかを研究班で3年かけて研究することとされており、いつになったら健康調査が実施されるのか、環境省の対応はあまりにも遅すぎます。

以前も申し上げましたが、そもそも開発を進めてきたM E GやM R Iを組み合わせた調査手法については、研究対象が認定患者となっており、被害がどれだけの地域や年代に拡がっているのかを調べる住民健康調査には全く馴染まないものだと考えます。

そこで質問ですが、県として環境省が進める住民健康調査について、その手法やスケジュールについてどのように考えているのか、知事にお尋ねします。

 

(答弁)知事

最後に、不知火海沿岸の住民健康調査についてお答えします。

健康調査については、平成16年の最高裁判決以降、国への要望や、いくつかの提案も行いました。結果として、特措法に「国が実施し、県はそれに協力する」「国が調査研究のための手法の開発を図る」と明記されました。

国は、今回開発した調査手法等を活用した健康調査のあり方について、現在、研究班を立ち上げ検討していますが、様々な意見を伺いながら進めていくと聞いています。また、環境大臣が「研究期間は『3年上限』だが、できるだけ早く検討を進めていきたい。」と国会で答弁されています。

県としても、引き続き、国に対しては、様々な機会を捉えて、スピード感をもって対応していただくよう要望して参ります。



 

 


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