::: テアトル十瑠 :::

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

グラディエーター

2005-06-06 | 時代劇・西部劇・歴史劇
(2000/リドリー・スコット監督/ラッセル・クロウ、ホアキン・フェニックス、コニー・ニールセン、オリヴァー・リード、リチャード・ハリス)


 西暦180年の古代ローマ帝国が舞台の作品。この時代の歴史に疎く、「ロード・オブ・ザ・リング」のような刀と弓矢の戦いのシーンが長く続くのも好きではないので今まで敬遠していたんだが、中古販売のビデオを買ってやっと観ました。
 CGを使っただろう古い時代の風景や、古代の建物、街並み等、それらしさが充分に味わえて、ストーリーも一人の男の復讐劇が軸となっているので分かり易く面白い作品だった。
 昔の特殊撮影と違って、今のCG画面は通常撮影部分との境界がわからない分、気楽に楽しめますな。
 見終わって、こういう今のCG技術を見せたら、ウィリアム・ワイラーヒッチコックなんかはどんな映像を創り出すだろうか、なんて思ってしまった。

 さて、映画の話。時の皇帝はマルクス・アウレリウス(ハリス)。彼にはコモデゥス(フェニックス)という不肖の息子がいたが、野心だけの人間で政治が任されないと、歴戦の強者でローマ帝国を愛するマキシマス将軍(クロウ)に次期政権を譲ろうとする。ところが、その事を察知したコモデゥスは実の父親の皇帝を暗殺、マキシマスも部下に殺すよう命じる。
 強い身体能力と機転によってマキシマスは難を逃れるのだが・・・。

 “グラディエーター(剣闘士)”というのは、当時の見せ物であった人間同士、時には人間対野獣の命を懸けた戦いに出させられる奴隷のこと。ポケモンでいえば、ピカチュウーなどのモンスターですな。
 将軍マキシマスは、この奴隷にまで身を落とすのだが、その後、彼のコモデゥス皇帝への復讐がどう進んで行くかがこの映画の見所。

▼(ネタバレ注意)
 処刑の危機を逃れたマキシマスは、故郷に残してきた妻子の元へ急ぐが、到着前に二人とも無惨に殺される。傷を負い、哀しみにくれたマキシマスは“グラディエーター”となり、その強靱な戦闘能力でメキメキと頭角を現す。
 コモデゥスは“第2のネロ”と呼ばれた暴君らしいのだが、アウレリウスが禁止していた“グラディエーター”の競技会を再開、やがてマキシマスはローマのコロセウムに姿を現し、コモデゥスとも相対することとなる。

 コモデゥスにはルッシラという姉がいて、弟は彼女に肉親以上の愛情をもっているように描かれている。この時代にはこのような近親相姦的な話も沢山あるようですな。この映画では、それは弟の一方的な想いのようで、例えば暗闇が怖いとか言っては添い寝を頼むという具合。ルッシラの亭主は一人息子を残して既に亡くなっているが、案外この弟が殺したのかもしれない。コモデゥスは姉の美貌に惹かれながらも、父の暗殺を悟られているのではないかという心配から、何かと疑いの目で見るようになっていて、それはルッシラにとっては、針のむしろの上で生活しているようなものだった。
 ルッシラとマキシマスとはかつては恋人同士でもあったようで、マキシマスが死んでないと分かってからは、更にコモデゥスの監視の目が厳しくなる。

 ルッシラを演じているのはデンマーク生まれのコニー・ニールセン。序盤ではヘラヘラとして悪女の雰囲気だったが、父親が亡くなってからは、危険な弟との生活に疲れて、緊張している様が見事に出ていました。彼女は賞には絡んでいないようですが、私はちょっと気になりましたな。ロビン・ウィリアムスの「ストーカー」に被害者として出ているようなので観たくなりました。
▲(解除)

 こういう歴史物には往々にして懐かしい俳優が出ているもので、アウレリウス皇帝にはリチャード・ハリス、“グラディエーター”の飼い主にはオリバー・リードが、そしてデヴィッド・ヘミングスも何役かは分からないが出ているらしい。

 ハリスはイギリスの山崎努みたいだと思っているんだが、近年は「ハリー・ポッターと秘密の部屋(2002)」での魔法学校の校長先生役が有名ですな。この校長先生の撮影終了後に病気になり亡くなったそうです。
 リードについては、映画を見ているときには彼だと分からなかった。「第三の男」などで有名なキャロル・リード監督の甥っ子で、TVで観た「吸血狼男(1960)」が強烈だった。その後マイケル・ウィナー監督の作品に数本出て、男らしい雰囲気が作品とマッチしていて、特に評論家筋には人気があったように記憶している。惜しいことにリードもこの作品の撮影中に亡くなったそうです。

 悪役コモデゥスを演じているのは、リヴァー・フェニックスの弟のホアキン。「サイン(2002)」ではメル・ギブソンの弟役でしたな。

 R・スコット監督は、この映画以外にも「テルマ&ルイーズ(1991)」「ブラックホーク・ダウン(2001)」で、アカデミー監督賞にノミネートされているが、受賞はまだない。最新作「キングダム・オブ・ヘブン(2005)」も12世紀が舞台の歴史劇とのこと。

 尚、「グラディエーター」は2000年度のアカデミー賞で、作品賞主演男優賞他5部門でオスカーを獲った。

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6 コメント

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五賢帝の頃は (十瑠)
2005-10-14 19:37:53
実子を後継者にするのは珍しかったようです。

この映画を見た後、少しだけ歴史関係のHPを見てみたらそんなことが書いてありました。

そこで、このコモデゥスが実父から引き継いだのはオカシイと考えた人が、この物語を作ったのではないか、なんてことも考えましたな。
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スペイン人 (kiyotayoki)
2005-10-14 08:37:51
TB&コメントありがとうございます。

ちょっと調べてみたら、マルクス・アウレリウス帝もローマ生まれのスペイン人だったんですってね。それもあって

スペイン人のマキシマスをこころよく思ってたのかしらんなんて思ってみたりして(マキシマスは架空の人物みたいですけど^^;)。
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いらっしゃいませ (十瑠)
2005-09-15 13:38:36
こちらからもTBいたしました。



「映画にKISS☆」にも、お邪魔しますね。
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こんにちわ (ぱーこ)
2005-09-15 11:54:55
こんにちわ(._.)はじめまして。TBさせてくださいね♪ グラディエーター大好きな映画です(・-・)ぱーこ
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泣きより (十瑠)
2005-06-07 11:58:24
怒りの方が湧いてくるんですよ、こういう映画は。悪人の悪行、極悪非道ぶりが許せんなあと。

だから、ラストはウルウルするんでしょうがね。

いい旦那さんですなあ。

私も「ブレイブ・ハート」面白かったです。泣いたかどうかは・・・覚えてない。
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男泣き系・・ (anupam)
2005-06-06 23:39:32
うちの相方が泣いた数少ない1本です。彼はこの映画と「ブレイブ・ハート」で泣きました。



確かにラスト近くはウルウルですが・・ラッセル・クロウが油っぽくてどうも好みではないので・・あまり感情が高ぶりませんでした。



でも、重厚な作りでアカデミーにはふさわしい作品だと思います。

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