(1962/監督:黒澤明/三船敏郎、仲代達矢、加山雄三、志村喬、藤原釜足、清水将夫、入江たか子、団令子、田中邦衛、江原達怡、平田昭彦、久保明、土屋嘉男、小林桂樹、伊藤雄之助/98分)
つくづく三船敏郎という役者は上手いなぁと思う。舞台俳優としてはどうか知らないが、とにかく映画俳優としては希有な存在であることは間違いない。あの存在感、自然な表情、台詞まわし、そして殺陣・・・。
貿易業、写真業を営む家庭に生まれ、カメラの心得も有ったために東宝の撮影班に応募したつもりが、東宝側の手違いで俳優の面接を受けることになり、その気もなかったので危うく不合格になりかけるも、黒澤明と彼の師匠であり面接の審査委員長でもあった山本嘉次郎監督の目に止まり、補欠で東宝第一期ニューフェイスに採用されたとのこと。その後の活躍、「世界のミフネ」とまで呼ばれるようになったことは皆様ご存じの通りです。
2008年に織田裕二でリメイクされたが、演技スタイルの全然違う三十郎はいかがな出来なんでしょうか?
上役の汚職を見つけた若侍9人が、こともあろうに汚職の黒幕である大目付に相談、言葉巧みに一網打尽にされそうな所を、旅の浪人に救われ、その後も浪人の智恵と武力に助けられて無事に悪者をやっつけるという話。
浪人の名前は彼自身が「椿三十郎」と名乗るが、それがホントの名前かどうかは疑わしいという描き方。前年の「用心棒」が評判がよくて、柳の下のドジョウを狙ったらしく、「用心棒」の主人公桑畑三十郎にちなんだ名前にしたらしいです。
静かな森の中の夜の社殿、若侍の中で城代家老の親戚筋に当たる井坂伊織(加山)が他の仲間に、意見書提出の顛末を語るのがファーストシーンで、その後一部始終を社殿の奥で聞いていた素浪人が現れ、若者達に意見を始める。相手にしなかった城代家老(伊藤)を若者達は頼りないと判断したが、むしろ彼らの意見を取り上げようとした大目付(清水)の方こそ眉唾ものだと言う。浪人の言う通り、いつの間にか社殿の周りは大目付配下の手勢に取り囲まれており、一同はいざ決戦と刀を抜き始めるが多勢に無勢、浪人の機転で難を逃れることになる。
なんというか、映画作りの定石から外れたような小さな前振りから急転直下の本筋へという筋書きで、思わず私はロバート・ロッセンの「ハスラー」を思い出しました。
町人などがサッパリ出てこないので時代劇の雰囲気作りが少し弱い気もするが、二転三転する展開と、語られた予測と実行の進展を見守るという定石サスペンスの段取りが上手く、血気にはやる若者を茶化す三十郎やら、とぼけた味の城代家老の妻などユーモアも散りばめられていて、終始飽きない娯楽時代劇になっています。
山本周五郎の『日々平安』が原作とのこと。なにしろ菊島隆三、小国英雄、黒澤明による脚本がイイです。
大目付の懐刀、室戸半兵衛に仲代達矢。ラストの三十郎と半兵衛の果たし合いが有名なシーンで、居合い抜きでやられた半兵衛の腹部から大量の血しぶきが飛び出すのが凄い! 後々の語り種となりました。
この映画が公開された頃はまだ小学生で、実は今回が初見なのですが、若侍チームに若大将(加山)やら青大将(田中)、若大将の妹の彼氏(江原)が居たりして、更には怪獣モノの常連(平田、土屋)が出てきたりと、東宝のお馴染みの役者さんが沢山出ているのが嬉しかったです。
入江たか子は家老の妻で、団令子はその娘。
小林桂樹は若侍チームに掴まる大目付の家来の一人。悪気の無いとぼけた役で、原作『日々平安』の主人公のイメージに近いとのことでした。
ちょっと気になった事。
昔よく観ていたテレビ時代劇の後期には、人を切った後に刀を紙、或いは布で拭うのが常識のように描かれていましたが、三十郎さんはそういうことをしていませんでした。血糊が付いた刀をすぐに鞘に収めるのはやはり汚いし、切れなくなりそうですけど、実際はどうだったんでしょうねぇ?
つくづく三船敏郎という役者は上手いなぁと思う。舞台俳優としてはどうか知らないが、とにかく映画俳優としては希有な存在であることは間違いない。あの存在感、自然な表情、台詞まわし、そして殺陣・・・。
貿易業、写真業を営む家庭に生まれ、カメラの心得も有ったために東宝の撮影班に応募したつもりが、東宝側の手違いで俳優の面接を受けることになり、その気もなかったので危うく不合格になりかけるも、黒澤明と彼の師匠であり面接の審査委員長でもあった山本嘉次郎監督の目に止まり、補欠で東宝第一期ニューフェイスに採用されたとのこと。その後の活躍、「世界のミフネ」とまで呼ばれるようになったことは皆様ご存じの通りです。
2008年に織田裕二でリメイクされたが、演技スタイルの全然違う三十郎はいかがな出来なんでしょうか?
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浪人の名前は彼自身が「椿三十郎」と名乗るが、それがホントの名前かどうかは疑わしいという描き方。前年の「用心棒」が評判がよくて、柳の下のドジョウを狙ったらしく、「用心棒」の主人公桑畑三十郎にちなんだ名前にしたらしいです。
静かな森の中の夜の社殿、若侍の中で城代家老の親戚筋に当たる井坂伊織(加山)が他の仲間に、意見書提出の顛末を語るのがファーストシーンで、その後一部始終を社殿の奥で聞いていた素浪人が現れ、若者達に意見を始める。相手にしなかった城代家老(伊藤)を若者達は頼りないと判断したが、むしろ彼らの意見を取り上げようとした大目付(清水)の方こそ眉唾ものだと言う。浪人の言う通り、いつの間にか社殿の周りは大目付配下の手勢に取り囲まれており、一同はいざ決戦と刀を抜き始めるが多勢に無勢、浪人の機転で難を逃れることになる。
なんというか、映画作りの定石から外れたような小さな前振りから急転直下の本筋へという筋書きで、思わず私はロバート・ロッセンの「ハスラー」を思い出しました。
町人などがサッパリ出てこないので時代劇の雰囲気作りが少し弱い気もするが、二転三転する展開と、語られた予測と実行の進展を見守るという定石サスペンスの段取りが上手く、血気にはやる若者を茶化す三十郎やら、とぼけた味の城代家老の妻などユーモアも散りばめられていて、終始飽きない娯楽時代劇になっています。
山本周五郎の『日々平安』が原作とのこと。なにしろ菊島隆三、小国英雄、黒澤明による脚本がイイです。
大目付の懐刀、室戸半兵衛に仲代達矢。ラストの三十郎と半兵衛の果たし合いが有名なシーンで、居合い抜きでやられた半兵衛の腹部から大量の血しぶきが飛び出すのが凄い! 後々の語り種となりました。
この映画が公開された頃はまだ小学生で、実は今回が初見なのですが、若侍チームに若大将(加山)やら青大将(田中)、若大将の妹の彼氏(江原)が居たりして、更には怪獣モノの常連(平田、土屋)が出てきたりと、東宝のお馴染みの役者さんが沢山出ているのが嬉しかったです。
入江たか子は家老の妻で、団令子はその娘。
小林桂樹は若侍チームに掴まる大目付の家来の一人。悪気の無いとぼけた役で、原作『日々平安』の主人公のイメージに近いとのことでした。
ちょっと気になった事。
昔よく観ていたテレビ時代劇の後期には、人を切った後に刀を紙、或いは布で拭うのが常識のように描かれていましたが、三十郎さんはそういうことをしていませんでした。血糊が付いた刀をすぐに鞘に収めるのはやはり汚いし、切れなくなりそうですけど、実際はどうだったんでしょうねぇ?
・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 
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「椿三十郎」いいですよね。黒沢作品の時代劇のなかで一番好きです。
浪人の普段のとぼけた感じと、殺陣の緊張感とのギャップがいい!
本名を名乗れないのも何か事情があっての事なのかと、想像力を刺激されます。
>血糊が付いた刀をすぐに鞘に収めるのはやはり汚いし、切れなくなりそうですけど、実際はどうだったんでしょうねぇ?
確かに、そんなことしたらもう使い物にならないですよね。わかっていてそうしたのだとしたら、もう刀はいらないって事なんでしょうか?
ただ単に、買い換えるつもりかも知れませんが(笑)、ちょっと意味深ですね。
そうですねぇ。
若者達に加勢するというのも、『見ちゃぁいられねぇ』という以外、理由が語られないのも気になりましたよね。
刀の件ですが、確かに昔の時代劇は切った後の始末については無頓着でした。血を拭うようになったのは、この映画の大分後からだと思います。
斬り合いで血しぶきが飛ぶというリアリズムを表現しながら、血糊については無視していたというのがおかしいですね。
十分面白いのですが、映像がダイナミックな「用心棒」と比較すると、ちょっと小粒で見劣りするというのが僕の印象。
>リメイク
物語自体は脚本をいじっていない(最後は見せ方が違いますが)のでつまらないわけはないのですが、やはり半世紀前の役者と今の役者の差を全ての面で感じますね。
今の役者は現代劇なら何とか格好になりますが、時代劇は本当に下手です。役者で面白くなっていた部分が相当にあると痛感しましたよ。
それに、三船氏の殺陣は人間離れしています・・・
いつでもレンタルで観れるんですけどね。^^
強烈な個性の三船さんですが、同じ時代劇でも「隠し砦」とは別人のような性格の侍を演じ分けているし、見応えありますよね。
オカピーさんもダイナミックさでは「用心棒」に劣ると言われてますから、如何に面白いか、想像に難くないです。
こりゃあ、レンタルでも観なければ。