(1972/スティーヴン・スピルバーグ監督/デニス・ウィーヴァー、ジャクリーン・スコット/90分)
思い出の映画から。
スピルバーグの映画デビュー作「激突!」。実は、TVムービー用に作ったのに、放送したらあまりに評判が良かった為に、劇場用に編集し直して発表された映画だ。だから、本当のスピルバーグの劇場映画デビュー作は、翌年の「続・激突!/カージャック(1973)」になる。
リチャード・マシスンが自身の小説をシナリオ化したモノ。封切時に劇場でこれを観て、いっぺんにスピルバーグのファンになりましたな。今もって、スピルバーグの代表作は、コレと「ジョーズ(1975)」と「ジュラシック・パーク(1993)」、そして“インディ・ジョーンズ”「レイダース/失われたアーク(1981)」だと思っています。
原題は【DUEL】。子ども達が遊んでいる、「デュエルモンスター」とかいうカード・ゲームと同じデュエルですな。決闘。闘いです。
封切り前の雑誌の紹介で、乗用車がハイウェイでタンクローリーを追い越したことから始まるトラブルを描いている話という事で、そんなもので面白い映画が出来るんかいなと思っていたら、これが面白いんですな。巧みな話術とでもいいましょうか、何気ない発端から徐々に異様な世界になっていく過程が破綻なく描かれておりました。
デニス・ウィーバー扮する主人公はセールスマン。商用で遠方へ車で出かける。「バニシング・ポイント(1971)」でコワルスキーが、「テルマ&ルイーズ(1991)」で女性二人が明日無き未来へ向かって走っていた、あの赤茶けた土の広がる大地の中にのびているハイウェイです。
途中の公衆電話から奥さんに電話したり、ドライブ中はラジオのアナウンサーに一人でつっこみを入れたりと、通常の世界から始まる。
と、前方に大きなタンクローリーが出てくる。ゆっくりしたスピードだったのでウィーバーは軽い気持ちで追い越す。そうして暫く走っていると突然横を大きな車が猛スピードで追い越していく。ビックリしたウィーバーが見た“ソレ”は、なんとさっきのタンクローリーだ。『何なんだ・・・?』
この辺までは大したことはない。ところが、また暫く走っていると再びタンクローリーにでくわす。さっきは猛スピードで追い越したくせに、またトロトロと走っている。排気ガスも気になる。ウィーバーはクラクションを鳴らす。『さっさと行けよぅ』。すると、タンクローリーのドライバーが運転席のある窓から太い腕を出して、<先に行け!>とばかりに合図を出す。『なんだ。物わかりがいいじゃないか。』
でかい40tのタンクローリーをするすると追い越すウィーバー。ハッ! なんだぁ! 目の前に対向車が来るではないか。急ハンドルで難を逃れたウィーバー。彼は、ここにきて初めてタンクローリーのドライバーの異常さを認識するのだった・・・。
と、こんな具合に始まるんですな。皆さんとっくにご存じでしょうが。
出演者はほとんど、デニス・ウィーバーのみ。タンクローリーの運転手も顔は出てこない。運転席からはみ出した腕や、ガソリンスタンドでブーツを履いた脚元やらは出て来るんだが肝心の顔は出てこない。だから、ウィーバーが戦っているのはタンクのドライバーのはずなのに、いつの間にやら40tのタンクローリーを相手にしている気分になる。
▼(ネタバレ注意)
ドライブインに入り、トイレを済ませて食堂に戻ると、さっきのタンクローリーが止まっていることに気付く。数人の男達が食事をしているが、この中に件のドライバーが居るはずだ。彼奴か?それともコイツか? 目星をつけた男に『いい加減にやめてくれ!』と文句を言っていると、ブルンブルンとエンジン音を響かせてタンクが出ていく。
信号で貨物列車待ちをしていると後ろから押してきたり、公衆電話で助けを求めようとするとボックスごと押しつぶそうとする。段々と、殺意見え見えの異常な行動をとる40tタンク。便利な携帯電話もない時代だし、だだっ広くて何もないから、隠れることも出来ないし、助けも求められない。
エンジントラブルで路肩に止まっているスクールバスのシーンも面白かった。トンネルを抜けて、すぐの場所だ。
バスの運転手に手を貸そうとするウィーバーは、トンネル内に止まっているタンクを見つける。ジッとコチラを窺っている感じ。危険だからと子ども達にバスの中に戻るように言うウィーバー。それまでの経緯を知らないから、子ども達もバスの運転手も必死になるウィーバーを怪訝に思う。
エンジンをかけて近づくタンク。大慌てで車を発進するウィーバー。追ってくる気配がないので車を止めて振り返ると、タンクローリーはバスを押して(又は引いて)いた。この辺は、ヒチコックの異常者の描き方の影響を感じましたね。
ラスト。まるで、ゴジラの咆吼のような、断末魔の悲鳴のようなモノを発しながら崖から落ちていくタンクローリー。やったーっ!と飛び跳ねるウィーバーの姿は、恐竜との闘いに勝った原始人の姿を思い起こすと誰かが書いていました。
▲(解除)
何気ない日常に潜む異常な世界の扉を覗いてしまった感じの映画でした。タンクの運転手の精神状態を勝手に想像してもいいし、そんなの抜きにしてもサスペンスとして大いに楽しめる作品です。
デニス・ウィーバーはTVの「マックロード警部」では主役をやっていました。これは個人的にはTVをあんまり見てない時期だったので、少ししか覚えてません。
思い出の映画から。
スピルバーグの映画デビュー作「激突!」。実は、TVムービー用に作ったのに、放送したらあまりに評判が良かった為に、劇場用に編集し直して発表された映画だ。だから、本当のスピルバーグの劇場映画デビュー作は、翌年の「続・激突!/カージャック(1973)」になる。
リチャード・マシスンが自身の小説をシナリオ化したモノ。封切時に劇場でこれを観て、いっぺんにスピルバーグのファンになりましたな。今もって、スピルバーグの代表作は、コレと「ジョーズ(1975)」と「ジュラシック・パーク(1993)」、そして“インディ・ジョーンズ”「レイダース/失われたアーク(1981)」だと思っています。
原題は【DUEL】。子ども達が遊んでいる、「デュエルモンスター」とかいうカード・ゲームと同じデュエルですな。決闘。闘いです。
封切り前の雑誌の紹介で、乗用車がハイウェイでタンクローリーを追い越したことから始まるトラブルを描いている話という事で、そんなもので面白い映画が出来るんかいなと思っていたら、これが面白いんですな。巧みな話術とでもいいましょうか、何気ない発端から徐々に異様な世界になっていく過程が破綻なく描かれておりました。
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途中の公衆電話から奥さんに電話したり、ドライブ中はラジオのアナウンサーに一人でつっこみを入れたりと、通常の世界から始まる。
と、前方に大きなタンクローリーが出てくる。ゆっくりしたスピードだったのでウィーバーは軽い気持ちで追い越す。そうして暫く走っていると突然横を大きな車が猛スピードで追い越していく。ビックリしたウィーバーが見た“ソレ”は、なんとさっきのタンクローリーだ。『何なんだ・・・?』
この辺までは大したことはない。ところが、また暫く走っていると再びタンクローリーにでくわす。さっきは猛スピードで追い越したくせに、またトロトロと走っている。排気ガスも気になる。ウィーバーはクラクションを鳴らす。『さっさと行けよぅ』。すると、タンクローリーのドライバーが運転席のある窓から太い腕を出して、<先に行け!>とばかりに合図を出す。『なんだ。物わかりがいいじゃないか。』
でかい40tのタンクローリーをするすると追い越すウィーバー。ハッ! なんだぁ! 目の前に対向車が来るではないか。急ハンドルで難を逃れたウィーバー。彼は、ここにきて初めてタンクローリーのドライバーの異常さを認識するのだった・・・。
と、こんな具合に始まるんですな。皆さんとっくにご存じでしょうが。
出演者はほとんど、デニス・ウィーバーのみ。タンクローリーの運転手も顔は出てこない。運転席からはみ出した腕や、ガソリンスタンドでブーツを履いた脚元やらは出て来るんだが肝心の顔は出てこない。だから、ウィーバーが戦っているのはタンクのドライバーのはずなのに、いつの間にやら40tのタンクローリーを相手にしている気分になる。
▼(ネタバレ注意)
ドライブインに入り、トイレを済ませて食堂に戻ると、さっきのタンクローリーが止まっていることに気付く。数人の男達が食事をしているが、この中に件のドライバーが居るはずだ。彼奴か?それともコイツか? 目星をつけた男に『いい加減にやめてくれ!』と文句を言っていると、ブルンブルンとエンジン音を響かせてタンクが出ていく。
信号で貨物列車待ちをしていると後ろから押してきたり、公衆電話で助けを求めようとするとボックスごと押しつぶそうとする。段々と、殺意見え見えの異常な行動をとる40tタンク。便利な携帯電話もない時代だし、だだっ広くて何もないから、隠れることも出来ないし、助けも求められない。
エンジントラブルで路肩に止まっているスクールバスのシーンも面白かった。トンネルを抜けて、すぐの場所だ。
バスの運転手に手を貸そうとするウィーバーは、トンネル内に止まっているタンクを見つける。ジッとコチラを窺っている感じ。危険だからと子ども達にバスの中に戻るように言うウィーバー。それまでの経緯を知らないから、子ども達もバスの運転手も必死になるウィーバーを怪訝に思う。
エンジンをかけて近づくタンク。大慌てで車を発進するウィーバー。追ってくる気配がないので車を止めて振り返ると、タンクローリーはバスを押して(又は引いて)いた。この辺は、ヒチコックの異常者の描き方の影響を感じましたね。
ラスト。まるで、ゴジラの咆吼のような、断末魔の悲鳴のようなモノを発しながら崖から落ちていくタンクローリー。やったーっ!と飛び跳ねるウィーバーの姿は、恐竜との闘いに勝った原始人の姿を思い起こすと誰かが書いていました。
▲(解除)
何気ない日常に潜む異常な世界の扉を覗いてしまった感じの映画でした。タンクの運転手の精神状態を勝手に想像してもいいし、そんなの抜きにしてもサスペンスとして大いに楽しめる作品です。
デニス・ウィーバーはTVの「マックロード警部」では主役をやっていました。これは個人的にはTVをあんまり見てない時期だったので、少ししか覚えてません。
・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】 
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何かね~~全然面白そうじゃありませんでした。同じ理由でジョン・ボイドの「脱出」とかも大コケ祭り・・でしたね。
もうちょっと魅力がわかるようにしてくれないとね~~こんなに面白いんだから!
「激流」を観た時にコレを思い出しましたな。
前のトラックがノロいので追い越そうとしたんですが、その胴体の長いこと長いこと!追い越すのに時間がかかって危うく対向車に正面衝突するところでした(^^;)。あれは怖かったデス。
その体験後、この映画を久しぶりに見た時は怖かったですよぉ~、初回以上に(^_^;)。
うわぁー、長いタンクローリーだなぁって感じさせるシーンが。
勿論私もある程度は気付いていたのですが、あそこまで明解に言われると「やっぱりねえ」ということになりまして、それを広げていって、タイプスリップ論になりました。
この作以来スピルバーグの話術は衰えを知りません。最近彼についてとみに色々と言われていますが、内容はともかく、話術の上手さはそう簡単に変わりませんって。それを言っているのは私と、viva jijiさんくらいかな。「ターミナル」の話術も絶妙でした。
viva jijiさんが今でもスピルバーグを観るのはこの作品があるからですと。
これに比べれば「ジョーズ」は着想が平凡すぎます。
「ジョーズ」はあの原作からパニックに絞った筋書きにして、更に水面スレスレのカメラという着想が驚きでした。J・ウィリアムスの音楽も素晴らしい!私には甲乙つけがたい。
トンネルの向こうからやってきて、ヘッドライトがピカッとつくシーンも怖かったです。
これを撮ったのが劇場映画デビュー前だなんて驚き!
インディ・ジョーンズみたいなのは盗掘っぽくて好きになれないんですが、それ以外は私もスピルバーグは十瑠さんの挙げている作品が好きですね~。
何気に続編も好きだったので、確認もかねて、そのうち再見したいです。
>トンネルの向こうからやってきて、ヘッドライトがピカッとつくシーンも怖かったです。
この映画の優秀シーンの一つでしょうね。
>何気に続編も好きだったので・・・
ゴールディ・ホーンを最初に観た映画でしたかねぇ。
封切りで観た後、TV放送でも一回観た気がしますが、僕も再見したいっス