(2014/ベネット・ミラー監督・共同製作/スティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ、シエナ・ミラー、ヴァネッサ・レッドグレーヴ/135分)
「カポーティ」、「マネーボール」が面白かったベネット・ミラー監督の3作目。全二作と同じくコレも実話を元にしているんだそうです。
但し、殺人事件になってしまうという結末はその通りですが、物事の時系列とか人物像とかがかなり違っているようで、その辺はフィクションとして考えた方が良いようです。
オリンピック金メダリストのレスリング選手をデュポン財閥の御曹司が射殺した事件であります。
3年前のロス五輪で男子レスリングの金メダリストとなったマーク・シュルツ(テイタム)、27歳。
日本と同じくアメリカでもマイナースポーツであるレスリングの選手は、たとえゴールドメダリストであっても倹しい生活を強いられていて、同じく金メダリストの兄デイヴ(ラファロ)の代わりに小学校で講演を行っても謝礼の講演料は20ドルにしかならなかった。一人暮らしのアパートに帰っても黙々とインスタントのヌードルをかきこむ寂しい毎日。
一方の兄デイヴはコーチとしての人望も有り、レスリング協会からコーチ先の紹介もされていて、家には妻と二人の可愛い子供達がいた。
マークが2歳の時に両親は離婚。兄のデイヴを頼りながら生きてきたマークだった。
そんなマークに一本の電話が入る。
ジョン・E・デュポン(カレル)の代理人だと名乗る男はデュポン氏が会いたがっていると言う。
向こう持ちの旅客機のチケットはファーストクラス、空港からは自家用ヘリでの旅だった。降り立った先はヘリの中からも見えた広大な敷地に建つ豪邸。デュポンとは何者だ?
ジョン・E・デュポンは建国以来の名家、デュポン財閥の資産相続人であり、ジョンの申し出はマークのパトロンになるというものだった。
自身も学生時代にレスリングをかじったジョンは、レスリングがマイナーであることに不満を持っており、マークやその他の選手たちの支援を行いたいと思っていたのだ。敷地の中に練習施設を建て、マークには住居も与えた。それは一人暮らしにはもったいない様な家だった。しかも2万ドルを超える年俸まで与えるというのである。
マークにとっては正に僥倖だった。数か月後に控える世界選手権、その後のソウルオリンピック。そこで金メダルを獲ることが彼には求められていた・・・。
ジョンについては、<強迫観念症的な統合失調症>というのが公判中に示された精神科医の見立てらしいですが、映画はその辺の病気には触れておらず、理由ははっきりしなくても何らかの動機があったと思わせるような描き方でした。
ジョンは母親が嫌いなんですね。だけど認められたい気持ちもある。
母親は馬が好きで、レスリングは下品なスポーツだと思っている。馬の競技会でのトロフィーも沢山飾ってあるが、ジョンは馬以外のトロフィーやメダルをそれ以上に得たいと思っていたんでしょう。
世界選手権でマークが獲得した金メダルを、まるで自分のコレクションが増えたかのように飾ろうとしているシーンが気持ち悪いです。
このメダル獲得後の祝賀会で浮かれた様子をみせたジョンが、翌日自分に馴れ馴れしい態度をとったマーク以外の選手たちが気に障ったのか、練習場でいきなり天井に向けて拳銃を発砲するシーンもギョッとさせられました。
穏やかな態度を示しながらも、他人には絶対服従を求める気持ちを抑えることが出来ない、そんな男だったんでしょう。
スティーヴ・カレルが付け鼻をして表情の乏しい不気味なジョンを演じていましたが、「フォックスキャッチャー事件の裏側 (2016)」というドキュメンタリーではジョン本人の映像が沢山見られて、普段のジョンは親しみやすい笑顔の紳士でありました。
ロングショットを効果的に挿入した演出は人間をじっと観察するような雰囲気にさせ、それは「カポーティ」にも見られたものでした。BGMが殆ど無いのも似ています。
省略した語り口は行間を読むことを強いますが、「カポーティ」以上に特殊な登場人物なので二回以上観る事をお勧めします。僕自身が『1回目は人間の描き方が表層的でつまらなく感じた』などとツイッターに呟いておりますのでネ。
2014年のアカデミー賞で、主演男優賞(カレル)、助演男優賞(ラファロ)、監督賞、脚本賞(ダン・ファターマン、E・マックス・フライ)などにノミネート。
カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールにノミネート、ベネット・ミラーが監督賞を受賞したそうです。
「カポーティ」、「マネーボール」が面白かったベネット・ミラー監督の3作目。全二作と同じくコレも実話を元にしているんだそうです。
但し、殺人事件になってしまうという結末はその通りですが、物事の時系列とか人物像とかがかなり違っているようで、その辺はフィクションとして考えた方が良いようです。
オリンピック金メダリストのレスリング選手をデュポン財閥の御曹司が射殺した事件であります。
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日本と同じくアメリカでもマイナースポーツであるレスリングの選手は、たとえゴールドメダリストであっても倹しい生活を強いられていて、同じく金メダリストの兄デイヴ(ラファロ)の代わりに小学校で講演を行っても謝礼の講演料は20ドルにしかならなかった。一人暮らしのアパートに帰っても黙々とインスタントのヌードルをかきこむ寂しい毎日。
一方の兄デイヴはコーチとしての人望も有り、レスリング協会からコーチ先の紹介もされていて、家には妻と二人の可愛い子供達がいた。
マークが2歳の時に両親は離婚。兄のデイヴを頼りながら生きてきたマークだった。
そんなマークに一本の電話が入る。
ジョン・E・デュポン(カレル)の代理人だと名乗る男はデュポン氏が会いたがっていると言う。
向こう持ちの旅客機のチケットはファーストクラス、空港からは自家用ヘリでの旅だった。降り立った先はヘリの中からも見えた広大な敷地に建つ豪邸。デュポンとは何者だ?
ジョン・E・デュポンは建国以来の名家、デュポン財閥の資産相続人であり、ジョンの申し出はマークのパトロンになるというものだった。
自身も学生時代にレスリングをかじったジョンは、レスリングがマイナーであることに不満を持っており、マークやその他の選手たちの支援を行いたいと思っていたのだ。敷地の中に練習施設を建て、マークには住居も与えた。それは一人暮らしにはもったいない様な家だった。しかも2万ドルを超える年俸まで与えるというのである。
マークにとっては正に僥倖だった。数か月後に控える世界選手権、その後のソウルオリンピック。そこで金メダルを獲ることが彼には求められていた・・・。
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ジョンについては、<強迫観念症的な統合失調症>というのが公判中に示された精神科医の見立てらしいですが、映画はその辺の病気には触れておらず、理由ははっきりしなくても何らかの動機があったと思わせるような描き方でした。
ジョンは母親が嫌いなんですね。だけど認められたい気持ちもある。
母親は馬が好きで、レスリングは下品なスポーツだと思っている。馬の競技会でのトロフィーも沢山飾ってあるが、ジョンは馬以外のトロフィーやメダルをそれ以上に得たいと思っていたんでしょう。
世界選手権でマークが獲得した金メダルを、まるで自分のコレクションが増えたかのように飾ろうとしているシーンが気持ち悪いです。
このメダル獲得後の祝賀会で浮かれた様子をみせたジョンが、翌日自分に馴れ馴れしい態度をとったマーク以外の選手たちが気に障ったのか、練習場でいきなり天井に向けて拳銃を発砲するシーンもギョッとさせられました。
穏やかな態度を示しながらも、他人には絶対服従を求める気持ちを抑えることが出来ない、そんな男だったんでしょう。
スティーヴ・カレルが付け鼻をして表情の乏しい不気味なジョンを演じていましたが、「フォックスキャッチャー事件の裏側 (2016)」というドキュメンタリーではジョン本人の映像が沢山見られて、普段のジョンは親しみやすい笑顔の紳士でありました。
ロングショットを効果的に挿入した演出は人間をじっと観察するような雰囲気にさせ、それは「カポーティ」にも見られたものでした。BGMが殆ど無いのも似ています。
省略した語り口は行間を読むことを強いますが、「カポーティ」以上に特殊な登場人物なので二回以上観る事をお勧めします。僕自身が『1回目は人間の描き方が表層的でつまらなく感じた』などとツイッターに呟いておりますのでネ。
2014年のアカデミー賞で、主演男優賞(カレル)、助演男優賞(ラファロ)、監督賞、脚本賞(ダン・ファターマン、E・マックス・フライ)などにノミネート。
カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールにノミネート、ベネット・ミラーが監督賞を受賞したそうです。
・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 
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