(1973/ジョージ・ロイ・ヒル監督/ロバート・レッドフォード、ポール・ニューマン、ロバート・ショウ、チャールズ・ダーニング、アイリーン・ブレナン、レイ・ウォルストン/129分)
「明日に向って撃て!」でファンになったジョージ・ロイ・ヒル監督が、またもP・ニューマンとレッドフォードを使って、今度は30年代のアウトローを描くというので当時話題になり、ワクワクして待った作品だ。映画雑誌の予告記事に出ていたレッドフォードは、ストライプ柄のスーツにハンチング帽を少し斜に被り、なんと格好良かったことか!
レッドフォードはこの後、「華麗なるギャツビー(1974)」「華麗なるヒコーキ野郎(1975)」と、似たような年代の映画に出てレトロ・ブームらしきモノを起こしたような記憶がある・・・多分。
原題の“STING”とは『苦しめる、傷つける』という意味で、『だます、引っかける』という意味もあると当時の映画雑誌の解説にはあった。周到に練られた脚本(デヴィッド・S・ウォード)は、二重三重に観客を騙し、少なくとも2回は観たくなる映画です。但し、この騙しには1点だけ気に入らない所があって、今回数十年ぶりにその辺をもう一度確認しましたが、やっぱり気になりました。これは後ほど【ネタバレ注意】の中で書くことにします。
1936年のイリノイ州。大恐慌後のゴタゴタから抜け出ていないシカゴの下町で、ジョニー・フッカー(レッドフォード)は、二人の仲間と詐欺をやって暮らしていた。その日も“すり替え”をやって手に入れたお金は1万ドルを超える大金。フッカーは有頂天になりルーレットで大方擦ってしまうが、これを機会に引退するという仲間の一人、黒人のルーサーは何者かに殺されてしまう。
昼間若い男を騙して手に入れたお金、実はそれはNY裏社会の大物ドイル・ロネガン(ショー)配下のシカゴの組織が、ナンバーズで稼いだ売上金だったのだ。ルーサーを殺したのもロネガンが差し向けた殺し屋で、フッカーも命辛々町を抜け出す。フッカーは、ルーサーが亡くなる前に教えてくれた大物賭博師ヘンリー・ゴンドーフ(ニューマン)を訪ねていくことにした。
ゴンドーフは、遊技場などを経営する情婦(ブレナン)の元で、失敗した大仕事の後のほとぼりをさましていた。彼はルーサーから事前にフッカーのことは聞いていた。その後のルーサーの事件も新聞で知っており、フッカーと共にルーサーの弔い合戦を誓う。
初めてあった時は二日酔いの冴えないオッサンだったが、ロネガン潰しの作戦準備を始める頃には、キリッとしまったオヤジになったゴンドーフ。フッカーにスーツを新調してやり、更にはルーサーの復讐に賛同した大勢の仲間を集める。ロネガンについて慎重に調べ、今回は“有線(wire)”を使うことにした。
“有線”とは、有線放送を使った場外馬券売場を舞台にした大仕掛けの詐欺。まずはその前にフッカーとゴンドーフは、NYからシカゴに来る途中の列車で、賭けポーカーをするというロネガンを軽く“仕掛ける(hook)”のだった。(続きはビデオでどうぞ)
カモにされるロネガンと刑事以外の人間は、全て何かしら劇中劇のような設定の人ばかりの話で、何回観ても何処から何処までが映画の演技なのか、劇中劇の演技なのか分からないシーンもある。役者さんって、こういう役は面白くてたまらんでしょうなぁ。ま、真剣に見たってどうとでもとれる部分もあり、騙されるままに騙される、そんな気分で観るのが一番でしょう。
二重三重になっているのは“騙し”だけではなくて、スリリングな展開の設定にもソレは見られる。フッカーはいつもロネガンの殺し屋に狙われているし、詐欺師の売上をピンハネしようとしている刑事に偽札を掴ませたので刑事にも追われている。更に、ロネガン騙しの計画は『フッカーに殺し屋が迫ってきたら中止だ。』とゴンドーフが言っていたので、止めたくないフッカーは殺し屋や刑事の件をゴンドーフには言わない。ロネガン騙しの重要な役であるフッカーが怪我でもしたら当然中止だ。
この映画の成功の最大の要因はこの脚本にあるけど、それを映像化した監督の手腕もオスカーにふさわしいものでしたな。
レトロムード一杯の街並やファッション、スコット・ジョプリンが弾くラグピアノ『The Entertainer』。そして、騙したり騙されたり、殺し屋も出てくるスリリングな展開に、ニヤっとしてしまいそうになる洒落た会話。お色気は稀薄ですが、楽しい楽しい正に娯楽映画の傑作であります。
▼(ネタバレ注意)
これから先は本当に最期のお楽しみとなるネタをばらすことになるので、未見の方は飛ばして下さいね。
数十年前に観た時も、『ン?アレッ?』と思ったのが、終盤のFBIが絡むシーン。
FBIはゴンドーフを現行犯で逮捕しようと、フッカーにロネガンの件の詐欺の実行日を聞こうとする。詐欺は現行犯でないと捕まえられないからだ。フッカーはシラを切ろうとするが、ルーサーの未亡人まで巻き込もうというFBIの脅迫に負けて、ロネガン騙しを妨げないのを条件に、実行日時を連絡することを約束する。
FBIは実は偽物でゴンドーフの仲間。これはフッカーを追いかけている刑事(ダーニング)を欺き、更にはロネガンを最後に閉め出す為の策略なんだが、映画ではその事は最後まで明かさない。
映画では、FBIがゴンドーフを捕まえようとしていることを彼に言えないフッカーが、詰めの決行日の前夜、悩んでいるように描いている。つまり、FBIが本物であるとフッカーが思っているように描いているのだ。しかしながら、最後はフッカーは偽のFBIを知っていたようになっている。
という事は、あの前夜のフッカーの無口になった訳はFBIの事では無かったということになる。ここが、昔も今回もどう捉えて良いか分からないシーンなんですよ。
フッカーは、途中からFBIが偽物だと分かったと解釈することもできるんですが・・・ちょっと、曖昧ですな。
フッカーを追っている殺し屋の件。これは騙されても文句は言いませんが、あれも2回目以降は殺し屋の頭の中をアレコレ考えながら観てしまうシーンですな。
▲(解除)
本作は1973年のアカデミー賞で、作品賞、監督賞、脚本賞、衣裳デザイン賞(エディス・ヘッド)など7部門を受賞していて、主演男優賞(レッドフォード)、撮影賞(ロバート・サーティース)にもノミネートされた。
映画サイトでは、レッドフォ-ドよりニューマンの渋さを褒め称える文章をよく見かけます。私は、封切時はレッドフォードの溌剌とした演技の方が気に入ってましたが、今回は(年のせいでしょうか)ニューマンの方が好きになりましたな。
さて、これはカテゴリーが迷う作品です。「allcinema online」で<コメディ、犯罪>となっていますが、結構ハラハラするのでサスペンスにしましょうか。
尚、83年に「スティング2」というのが作られていて、脚本のS・ウォード以外は全て違うスタッフ、キャストの映画とのこと。ビデオでしか見れない映画ですが、割と面白いらしいです。
「明日に向って撃て!」でファンになったジョージ・ロイ・ヒル監督が、またもP・ニューマンとレッドフォードを使って、今度は30年代のアウトローを描くというので当時話題になり、ワクワクして待った作品だ。映画雑誌の予告記事に出ていたレッドフォードは、ストライプ柄のスーツにハンチング帽を少し斜に被り、なんと格好良かったことか!
レッドフォードはこの後、「華麗なるギャツビー(1974)」「華麗なるヒコーキ野郎(1975)」と、似たような年代の映画に出てレトロ・ブームらしきモノを起こしたような記憶がある・・・多分。
原題の“STING”とは『苦しめる、傷つける』という意味で、『だます、引っかける』という意味もあると当時の映画雑誌の解説にはあった。周到に練られた脚本(デヴィッド・S・ウォード)は、二重三重に観客を騙し、少なくとも2回は観たくなる映画です。但し、この騙しには1点だけ気に入らない所があって、今回数十年ぶりにその辺をもう一度確認しましたが、やっぱり気になりました。これは後ほど【ネタバレ注意】の中で書くことにします。
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1936年のイリノイ州。大恐慌後のゴタゴタから抜け出ていないシカゴの下町で、ジョニー・フッカー(レッドフォード)は、二人の仲間と詐欺をやって暮らしていた。その日も“すり替え”をやって手に入れたお金は1万ドルを超える大金。フッカーは有頂天になりルーレットで大方擦ってしまうが、これを機会に引退するという仲間の一人、黒人のルーサーは何者かに殺されてしまう。
昼間若い男を騙して手に入れたお金、実はそれはNY裏社会の大物ドイル・ロネガン(ショー)配下のシカゴの組織が、ナンバーズで稼いだ売上金だったのだ。ルーサーを殺したのもロネガンが差し向けた殺し屋で、フッカーも命辛々町を抜け出す。フッカーは、ルーサーが亡くなる前に教えてくれた大物賭博師ヘンリー・ゴンドーフ(ニューマン)を訪ねていくことにした。
ゴンドーフは、遊技場などを経営する情婦(ブレナン)の元で、失敗した大仕事の後のほとぼりをさましていた。彼はルーサーから事前にフッカーのことは聞いていた。その後のルーサーの事件も新聞で知っており、フッカーと共にルーサーの弔い合戦を誓う。
初めてあった時は二日酔いの冴えないオッサンだったが、ロネガン潰しの作戦準備を始める頃には、キリッとしまったオヤジになったゴンドーフ。フッカーにスーツを新調してやり、更にはルーサーの復讐に賛同した大勢の仲間を集める。ロネガンについて慎重に調べ、今回は“有線(wire)”を使うことにした。
“有線”とは、有線放送を使った場外馬券売場を舞台にした大仕掛けの詐欺。まずはその前にフッカーとゴンドーフは、NYからシカゴに来る途中の列車で、賭けポーカーをするというロネガンを軽く“仕掛ける(hook)”のだった。(続きはビデオでどうぞ)
カモにされるロネガンと刑事以外の人間は、全て何かしら劇中劇のような設定の人ばかりの話で、何回観ても何処から何処までが映画の演技なのか、劇中劇の演技なのか分からないシーンもある。役者さんって、こういう役は面白くてたまらんでしょうなぁ。ま、真剣に見たってどうとでもとれる部分もあり、騙されるままに騙される、そんな気分で観るのが一番でしょう。
二重三重になっているのは“騙し”だけではなくて、スリリングな展開の設定にもソレは見られる。フッカーはいつもロネガンの殺し屋に狙われているし、詐欺師の売上をピンハネしようとしている刑事に偽札を掴ませたので刑事にも追われている。更に、ロネガン騙しの計画は『フッカーに殺し屋が迫ってきたら中止だ。』とゴンドーフが言っていたので、止めたくないフッカーは殺し屋や刑事の件をゴンドーフには言わない。ロネガン騙しの重要な役であるフッカーが怪我でもしたら当然中止だ。
この映画の成功の最大の要因はこの脚本にあるけど、それを映像化した監督の手腕もオスカーにふさわしいものでしたな。
レトロムード一杯の街並やファッション、スコット・ジョプリンが弾くラグピアノ『The Entertainer』。そして、騙したり騙されたり、殺し屋も出てくるスリリングな展開に、ニヤっとしてしまいそうになる洒落た会話。お色気は稀薄ですが、楽しい楽しい正に娯楽映画の傑作であります。
▼(ネタバレ注意)
これから先は本当に最期のお楽しみとなるネタをばらすことになるので、未見の方は飛ばして下さいね。
数十年前に観た時も、『ン?アレッ?』と思ったのが、終盤のFBIが絡むシーン。
FBIはゴンドーフを現行犯で逮捕しようと、フッカーにロネガンの件の詐欺の実行日を聞こうとする。詐欺は現行犯でないと捕まえられないからだ。フッカーはシラを切ろうとするが、ルーサーの未亡人まで巻き込もうというFBIの脅迫に負けて、ロネガン騙しを妨げないのを条件に、実行日時を連絡することを約束する。
FBIは実は偽物でゴンドーフの仲間。これはフッカーを追いかけている刑事(ダーニング)を欺き、更にはロネガンを最後に閉め出す為の策略なんだが、映画ではその事は最後まで明かさない。
映画では、FBIがゴンドーフを捕まえようとしていることを彼に言えないフッカーが、詰めの決行日の前夜、悩んでいるように描いている。つまり、FBIが本物であるとフッカーが思っているように描いているのだ。しかしながら、最後はフッカーは偽のFBIを知っていたようになっている。
という事は、あの前夜のフッカーの無口になった訳はFBIの事では無かったということになる。ここが、昔も今回もどう捉えて良いか分からないシーンなんですよ。
フッカーは、途中からFBIが偽物だと分かったと解釈することもできるんですが・・・ちょっと、曖昧ですな。
フッカーを追っている殺し屋の件。これは騙されても文句は言いませんが、あれも2回目以降は殺し屋の頭の中をアレコレ考えながら観てしまうシーンですな。
▲(解除)
本作は1973年のアカデミー賞で、作品賞、監督賞、脚本賞、衣裳デザイン賞(エディス・ヘッド)など7部門を受賞していて、主演男優賞(レッドフォード)、撮影賞(ロバート・サーティース)にもノミネートされた。
映画サイトでは、レッドフォ-ドよりニューマンの渋さを褒め称える文章をよく見かけます。私は、封切時はレッドフォードの溌剌とした演技の方が気に入ってましたが、今回は(年のせいでしょうか)ニューマンの方が好きになりましたな。
さて、これはカテゴリーが迷う作品です。「allcinema online」で<コメディ、犯罪>となっていますが、結構ハラハラするのでサスペンスにしましょうか。
尚、83年に「スティング2」というのが作られていて、脚本のS・ウォード以外は全て違うスタッフ、キャストの映画とのこと。ビデオでしか見れない映画ですが、割と面白いらしいです。
・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】
面白いな~
粋な映画とはこのことですね。ポスターも大好きでした!
ありゃ、どうやったんでしょうかねえ。
やっぱ、練習したんでしょうねぇ。
anupamさん、記事待ってま~す。
ご指摘のFBIのくだりは、自分は、途中から気づいたと思っていましたが、言われてみれば確かにいまいち微妙ですね。
『テキサスの五人の仲間』、双葉さんの例の500本で存在を知ってからずっと気になっていて、でもたぶんレンタルされてませんよね。
それで、先日ついにBSで放送されたのに、録画忘れました(泣)果たしていつ観れることやら・・・。
ということで、十瑠さんの記事も観るまでは読まないようにしています。
お薦め映画、次は「衝撃のラスト!」を募集しますので、『テキサスの五人の仲間』も投稿に加えさせていただきますね。
最後に、勝手ながらお気に入りブログのリストに追加させていただきました。宜しくお願い致します。
「テキサス・・・」は以前は吹き替え版で観たと思います。おもろいです。
それは、誰の目にもあきらかです。
>観客にフッカーがゴンドーフを売る、ということで悩んでいたと思わせる
これは、監督の思惑通りでしょう。
>実際は本当にこれ以上はないかもしれない大仕事をやる前の緊張感の中での苦悩を描いていたのだと思わせることが狙いだった・・・
これはボブさんの推測ですよね。
ま、この辺は勝手に想像するしかないんですが、私は、そういう所が気に入らないと言っているわけですよ。
本記事中に書いていますように、この映画は大好きでありますし、気になっている1点だけでそれが変わるものではありません。好きだからこそ、気になっているわけです。
殺し屋の方は最後で種明かしがされているだけに、どうしてこのFBIの件は放置しているのか・・・。フッカーはいつFBIについて気が付いたのか・・・。
昔は、最初から知っていたんだとも考えられると思ってました。ロイ=ヒル監督は、わざと曖昧にして観客の想像に任せておこうとしたのじゃないかと。
どこかにコレの種明かしは残してないんですかねぇ。
P・ニューマンとレッドフォード、私はやはりP・ニューマンの方に傾いてしまいます。深みのあるオヤジですねー。
コチラは、封切時と違って、ニューマンの方が気になって観てました。
見終わると、さてこの後騙されたことに気付いたロネガンから、彼らは逃げおおせるのか、なんて事も気になりましたね。
2は未だに観てませんです。