ベンチに座って本を読んでいる少女
手すりにからだをあずけて
スケッチをしている老人
犬を連れた男と女が
ゆったりと散歩している
晩秋だというのに
暖かな午後のこと
川のほとり
わたしは
テラスの喫茶店の
木製の椅子に腰掛けて
コーヒーを飲みながら
動いているあなたを見ている
人の思いはほんとうに密やかなものだ
風のように
木々の枝ひとつ揺することもない
ひとつの生命が
わたしのそばで
動いていることの不思議に
わたしがどんなに驚いていようと
こころのいちばん深いところから
生まれてくる新しい旋律が
どんなに私を突き上げてこようと
世界は微動だにしないが
ただ
ひとつのことを信じて
ひたすらに
見つめていると
なにげない風景の中に
ふと
風のように
神が
よぎることがある