読書の森

連れていって 別れのない国へ

自分の歳は、一応押し入れの中にでもしまっといて、以前作っていた恋に関する話に戻ってみます。
一途に思い込む恋ほど、何故か別れの影が付きまといます。

ここに紹介するのは、純粋な学生運動家の実際にあった哀しい恋です。

奥浩平とその女性は、昭和18年生まれ、都立青山高校の同級生でした。
きわめて政治意識が強く、お互いに別々の大学に入ってから別々の政治運動に属する事になります。
二人は極めて親密で、愛し合っているのに、主義主張を口にするほど食い違いに傷ついてしまったのです。
奥浩平は、セクトの有能な指導者となりましたが、デモに参加中警官隊に襲われて重傷を負い、入院しました。
さぞかし、この時屈辱感と前途への絶望感を感じたのでしょう。

退院後21歳6か月で服毒自殺を遂げました。
二人の間で交わされたおびただしい手紙の彼女の分は奥浩平によって焼却されています。
彼女の将来を思えばこそ、警察に追われた自分宛ての手紙が残ることを怖れたのでしょう。

一方、彼女は奥浩平の手紙を遺稿の形で公開したのです。
彼の作品『青春の墓標』は当時熱心な読者に支持されました。


社会の在り方や生き方について真摯なあまり、現実の恋人同士の優しい感情を否定してしまう。
警察隊によって怪我を負わされただけで、将来への道が閉ざされた訳でもないのに、早々と絶望してしまう。
それは奥浩平が若過ぎたかったからでしょう。

純粋過ぎる彼の感覚が、彼女にとって重荷だったのではないでしょうか。
しかし、その彼との突然の別れによって、堪らない寂しさと恋しさに襲われたと思います。

このブログの表題「連れていって 別れのない国へ」は歌の一節です。
昔の私だったら、ここで辛い生き別れの事を連想しましたが、今はその人との永遠の別れを思い浮かべるようになりました。

若い時は傷つきやすく、死に魅入られる事もあるでしょうが、まだまだ可能性が一杯あります。
「別れのない国」など地上にありませんが、命は大事にしたいものです。



読んでいただきありがとうございました。

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