読書の森

『方丈記』に寄せて 前



「ゆく河の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。
淀みに浮かぶ泡沫は、かつ消えかつ結びて久しく止まりたる試しなし」

平安末期、平家が滅ぶ頃、文人鴨長明が著した『方丈記』の冒頭である。

この頃、戦や飢饉や、大地震等あらゆる天災が世を襲った。
平和だった京の都は一変して、荒れ果てる。
人心は荒廃して、見聞きするに耐えない。

鴨長明は厭世気分に襲われ隠遁生活を送ったのだ。
そこで何をしたかと言うと『方丈記』を綴ったのである。
冒頭の一節は世の中の無常さを流麗な文章で綴っている。



『方丈記』は川沿いにある一丈四方の掘っ立て小屋で書かれたものだ。
一丈とは約3メートル。
信じられない狭い空間で世の無常を説く文章をコツコツ書いてた鴨長明はかなり変わり者と言えよう。

変わり者には天才的な人がいる。
鴨長明もその一人だろう。

文章を書く力に優れているだけでなく、歴史を観る目があった。



世が無常と感じるのはある程度歳を経ないと分からない。

高校生の時、その文章の小気味良さに惹かれて暗記した本当に意味は全然実感してなかった。
時代が登り調子だからというより若さが能天気にしていた。

今の世は、高校生までがしらけた感覚を持っている気がしてならない。
無常観ではなく、無情を当然している様だ。

まず阪神淡路大震災が起こり出して世の中が変わってきたなと思った。
それから、坂道を転げ落ちる様な展開になる。


9.11が起こり、ニューヨークのツインタワーが暴走族の様な自爆テロによってメチャクチャに倒れた。
茫然とテレビ画面を見て初めて世が変わると思った。

私は信じてた日常性や、人の善意がいかに儚いものか思い知らされた。

読んでいただきありがとうございました。

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