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Book Offではお散歩の本ばかり選んだので、昨日の図書館では歴史コーナーをウロウロしました。
歴史コーナーで見つけたこの本、中身をパラパラ読んでびっくり致しました。
江戸時代にも飛んでる婆ちゃんがいたのです。
時は幕末、天保時代、江戸城に近い九段下の旗本夫人、井関隆子さんの56歳から60歳で亡くなるまでの日記を基にして書かれた本です。
当時の武家の平均寿命は約50歳、ところが教養が高い隆子さんの筆は冴え冴えとしていて年齢を感じさせません。
創作、短歌、江戸の風物描写、世相の説明、はては政治批判(老中水野忠邦はかなり痛烈にけなされてます)まで幅広い分野を書き、膨大な量(十二冊)の日記を残しています。
隆子さんは離婚して(生別)、再婚相手の死後、悠々自適の生活をしていました。
先妻の子供と血の繋がりはありませんが、趣味も合って非常に大切にしてもらっていたようです。
お江戸は女性の数は男性に比べて少なく、嘘みたいな話ですが、武士の妻が夫と気が合わなくて、離婚再婚するのはよくある事だったそうです。
子供や孫に慕われて、経済的に不自由なかったとしても、彼女の日記に愚痴や過去の繰り言が少ないのは、驚くべきことです。
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隆子は、秋の草花の中で薄が一番好きだったそうです。
そして、お酒が大好きで、孫と酒を酌み交わし、城中(江戸城内!ですよ)の噂話を楽しんだそうです。
花見だ、月見だと家族と酒を楽しみましたが、酒の肴はお城からの頂き物だったとか。
義理の子供も孫も江戸城内で勤めていたからこそ出来た話ですが、隆子さん相当男っぽいと思いました。
彼女の日記に
「その時代に創られた文学を読むと、当時の人々の様子が生き生きと伝えられているもののようである。
現在、目の前にある出来事を書き留めていると、周囲の人々は意味のないことのように思うかも知れないが、何百年も経過すると、この目で見た大江戸のあり様が文学の中に伝えられ、貴重な記録になるのである」(口語訳)
と書かれています。
江戸の武家の妻、しかも当時ひ孫もいるお婆様が残した文章とはとても思えません。
日記に描かれた江戸風景も興味深いものですが、隆子さんその人との本を介しての出会いは、それ以上に興味深いものでした。