「振り向かず 引き返さずに 芒原」
これを読んで、私は何故か芒原ではなく暮れ方の見知らぬ町を思い出してしまいました。
行けども行けども、夕餉の匂う我が家に辿り着けない、「当たり前です、もうその家はないのだから」、茫漠としているがもはや過去に引き返せぬと心に決めている。
芒原は枯野に通じますが、都会では自然のままの枯野に滅多に遭う事はありません。
その町が、住人にとっては温かいホームであっても、エトランゼにとっては茫漠とした野原なのかも知れません。
本気でメランコリックになってる訳でなく、読書の秋、文学づいてるのです。
文学老女^_^
晩秋の夕暮れ。
清少納言が『枕草子』に「春はあけぼの、夏は夜、秋は夕暮れ」と秋の夕暮れを絶賛してます。
なるほど味わい深い景色となって、(ご時世の事さえ考えなければ)しみじみ宜しうございます。
無提灯で 枯野を通る 寒さ哉
(夏目漱石)
俳句の愛好家の文豪の句、流石でございます。
写真はこれも枯野ならずして見知らぬ町のきりりと冷たい夜明けです。
お陰と言うべきか因果というべきか、若き日の「見知らぬ場所好き」の性癖が抜けない婆さんは、こうして実は近場で知らない場所をプチ彷徨しているのです。
「思えば遠くに来たもんだ」
(昔の歌の題名です)